榊くんはスター 02
「んっ……」
「ご、ごめん、痛かった?」
「いや、別に。……絶対変なところ触るなよ」
「大丈夫大丈夫」
榊くんはときどき少しだけ声を出してたけど、力加減は間違ってないはずだ。以前マッサージした先輩は気持ちいいと言っていた。
俺は跨ったまま、マッサージに熱中した。俺が榊くんの疲れを和らげることで榊くんが一層活躍する――それってすごく素晴らしいことだ。
「うーん、結構凝ってるね。もう少し強くするね」
「……っ」
ぐっと力を入れて丁寧に背中を揉む。榊くんは時々身を捩ったり、咳払いをしたりと何だか微妙な反応を示したけど、本格的に嫌がられない限り俺は気づかないふりをして続けた。折角榊くんのために磨いた俺のフィンガーテク、ここで見せなきゃいつ見せるんだって話だ。
何だか楽しい。マネージャー冥利に尽きるというものだ。
「はぁっ、やっぱり榊くんの体は素晴らしい」
「何それ、興奮してるなよキモい」
「ご、ごめん、真面目にやってるから……っ」
息を乱しながら腰を揉む俺に、榊くんが驚くべきことを言い出した。
「……お前、本当に俺が好きだよな」
「へ? そ、そりゃあもう! 榊くんの一番のファンだと自負してる!」
「やっぱり俺で抜いたりしてんの?」
「抜く……? 何を?」
「だから……俺でシコったりキモいことしてんのかって聞いてんの」
俺はたっぷり十秒ほど固まってしまった。そしてようやく我に返って――慌てて否定した。
「ま、まさか! そんなことするわけないよ!」
「……いつも人のこと見てはあはあ言ってるくせに?」
「そりゃあ榊くんのプレー見たら興奮せずにはいられないしっ……」
もしかして、俺はずっといやらしい意味で榊くんを狙っていると思われていたのだろうか。
――――ああ、だからか。今まで周りにキモいだのヤバいだのストーカーだの言われて、榊くんからは近づくなだの私物に触るなだのと過剰に警戒されていたのは。
いや、ネタにされてキモがられてることはさすがに分かってたけど、冗談じゃなく本当に本物の、榊くんをオカズに日々オナっちゃうようなガチホモだと思われてたのか。ネタにしてはみんな真顔で酷いこと言うなあと思ってたけど、ようやく腑に落ちた。
それは大いなる誤解だ。誤解なんだ。いや本当に。
「あの……俺、確かに榊くんの大ファンだけど、そういう目で見たことは一度もないよ。変な目では見てないって、今までも言ったと思うけど」
「それはそう言うしかないよね」
「いや苦し紛れのごまかしとかじゃなくて本当に、だって俺普通に女の子が好きだし」
「……は?」
「実はその……最近いい感じになった子もいるんだよね。K校のマネなんだけど」
「K校って……うちが一度負けたところじゃん。適当言ってんなよ」
「いや、偵察に言ったときに話しかけられて、なんか気に入られたみたいで。も、もちろんライバルだから現役中は自重するつもりだけど、お互い引退したら改めて仲良くしない? とか言われちゃって」
口から出まかせとかじゃなくて事実だ。偵察に行ったとき、最初はマネの子に見つかって咎められたけど、いつの間にか話が盛り上がってしまったのだ。
その子もバレーオタって言っていいくらいバレーが好きで、自校のエースのスパイクに惚れ込んでた。どっちのエースがすごいかって言い合いするうちに、ライバル校だというのに意気投合してた。
前に榊くんが付き合ってた先輩マネみたいな美人ってわけじゃないけど、可愛らしくていい子だと思う。まだお互い恋愛ってほどじゃなくても、気が合うしこれから仲良くしていけたらなーなんて。
「……って感じで。つまり本当に、榊くんが警戒するようなことはないから、安心して?」
「――――あれだけ俺のこと好き好き言っておいて?」
「だから、榊くんのプレーが好きってことだから! プレーっていうのはもちろんバレーのプレーで、いやらしい意味のプレーじゃないから!」
「ふざけんなよ」
「はいごめんなさい! 下ネタはやめます!」
地を這うような声で怒られ、俺は慌てて謝罪した。けど、榊くんの怒りが鎮まることはなかった。
乱暴に体を掴まれたかと思うと、強い力でひっくり返されマウントを取られ、あっという間に体勢が逆転した。
見上げると榊くんは、僅差の試合で強烈なスパイクを決めたときみたいな、ギラギラと熱くなってる顔をしてて、俺は息を飲んだ。
「い、いたっ……」
「散々俺のことが好きってアピールしまくっておいて、ライバル校の女と付き合うとかありえなくない?」
「そ、それはだから、引退するまでは付き合ったりはしないしっ……俺基本モテないけど、その子は自他共認めるバレー馬鹿なんだって。だから仲良くなれて……」
「馬鹿はお前だよ。――そうか、他校ではお前の変態ストーカーぶりは知られてないからか」
「さ、榊くん……? ひっ」
何だかやけに硬い、脚でも腕でもない棒が腰に押し付けられてビクリとする。脚でも腕でもないとしたらアレしかない。だけどそんなことありえない。考えられない。
「お前がねちっこく揉んでくるから勃った。責任とってよ」
「っ……そ、そんな、あっ」
「言っとくけどただの生理現象だから、断じてお前に欲情したとかじゃないからな」
「それは分かるけど……あっ、ちょっ」
「本当に分かってんの? お前が今からこれの処理するんだよ」
ぐりっ……ぐりっ……ごりゅっ
「ひっ……あ……」
硬くて熱いものを太ももにしつこく擦りつけられ、俺はぞくりとした。
榊くんは本気なのかもしれない。どうしたらいいんだろう。
マッサージで生理的に勃起してしまうっていうのは聞いたことあるし、男女だったらエロいシチュエーションだなって思うけど、まさか自分の手で榊くんをそんな状態にしてしまうなんて。
「ほら、早くしてよ。マネージャーだろ」
「いや、マネージャーだけど」
マネージャーとは下の処理までするものなのか? 多分違う。でもこんなに硬くなったら出さないと無理だ。俺のマッサージでこうなったなら俺に責任がある……ような気がしてきた。
ごくりと唾を飲む。
「わ、分かった。俺が何とかする」
俺は恐る恐る榊くんのハーフパンツを脱がせにかかった。下着を明らかに大きいものが押し上げてて、できるだけ見ないようにしながら脱がせた瞬間、勢いよく凶器が俺の目の前に現れた。
榊くんの分身は、勃起して反り返っていた。完璧に剥けてて、カリが大きくて真っ直ぐで、さすが榊くんだけあってち〇ぽまでイケメンだ。
けど、綺麗っていうにはゴツゴツしてるし、太くて長いし、血管がビキビキしててちょっと怖いくらいだ。
どこもかしこも完璧だと憧れていた榊くんの体の一部に、俺は生まれて初めてちょっと引いてしまった。
「……変な目で見てんじゃねーよ」
「ご、ごめん、するから……っ」
ずっと見ていてもどんどん怖気づいてしまいそうで、俺は覚悟を決めて勃起ち〇ぽを握った。握った瞬間熱さを感じて、それからドクって脈打ったのが伝わってきて、何だかすごく危ないことをしている気分になる。
でも握ってるだけじゃイかせられないので、俺は恐る恐る扱き始めた。他人の物を扱くのなんてもちろん初めてだ。
自分でオナニーするときを思い出してやろうとするけど、悲しいかなサイズも形も違っててイマイチ上手くできない。俺のはこんなに血管が浮いてビキビキなんてしてないし。これが普通なんだろうか。分からない。
「下手だな。男のくせに、普段オナニーしてないの?」
「し、してるけど、他人のなんてしたことないし」
「先輩に扱いてって頼まれなかった?」
「頼まれるわけないって」
「ふーん……。こんなんじゃいつまで経ってもイけないな。フェラしてくんない?」
更に衝撃的なことを言われ、俺はまた固まった。
「お前、俺のなら絶対喜んでしゃぶるって他の奴に噂されてたよ」
「そ、そ、そんなこと……」
「フェラなら男でもいいから、自分のを処理させてみようかなって言ってる奴もいたし」
「ひいっ」
まさかそんなことを考える奴がいたなんて。もちろんフェラをしたいなんて思ったことは一度もない。されてみたいと思ったことは、そりゃ男だからあるけど。女の子が嫌がるなら無理にとは言えないなとか、俺は妄想の中でも気を遣ってたっていうのに、処理させようだなんて外道だ。
「できない? こんな手コキじゃイけなくてきついんだけど」
「……」
普通に考えたらフェラなんて無理だ。だけど榊くんのち〇ぽはイケメンで、大きさとか浮き出た血管がちょっと怖いけど汚い感じは全然しない。
スターである榊くんを、勃起したままなんて間抜けな格好で外に出すわけにはいかない。俺は意を決した。
「ま、お前じゃ無理か。――って、おい」
「ちょ、ちょっとだけなら……んっ……」
心臓がバクバクうるさい中、俺は恐る恐る先端を舌でちょっと舐めてみた。
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