あり
「こんな書類は使い物にならない。君は会社に遊びに来ているのか?」
オフィスの一角。淡々としているが威圧感のある声が樋野裕太(ひのゆうた)に突き刺さる。
「……申し訳ありません」
「謝っても仕方のないことだということくらい分かるだろう。早く作り直しなさい」
課長はそれだけ言うと、もう裕太の存在などないもののように別の書類に目を通し始める。
周囲から同情とも侮蔑ともつかない視線を感じる。裕太はいたたまれなさを感じながら足早に席へ戻った。
裕太は社会人二年目。大学まではそれなりに成績もよく、友人や女にも困らず、特別挫折というものを知らない人生を歩んできた。
いい会社に就職も決まり、今までのように器用に楽しくやっていこうと思っていたのだが、社会はそう甘くはなかった。
「お先に失礼しまーす」
「お疲れ様です」
定時が過ぎて同僚が帰宅していく中、裕太は依然パソコンと向き合う。
「樋野君、また残業? 無理しないでね」
「はは、大丈夫です。でも佐伯さんにそう言ってもらえると嬉しいな」
「もう、何言ってるの」
女子社員に声をかけられ、裕太は条件反射的に愛想を振りまいた。
女性には優しく。そうしたほうが色々と得だし、単純に優しくしたいとも思うから。
「ね、今度飲みに行こうよ」
「もちろんです! 楽しみにして頑張りますね」
「よかった。じゃあお先に失礼します」
だけどこういうところがまた、女にだらしがないと上司に睨まれる原因なのかもしれない。
ふと課長の方を窺うと思い切り目が合ってしまい、裕太はうんざりとした気分で視線を落とした。
「あー……疲れた」
ようやく仕事がひと段落着いて、裕太は大きく息を吐きながら伸びをする。
気づけばフロアには裕太一人きりになっていた。
尿意も無視して没頭していたが、いざ帰れるとなるとそれがぶり返してきた。
ダルい身体を引きずってトイレに入ると、先客が用を足していた。
見たことのない顔だったが、警備員の格好をしていたので特に気にすることなく、一つ空けた便器に向かってスラックスのファスナーを下ろしたのだが。
「……」
感じる。あからさまな視線を。
気になってちらりと隣を見ると、警備員の男がこちらをじっと見ていた。
「――どうしたんです? しないんですか?」
「……いえ」
何を見ているのだろう。何故話しかけてくるのだろう。ただのサボっている暇な警備員か。
それにしても何か妙だ。男は裕太よりも先にいたのに、用を足す様子もなければ陰茎をしまう様子もない。
なんとなく不気味さを感じて、裕太は個室に入ることにした。
足早に中に入って、ドアに手をかけた瞬間。
「うわっ!?」
男がいきなり裕太を突き飛ばし、個室に侵入してきた。
そのまま素早く後ろ手に鍵を閉め、じっとりとした目で見下ろしてくる。
「なんなんだあんたっ……うぁっ」
危険を感じて逃げようとするも、腹に蹴りを入れられ、裕太はその場にうずくまってしまう。
男はその間に荒々しく裕太のネクタイを抜き取り、後ろ手に縛った。
ろくな抵抗もできなかった。そのまま便器に座らされ、何をされるかわからない恐怖に身体が震える。
「そんなに怖がらなくていいんですよ。おしっこ、したかったんでしょう?」
――変質者だ。丁寧ながら粘っこい声に、ぞっと身体が震える。
自分がこういった人間にターゲットにされるなんて信じられず、冷や汗が垂れてくる。
「な、何を言って……! こんなことして、ただじゃ済まないですよ! 今離せば、誰にも言わないからっ……ぁっ」
言い終わる前に、下腹部を指で押されて、裕太はびくりと震えてしまう。
「ああ……可愛い声だ。ほら、おしっこ漏れそうなんでしょう? いっぱいだしていいから」
「ぅあっ……こ、こんな格好で、できる訳ないだろ! これ、外せよ!」
「服なら心配しなくても、警備員室に予備があります。なんなら俺がもっといいスーツ、買ってあげますから」
「そういう問題じゃっ……」
とはいえ、尿意のほうはもう限界だった。
こんな変態男の見てる前で漏らすなんて絶対に嫌だ。そう思う心とは裏腹に、身体は早く吐き出したくてたまらないといっている。
「はぁ……恥ずかしいの? でも、早くあなたがお漏らしするところが見たいな。ほら、撮ってあげる」
「や、やめろっ!」
男は熱い息を吐きながら、おもむろにデジカメを取り出して裕太へ向けた。
漏らす姿を撮られるなんて。想像しただけで裕太は絶望感と耐えがたい羞恥心に襲われる。
「ね、もう限界でしょう? お漏らししたいんでしょう?」
「やっ、ひ……、ん、あぁんっ」
低く濡れた声で耳元を犯され、シャツの上から身体を撫で回され。
嫌悪感と、それだけでないゾクゾクした感覚に裕太は堪らなくなってしまった。
「やっ、ふぅっ、でるっ! 見るな、あ、うぁあああっ」
チョロッ……ジュワ、ジョロロロ……
スーツの色が濃く変わっていき、漏れた小便が便器へ伝いこぼれていく。
「ああっ、すごい、いっぱい出てる……」
「やあぁ……ひぁ、止まらないっ……ん、撮るなあ……」
男は興奮した様子で裕太のそこをアップで撮りながら、片手でいきり勃った肉棒をいじっていた。
止めたくても一度出てしまえば止めることはできず、裕太は漏らしながら激しい羞恥とおかしな快感に喘いだ。
「はぁはぁ……すごく可愛かった。うっとりした顔して、おしっこ気持ちよかったんですね?」
「はぁ……ぉれ……」
そんな訳がない、気持ちが悪い。そう言いたいのに、裕太は男が言うように恍惚としてろくに反論することもできない。
「ああ、ほら、ここ……」
「っ、ああんっ!」
いきなり濡れたスラックスの上から陰茎を触られ、予想外の快感に裕太は激しく腰をびくつかせた。
「勃ってる……漏らすのがそんなによかったんですね。ほら、おちんちんがすごくいやらしい……」
「ふぁっ……あっ、らめぇっ」
そこは確かに勃起していた。小便で濡れてはりつく布を押し上げる様は卑猥そのもので、男も一層興奮してそこを撫で回す。
自分が信じられない。だけど身体が、心すらも、男に恥ずかしいことを言われ漏らしたことに興奮しているのは明らかだった。
「ハァッ、ここも、勃ってますね」
「っ、あぁんっ、やっ、んぁっ!」
シャツの上から乳首を擦られ、身体に電流のように快感が駆け抜ける。
「いやらしい人だ……お漏らししておちんちんだけじゃなくおっぱいまで勃たせて、そんな声で俺を誘って……。ね、ここ、舐めてほしい?」
「だれがっ……あっ、あんっ、んっふぅ、アァッ」
ろくに触ったこともない場所を男にいじられて、何故かとてつもなく気持ちがよくて、卑猥な声を抑えることもできない。
裕太の反応に気をよくした男は、焦らすように執拗に乳輪をいじり、勃起して透けて見えるそこをアップで撮った。そんなことをされるともう、乳首がじんじんと疼いてたまらなくなる。
「ね、おっぱい舐めてって言ってみて? そしたらいっぱい乳首の先っぽをぺろぺろ舐めて、それから、おっぱいが大きく腫れちゃうまでちゅうちゅう吸ってあげる……」
男のいやらしい言葉に、裕太の身体は激しく疼いて。
「ふぁあっ、な、舐めてっ! おれのぉ、お、おっぱいぃっ、ぺろぺろしてっ、いっぱい吸ってぇっあああんっ!!」
男は待ってましたとばかりに鼻息荒く裕太の乳首にむしゃぶりついた。
ペロペロ、れろっれろっ、ちゅっ、ぢゅぅっ、ぢゅううっ!!
「あああぁーっ! やらぁっ、おっぱいぃ、アアァッ、んっ、そんなっ、すごぃっ、はぁあんっ!」
舌が触れただけで異様なほど感じたのに、舐めまわして激しく吸われるともうわけがわからなくなる。
裕太は腰を淫靡に揺らめかせながら喘いだ。
「ちゅぅっ……はぁっはぁっ、この、淫乱がっ! こんなに感じるってことは、慣れてるんでしょう!?」
「ひあぁっ、んっ……、やっ、そっちはぁっ」
男は乳首をいじりながら、片手で荒々しく裕太のスラックスを脱がせた。
「ハァ、可愛いケツマ○コだ……ひくひくしてる……」
「やめっ……!」
脚を持ち上げて丸見えの格好にさせられ、尻穴をデジカメで撮られ。
さすがにまずいと思うのに、しびれるような興奮で身体が熱くなってしまう。
そんな自分を否定したくて抵抗しようと身体をよじるも、弱弱しい動きは男を誘っているようにしか見えないもので。
「っ、そんなに腰を振って! 今、こっちも舐めてあげますからっ!」
「ひぁっ、らめっ、アアアンッ!」
れろっ、ぬぅっ、ヌプププッ! ヌッ、ヌッ……
男は小便で濡れた尻穴の周りを味わうように舐めた後、ためらいなく舌を中に差し込んだ。
「ああああぁーっ! ああんっ! んはぁっ、やらぁっ、おしりっ、なんれぇっ……いれちゃやらぁっああんっ」
熱くぬめった舌が、敏感な粘膜をいやらしい動きで犯す。
激しく出し入れさせると、まるでセックスしているかのような錯覚に陥って、全身がとろけてしまう。
そんなところで感じるなんておかしいと思うのに、裕太は声を抑えることもできず腰を振って喘ぎ続けた。
「あぁっ……」
舌が離れたときには喪失感を覚えるほど、裕太はすっかり快感に溺れていた。
男の方を窺うと、爆発寸前に反り返った肉棒を取り出す姿が見え。
「んっ……な、に……」
普段なら目を逸らしたくなるようなものを裕太は凝視し、ごくりと唾を飲み込んだ。
「――これ、欲しいですか……?」
男は巨大な肉棒を裕太の尻穴にぴと、とあてがった。
「なっ……やっ、それだけは、やめっ……」
裕太は涙ぐみながら首を振る。
そんなことを、今まで自分が女にしてきたようなことをされたら、一体どうなってしまうのか。
text next