逃げられない 02
あり
頭が痛い。風邪をひいたときとは少しばかり違う、重く脳に響くような痛みだ。
その不快さに、意識が少しずつ覚醒していく。
「う……」
目の焦点が合うのにしばしの時間がかかったが、ここが見慣れぬ部屋だということはすぐ分かった。
記憶を辿っていって――さっと血の気が引く。
「起きた?」
「し、みず……」
何故――という単語が頭を廻って、めまいがしそうになる。今は彼について、分かっていることより分からないことのほうが多すぎた。
「どうして……京都の大学に行ったはずじゃ……」
まず口をついて出たのは、最大の疑問だった。未だに信じられない思いで、尚人は呆然と呟く。
だけど蓮は何でもないことのように、小さく笑って言った。
「ああ、行きたいとは言ったけど、そこに決まったとは一言も言った覚えはないのだけど」
「でも、クラスでは決まったって……」
尚人としてはあまり聞きたくない話だったが、蓮が京都の大学に進学するというのは、学校内では公然の事実として語られていたはずだ。離れて悲しい、としきりに女子達が話していたのをよく覚えている。
「噂が一人歩きしてただけじゃないかな。まあ否定はしなかったからね。俺と同じ大学に行きたいって女子が、少し煩わしかったし。自主性がない子は苦手だから」
「そんな……」
「――でも、友達に嘘を吐く気はなかった。星野に聞かれたら答えていたよ。そうしなかったということは、それほど俺に興味がなかったということじゃない? お前、本当に俺を好きだったの?」
「そっ……」
そんなの、好きに決まってる――思わずそう言いそうになって、尚人は唇を噛んだ。
それを言ってどうなるというのだろう。進学先の話題を避けていたのは、遠からず蓮と離れるという事実を受け入れがたかったからだ。
興味がないなどとんでもない、ただの執着ゆえだ。そんなものを伝えたところで引かれるだけで、何にもなりはしない。
「……迷惑かけてごめん、俺、帰るよ」
まだ頭は混乱していたが、とにかくここにはいられない。
慌てて立ち上がろうとした刹那、肩を押され、尚人はベッドに押し倒されていた。
「――帰さないよ」
蓮が笑って、こちらを見下ろしていた。否、笑っているのに、目は笑っていない。
美しくてどこか恐ろしいその顔から、尚人は囚われたように目が離せなかった。
「っ……!?」
キスされている、ということはかろうじて分かった。しかし何故蓮が自分にそんなことをするのか、にわかには到底理解できず、頭が真っ白になってしまう。
呆然としているうちに、二度三度と唇を合わせられ、頬をゆるゆると撫でられる。
甘ったるいその仕草に顔が熱くなり、とにかく何か言わなくてはと口を開くと、その隙間から舌が侵入してきた。
「んぅ…ん、ん……」
熱くぬめった舌に口内を舐められ、ぞくぞくとした感覚が全身を走る。
「尚人も舌、出して……?」
「ぁ……んっ」
少し掠れた声で囁かれ、反射的に言われるがままにすると、すぐさま舌を舌で嬲られる。
敏感な粘膜同士が絡まる感覚は初めて経験するもので、甘い痺れに腰が抜けそうになってしまう。
くちゅくちゅという卑猥な水音が恥ずかしくて堪らないけれど、蓮に痛いほど強く押さえ込まれているせいで耳を塞ぐこともできない。
「ん、……はぁっ、ん……」
思う様口内を蹂躙された後、最後に舌をきつく吸われ、ようやく唇が離れた。
涙で滲んで焦点が定まらない目で、尚人は信じられない思いで蓮を見つめる。
「なっ、んで……?」
「――さあ、何でだろうね? 本当に分からない?」
「わかんな…ぁっ」
囁きながら、耳朶に軽く歯を立てられ、じわりと甘い疼きが走る。
「ちょっと、いらついたんだよね。お前に」
「……っ」
「久しぶりに会ったのに俺のことあからさまに避けて、知らない奴と仲よさそうにして。そのくせたまに傷ついてますって顔でちらちら見てきてさ。そういうの、うざいよ」
ぞくりと、鳥肌がたった。
目の前の男は、本当に蓮なのだろうか。あの誰にでも優しくて、気遣いができて、いつだって尚人にとっては太陽のような存在だった――。
「……悪かったよ。でもだからってこんな嫌がらせ、ひど……」
「酷いのはどっち?」
何か言わなくてはと、か細い声で発した言葉は、強い語気で遮られた。
「勝手に思いつめて、言いたいことだけ言ったら自己満足して離れていって、お前はすっきりしたかもしれないけど、俺の気持ちは考えたことあるの?」
「それはっ……本当に悪かったと思ってる。でも……あれ以上自分の気持ちをごまかして、友達だと思ってくれてる志水の気持ちを裏切りたくなかった。俺なんかに実は好かれてるなんて気持ち悪かっただろうし、離れるしかないと」
「気持ち悪くないって言わなかった? お前、意外と人の話をちゃんと聞いてないよね」
蓮は怒っている。この状況は未だに理解できなくても、それだけは分かった。
当然だ。尚人は蓮の気持ちなど、本当のところろくに考えていなかった。自分が傷つきたくないという、ひとりよがりなだけの理由で。
「……、尚人、」
「――ごめん……」
気がついたら、勝手に涙が溢れていた。一度そうなってしまったら、ぐちゃぐちゃな感情が堰を切ったように押し寄せてきて、止まらなくなる。
「――お前の泣き顔なんて、初めて見た。尚人」
囁きながら、蓮の指が涙を拭う。意外なほど優しいしぐさに、胸の痛みが一層強くなった。
「俺のこと、好き?」
「……っ、好き、だ」
残酷な問いに、答えは勝手に出てきた。
好きに決まっている。忘れるために断腸の想いで離れたというのに、気持ちはあの頃のまま、全く風化していなかった。
「もっと言って。本当に好きなの?」
「好き、だよ。ずっと…っ、好きだった…」
「――そっか」
「……っんっ」
いきなり、噛み付くようにキスをされた。涙の味がするのにも構わず、蓮は乱暴に口内を蹂躙し、舌と舌をいやらしく擦り合わせる。
こんなときなのに下半身がじんじんしてしまって身じろぎすると、手を取られ体を押さえつけられた。
「んっ、……はぁっ、ぁ」
「――俺も好きだよ」
とうとう自分の頭はどうかしてしまったのだろうか。幻覚まで聞こえるようになってしまった。
「……夢?」
「……予想通りの反応だね」
蓮が小さく笑う。どうやら聞き間違いではないらしい。
では何故、そんなありえないことを言うのだろう。――蓮を傷つけた尚人に、仕返しをするため?
いくら怒っているとはいえ、自分が知っている蓮は人の気持ちを弄ぶようなことはしない。しかし今の蓮は実際、尚人が知っている彼ではない。しかし――
「また的外れな妄想でもしてるの? お前って頭の回転はいいのに、回転のさせ方を間違えてることが多いよね」
「あの、……あっ」
いきなりシャツを捲られ、蓮の指が素肌を撫でた。
くすぐったさと、それだけではないぞくりとする感覚に、慌てて抵抗しようとするが、強い力で腕を押さえつけられてしまう。
「俺のこと、好きなんだよね? 俺にこういうことされたいって、思わなかったの?」
「そんなことっ……ない! 本当にっ……」
本当は、少しもなかった、と言えば嘘になるのかもしれない。尚人にも若い男なりの欲はもちろんある。
だけどこんないやらしいことなんて、考えたことがなかった。
一度、蓮とキスをするところを想像したことはあったけれど、それだけで罪悪感に押しつぶされそうになったのだ。それ以上のことを考えるなんて、論外だった。
「――そう。でも」
「っ、やっ、ぁあっ」
ゆるゆると肌に滑らせていた指が乳首に触れた瞬間、勝手に裏返った声がでてしまった。
「俺は思ってたよ。こうしていやらしい乳首をいじって」
「あんっ、…っ、ん、だめっ、ぁっ」
コリコリになった乳首を、親指で円を描くように押しつぶされる。
自分でもろくに触ったことなどない場所だったのに、剥き出しの性感帯を弄られたような激しい快感が襲ってくる。
「それから、感じすぎてもう嫌だって泣き出すくらい、舐めてやりたいってね――」
「っ、やっあんっ! ぁっあァっ、んんっ」
ぬめった舌が乳首を舐めた瞬間、腰がびくびくと大きく跳ねた。
焦らすように小刻みに舌を動かされると、じっとしていられないほど感じてしまう。甘く痺れて反応する下半身を隠したくて身を捩ったが、膝で強引に股を割られ逃げられなくなる。
密着する脚も舌も、やけに熱くて、やけどしそうだ。こんなに生々しく蓮の存在を感じたこと、今までなかった。
「ん、ぁっ、もう…、あんっ」
歯を立てたまま勃起した乳首をねっとりと舐められ、下着をじゅわりと濡らしてしまったのが分かった。何とか隠そうと伸ばした手はあっさり封じられ、膝でそこをごりごりと擦られてしまう。
「ひあぁッ! やっ、あっアンッ」
「すごい勃ってる…乳首いじっただけで、こんなになっちゃうんだ…?」
「ちがっ…あぁっ、アッアッらめっ、あぁッ!」
乳首をきつく吸われながら、膝で執拗に下半身を弄られる。乱暴なほどの愛撫なのに、ペニスは萎えるどころか脈打って次から次へと蜜を吐き出していた。
「湿ってるな…気持ち悪いだろうから、脱がせてあげる」
「いらないっ…ん、待って…!」
抵抗する間もなく、あっさりとパンツを脱がされてしまった。
あらわになったそこは陰毛までびしょ濡れで肌に張り付き、ピンク色の亀頭は痛いほど張り詰めてビクビクしていて、とても正視できないほど卑猥な有様だった。
「……やらし」
熱を帯びた声で、蓮がつぶやく。猛烈に恥ずかしくなって、だけどなんだかぞくりとしたものが背筋を走って、尚人は顔を両手で覆った。
「いかにも淡白そうな顔してるのに、乳首だけでこんなに感じちゃうなんて、淫乱だね」
「ちがっ…ひっあぁんっ」
囁きと共にペニスの先端をぐりぐりと弄られ、強烈な快感に襲われる。
「何が違うの? 乳首舐めたら女の子みたいないやらしい声出して、こんなに濡らしてるくせに。……まさか、初めてじゃないなんて言わないよね?」
「やっぁっ、ありえなっ…あっあッひぃっ」
不意に強くペニスを握られ、頭が真っ白になる。
「ふぅん……じゃあここはどうかな」
「っ!? ぁっんっ…なにっ…」
ペニスから離れた指が、もっと奥まった部分――アナルに触れてきた。
くすぐったさと、今まで経験したことのないぞわぞわとした疼きに、酷く不安な気分になる。
「ひくひくしてる……指、挿れていい……?」
「だめっ……ぁ、んんっ、そんなとこ、なんでっ……」
ヌ、ヌル、ヌル、ヌチュ…
先走りでアナルも蓮の指もぬるついていて、卑猥な音がひっきりなしに耳に入ってくる。
何をされているのかもよく分かっていないのに、体は何故か酷く疼いて、頭がパンクしそうだ。
「……気に入らないな」
「んんっ…ふ…しみず……?」
「こんなに感じてるくせに、反面自分が何されてるのか分かってないって顔してる。……気に入らない」
「なにっ…あっ、あぁあんっ…」
表面を撫でていた指が、いきなりずぶずぶと中へ侵入してきた。
「分かる……? 俺の指、お前の中にずっぽりハマってるの」
「ア、あぁ、んッ、」
ヌプ、ヌッ、ヌッ、ヌチュ、ずぶっずぶっ
挿入した指を、蓮は小刻みに抜き差しした。体の中を抉られる初めての感覚に、腰がびくびく跳ねる。
「きついな……ね、お尻気持ちいい?」
「アッ、あん、ひっあぁんっ…んあぁっ」
中に挿れた指をぐりぐりと折り曲げながら、蓮が卑猥な言葉で責めてくる。
「は……エロい声。――ねえ、俺がどれだけ頭の中で、お前のここに突っ込んで、突きまくってやってたと思う?」
「あぁっ! やっあん、あひっ、あっあッあァッ」
「想像の中のお前はもっともっととねだってくるのに、現実のお前はいやいやばっかりだね。声は想像よりずっとエロくて、興奮するけど」
ヌプッヌプッ、ズプッズプッズプッ
特に感じる場所を激しく突かれる。蓮の言っていることを聞き流してはいけない気がするのに、快感が強すぎて考えることもままならない。
「――お前の好きは、所詮友情の延長に過ぎない、ただの憧れだったんじゃない?」
「……っ!」
だけどその言葉は、到底無視なんてできなかった。
「っ、そんなわけ、はぁっ、ないっ…! ぁっ、すきっ、すきだよ、バカッ……!」
あえぎ混じりに、必死で訴える。涙が勝手に出てきた。
どれだけ罵倒されることより、酷いことをされることより。自分の気持ちを否定されることだけは、どうしても耐えられなかった。
「お前に悪いから、こういうことは考えられなかったけど……好きだよ、ずっと志水が好きだった……」
「――じゃあ」
中の指は抜かれ、熱のこもった目で、蓮は尚人を射すくめてきた。
「俺がほしいって言ってよ」
「……っ」
「そうしたら、俺はお前のものだ。その代わり、二度と逃げるなんてふざけたこと許さないけどね」
ほしがるなんて、考えたこともなかった。本当にそれが許されるというのだろうか。
「ねえ、星野」
どこか切羽詰まったような、請うような声音だった。
「っ、ほしい…、志水がほしいよ、でも……っ、あぁんっ!」
でも、の先は言葉にならなかった。指よりずっと熱くて大きいものが、尚人の中にハメこまれたのだ。
蓮の怒張が、穴をめいいっぱい押し広げ、ハメられていた。そのままゆっくりとピストンされ、同時に唇を荒々しく塞がれる。
「ふぁっ…んっんぅ……ぁふっ、んあんっ!」
レロ、ちゅっ、ちゅぶ、ぬちゅ…レロッ……
ズブ、ぬぷ、ぬぷ、ずっ、ズヌッ、ズプッ
舌を吸われると力が抜けて、無意識に自分からも絡ませてしまう。そうされながらゆっくりと中を穿たれると、最初にあった圧迫感や痛みが吹き飛んでしまうほどの快感が襲ってきて、ペニスから更に蜜が溢れる。
「あっあん、あんッ、あひっ…まって、あっあぁんッ」
「はっ……待てるわけないよ。俺がほしいって、言っただろ……っ」
「だって…っ、あっひっらめっ…そこ、あ、あんっ」
耳や首筋に官能的なキスを落としながら、蓮は徐々に抜き差しのスピードを上げる。
こういう意味のほしいとは思わなかった、なんて言い訳する余裕などない。ひっきりなしに性感帯をゴリゴリと擦られて、イった瞬間のような強烈な官能に体が支配される。
ズブッズプッぬぶっぬぶっ、パンッパンッパンッパンッ
「あぁーっ…んっ、あひっ、あっアッ」
「っ、かわいい。ね、もっと気持ちよくなって……」
今でも許容オーバーなほど感じているというのに、蓮はそんなことを言って、揺さぶりながら乳首を舐めてきた。
「あぁんっ! ひっあっ、あんっあんっあぁん……っ」
「っ、乳首好き……? 弄ると、中がぎゅうぎゅう締めてくるよ。やらしっ……」
ぬる、レロ、レロ、ちゅ、こりっこりっ
ズブ、ヌブッヌブッ、ずぶ、ゴリッ、ゴリゴリッ
言われると、乳首を舐めて吸われるたびアナルがきゅんとして、一層蓮の熱い勃起の存在を感じることが分かってしまう。
「ね、いいならいいって言って……?」
「ぁっやらっ…ひぁっんっ、ふぁッ…」
「これからは、感じたこと言い合おう? じゃないとまた、すれ違うことになりかねないよ」
卑猥なことなんて言える筈がないと思っていたのに、蓮にそう言われるとあの辛かった気持ちが鮮烈に思い出されて、尚人は反射的に蓮の体に抱きついた。
「あっあっ、きもちいっ……ん、はぁ、ぁんあんっ…」
「……よかった。やっぱり乳首、好きなんだ……? 舐めながら突かれるの、気持ちいい?」
「んっ、すきっ、あっ、ぁっ、ちくび、すきっ……あんっ、なめながら、ゴリゴリされるの、きもちいっ……ひっあんっあっアッあんっ」
口に出してしまうと、自分が変態になってしまったかのような倒錯感で、体が甘く痺れる。
「はぁっ、じゃあもっと、してあげる…っ」
「あんっぁっ、いぃっ…おしり、きもちいっ…ひっぁんっ」
レロレロッ、ズブッズブッぬぶっぬぶっぬぶっ、ズバンッズバンッ
乳首を口に含んだまま転がされ、ペニスを最奥までハメこまれ、腰を回される。
びっちりと巨大な怒張をくわえ込んだアナルはもう内壁全体が性器と化していて、エラの張ったカリで擦られるたび脚がビクビクッと大きく跳ねる。
「あッあぅっ、志水のおちんちん、おっき、あひっあっ、あぁあッ」
「……っ」
瞬間、体内で蓮のものが一層大きくなった気がした。
「くそっ……俺の、そんなにいい?」
「あんっんっ、いいっ、れん、も、あんッ、いく、いっちゃう、あひっぃあんっ」
「っいいよ、イって……。お尻だけでイくところ、見せて……」
眉間に微かに皺を寄せた、壮絶に色っぽい表情で囁くと、蓮は尚人の腰を鷲掴み、奥まで激しくピストンする。
「あぁーっ! あんっあんっあんっあんっ…! いくっ、いっぁんっあひっあぁあんっ!」
ズブッズブッごりっごりっごりっごりっパンパンパンパンッ!
性感帯を何度も何度も押しつぶされ、強すぎる快感に勢いよく精液が吐き出された。
出ている瞬間にも突かれ続け、もうわけがわからなくなる。
「ひあぁっもっやっあんっあんっあんっあぁっ、あっああんっ」
「っ、いくっ……中に、出すよ、お前のなかにっ……」
「っらめっ、ぁんっ、なかはっ、あっひっあんっあっ、あっ、あんっ、あぁっ!」
パンパンパンパンッ! ピュッ、ドピュッ、ドピュッ!
「はぁ…、あ…、ふっ、あッ、あん……」
抉るようなピストンと共に、熱いものが内壁に叩きつけられる。余韻というには強すぎる余韻に体をひくつかせていると、荒い息を吐く唇が塞がれ、舌を絡められる。
「ん、ん……」
今度は自分から、蓮の舌を吸ってしまった。
そうすると未だハメられたままのペニスをぎゅうぎゅうと締め付けてしまい、今更のことなのに恥ずかしくなってくる。
もう抜いてもらえないだろうか、という尚人の思いとは裏腹に、あっという間に硬さを取り戻していたものがゆっくりと律動を再開する。
「っ、ぁあっ、もっ、やだっ……はぁ、んっ」
「はっ……それ、冗談のつもり? 一回で終われるわけ、ないだろ」
久しぶりに、にこりという擬音のつけられるような蓮の笑顔を見た気がした。それは見慣れた「王子」のもの――にしてはあまりに色気が勝ちすぎていて、否応なしに尚人の官能を煽った。
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