目指せ名探偵 02



僕は探偵の端くれだ。
探偵と言ってもホームズや金田一のように華々しく活躍するようなものではなく、定番の浮気調査やらペット探しやらの仕事に追われる日々だ。
この職に就くまでは紆余曲折あった。所長はひと癖もふた癖もある人だけど、行き場をなくしていた僕を拾ってくれた恩があって頭が上がらない。
給料は仕事の出来しだいで安定しているとは言えない。先日は調査対象が入ったフランス料理店で、僕も様子を窺うため客としてワインと食事をいただき経費扱いにしようとしたら罵倒された。
その次は調査対象が泊まった三ツ星ホテルに僕も経費で泊まったところ、やっぱり所長に激怒され代金は給料から天引きされた。次にやったらクビだと非情な通告を受けてしまった。
確かに、いくら魚料理に合ういい白ワインがあったとはいえ仕事中に飲むのはよくなかったかもしれないけど、ホテルに泊まるのは必要だと感じたからなのだけど。働くとは難しい。
しかし探偵業は 中々性に合っていると思っているのでクビにされない限りは続けていくつもりだ。

さて、今日の仕事はある男の身辺調査だ。僕に割り当てられる仕事の中ではまともな部類なのでやる気を出してたけど、所長から調査対象のデータを渡されて驚いた。
棚橋というその男のことはよく知っていた。何を隠そう僕の父の秘書で昔から顔見知りだったから。
これでも僕の実家である三門家は会社を複数経営しているような名家だった。
今現在もそれは変わっていないが、過去形にしたのは僕が家を飛び出してしまったからだ。
色々あったんだけど、結局のところあの家と根本的に合ってなかったんだと思う。お坊ちゃま扱いされて将来を決められることにうんざりしたというか。
どうせ跡継ぎは兄さんがいるし、家族も僕のことは呆れつつ大して気にかけられてる気がしない。
話を戻すと棚橋は三代に渡って三門家に勤めている家の者で、昔は僕の面倒を見させられたりしていた。
将来の重役候補として、今は秘書として辣腕を振るっているはずだ。
僕は彼のスケジュールを調べ上げ、棚橋が取引相手と料亭で食事する日を掴んだ。
その料亭というのが僕も何度か行ったことのある三門家御用達の店で、色々と手を回して部屋にカメラを設置することに成功した。
今回は捨てたはずの三門家の名を借りた。長い人生そういうこともあるものだ。
そして棚橋と取引相手との接待の時間、僕はドキドキしながら近くの牛丼屋で待っていた。牛丼屋は最近行くようになったんだけどこれが意外と美味しい。僕も庶民の生活に適合してきたということだろう。
しかし長居していい場所ではないらしく、食べ終わった後料亭の方向を見守っていると店員の視線が痛くなってきて、しばらく外で待つはめになった。寒かった。
寒さを乗り越え見張り続けた結果、棚橋と取引相手がようやく料亭から出てきた。
後はカメラを回収するだけだ。僕はスキップするくらいの気分で部屋に行ったのだけど。

「――貴方は」

何と部屋に入ったところで帰ったはずの棚橋が戻ってきた。
忘れ物だろうかこのうっかりさんめ。
いやうっかりさんは僕だ。不覚である。

「何をやっているんです、大貴さん」

棚橋が呆れたように見下ろしてくる。

「いや……ぐ、偶然だな! 僕もここで夕飯を食べてて、部屋を間違えたみたいで」
「目が泳いでますよ。三門家を出た貴方がこんなところで食事できるほどの余裕があるとは思えませんが」
「くっ……」
「どうせろくでもないことを企んでいたんでしょう。そろそろ家に戻っては? ご両親も心配されていますよ」

こいつには昔から説教され続けてきたが、この期に及んでもそれは変わっていなかった。
でも僕はもう大人だ。この局面を切り抜けてカメラを回収し、仕事を成功させてみせる。
そのためには棚橋が邪魔だ。何とかしたいけどこいつは隙というものがない。どうしたものか。

「……そうだ、せっかく偶然会ったんだし、一杯やってかないか」
「――貴方が俺と?」

棚橋が意外そうな顔をする。

「何だ、嫌なのか」
「いえ、ただ貴方は俺を煙たがっていたから意外で。特に家を出てからは三門家の関係者のことは避けていたようだったのに、どういう風の吹き回しかと」
「い、いいだろ別に。この部屋まだ使えるよな」

僕は強引に棚橋と飲むことにした。
弱点らしい弱点が見当たらない棚橋だけど、酒はあんまり強くないと聞いたことがある。僕は成人するのとほぼ同時に家を出たから一緒に飲んだことはないけど。
未成年のころ部屋で友達と飲もうとしたら阻止されて説教されたことがあるだけだ。ろくでもない思い出だ。
とにかく酔わせてさっさと帰ってもらうか、席を外させればいい。
運ばれてきた日本酒で、和やかとはとても言えない乾杯をした。

「ところでお前、最近仕事のほうはどうなんだ」
「どうと言われましても、特に変わりないですよ」
「変わりないって言ったって、何かあるだろ、色々と」
「仮にあったとしても、三門家の人間でなくなった貴方に話せることはありませんね」
「つ、つれないやつだな」

会話で情報を引き出すのは無理そうだ。まあそれは元々期待していない。カメラさえ回収できればいいのだ。

「それより、貴方のほうこそどうなんです。ちゃんと生活できているのですか」
「できているよ。心配されるようなことはない」
「どうだか。世間知らずで周りに頼ってきたあなたが、いきなり一人で生きていけるとはとても思えません」
「うるさいな、お前には関係ないだろう」
「関係ない……?」

説教モードに入りそうなのが煩わしくて言うと、棚橋の声が不穏なものになる。

「そうだろ、お前の言ったとおり僕はもう三門家を出たんだ。外で親身になってくれる人も見つけた。もうお前にどうこう説教される謂われはないね」
「親身に……そうですか。それはよかった。確かに俺達はもう関係がない。それなら」
「えっ……!?」

いきなり視界がひっくり返った。
畳の上に押し倒されたのだ。

「貴方が三門家の人でなくなったなら、こんなことをしても誰も助けてはくれませんよ」

棚橋が僕のシャツをめくると、あろうことか乳首を指で弾いた。

「あぁっ…やめっ、あッあんッ」

何だこれ。乳首からじんっとした感覚がして、体が震えた。くりくりされると勝手に上ずった声が出てしまう。
何でいきなりこんなことになるんだ? 酒を飲んだせいか頭がうまく働かない。なんてことだ、僕が酔ってどうする。
棚橋は僕の反応に一瞬動きを止め、またすぐに弄り始める。

ぐにぐに、くり、くり、こすっこすっ、くりくりくり

「あッ、あんっ、や、ん、はぁっ、あっ…ん」

どうしよう、屈辱的なのに声が止まらない。じっとしていられないくらい乳首のじんじんが強くて、触ってないちんこまでじんじんしてる。

「大貴さん、乳首感じるんですね」
「っ、感じてなんか、ひッあぁッ」
「感じてない? すごくいやらしい声出して、腰びくびくさせてるのに」
「変なことを言うな…はぁっやっ、あッんんっ…」

くに、くに、こすっ、こすっこすっ、ぐに、ぐに、ぐに、

乳首がちんこになったみたいだ。指でつままれたり、弾かれたり、押しつぶされたり、何をされても変な声が出てしまう。
棚橋は赤く充血した乳首をじっと見ながら責めたかと思うと、僕の顔を覗き込んでくる。

「乳首硬くなってきた。こんなに小さいのに勃起して、ちゃんと性器になってますよ」
「あぁあっ…やだぁっ…、あッ、はぁっあっあん…」

棚橋が内緒話をするみたいに囁いてきて、少し掠れてる声がやけにいやらしく感じる。まるで僕が女役にされてセックスしてるみたいな空気で、恥ずかしさにかあっと熱くなる。

「もっやめろよ…はぁっ、ひあッ、んっ…」
「こんなに感じてビンビンになってるのに、やめてほしいんですか? 俺は――ここを舐めたいって思ってますが」
「〜〜っ! はぁっ、や、あっあぁ…っ」

舐めたいなんて変態みたいなことを言われて、一瞬でそれを想像してしまってゾクゾクする。
無意識に棚橋の口元を見た。綺麗な歯並びから見え隠れする舌に、敏感な乳首をねっとり舐められたら――。

「はあぁっ…や…あ、ん、んっ…」

くり、くり、ぐに、ぐに、くりゅ、くりくり

「乳首舐めるの嫌……?」
「ぁあっ…、あっ、そんなっ…あっあっ」
「拒否しないんですね、さっきまでやめろやめろって言ってたのに。乳首でもっと気持ちよくなりたいんですね」
「っ、ちがっ…アッあぁんっ」

れろっ……れろ、ちゅ、ちゅく、ちゅく……

片方の乳首に棚橋が唇をつけ、いきなり舐められた。

「あぁッあんっひあぁっ…あッあ〜っ…」
「んっ……」

何だこれ。びっくりするくらい気持ちいい。
乳首が舐められるたびに蕩けるような快感が襲ってきて、腰がびくびく跳ねてしまう。

「あぁんっ…、あぁっ、ちくび、…あっ、あぅっ…」
「ん……舐められるの好きなんですね、淫らな声を出して」
「はぁあっ、噛むな…っあっ、ひあっんんっ」

喋りながら甘噛され、ちんこまで感じて先走りがにじみ出てくるのが分かる。パンツが濡れてしまってるけどそれを気にする余裕もなかった。

れろ、れろ……ちゅく、ちゅく、ちゅく、くりくりくりくり

「あぁんっ…も、だめっ、あッあッはあぁ…」

棚橋はやけに熱心に乳首を舐め続ける。喘ぎすぎて息が苦しくなってきた。
気持ちよさにどうしていいか分からなくて胸元にある黒い頭を見ていると、棚橋がいきなり顔を上げて目が合った。

「〜〜っ、あぁっ…! たなはしっ…やめ、あッあんっ」

いつも僕に小言ばかりだった棚橋が、何故か僕の乳首をいやらしく舐めていて、それが異常に気持ちいい。
恥ずかしくて、変な興奮が沸き上がって、もうどうしたらいいか分からない。

ちゅっ、ちゅく、ぬる、れろ、れろ、くりっくりっくりっくりっ

「ひああぁっ…あッ、やっ、あッあんっあんっ」

乳首が濡れた舌にひたすら責められて、どんどん敏感になっている感じがする。舐められて、吸われて、甘噛されて、何をされても腰がビクビク跳ねて、ちんこはもう完全に勃起してる。
勃起したちんこや、ズボンにまで透けそうなほど濡れていることが恥ずかしくて隠そうとしたけど、身動ぎして擦れただけでじんと感じてしまう。

「脚をもじもじさせて……下も触ってほしいと誘ってるんですか」
「そんなわけっ…あッあッ、ぅあんっ」

からかわれてるのかと思ったけど、低く囁く棚橋の声はふざけてる感じは全然しなくて恐ろしい。

「勃起して辛いんでしょう。――見せて、大貴さん」
「ああぁっ……」

ズボンを脱がされてしまった。
案の定パンツは思い切り濡れて色が濃くなっていて、うっすらちんこの形が透けてしまっている。間抜けな光景だ。
棚橋がそこをじっと見られて、どうしようもなく羞恥を感じて、顔がかっと熱くなる。

「こんなに下着を濡らして……大貴さんは濡れやすいんですね」
「っ……変なこと言うな、見るな…ああぁんっ!」
いっそ笑ってくれればいいのに、棚橋は真剣で、まるで欲情してる男みたいで、余計に恥ずかしくなる。
パンツの上から濡れたカリを触られたら、電気が走ったみたいに強烈に感じてひっくり返った声が出た。

くちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ、ぬちゅ、くちゅくちゅっ

「亀頭のピンク色が透けていますよ…。女みたいにびしょびしょに濡らして……淫らな」
「アッあんッあんッ先っぽ…だめっ、ひあッあーっ…」

指でクリクリとカリのところを責められる。下着越しにされているのが何だか無性にいやらしく見える。

「脱いで、どうなってるのか見せてくれますか?」
「やっ…アッあッはぁあっ…」
「脱がせますよ」

脱ぐのを拒否したらあっさり脱がせられた。なら最初から訊くな。

「――ああ、綺麗な形だ。勃起したらちゃんと剥けてるんですね。俺にオナニーのやり方を聞いてきた子供とは思えない」
「何を…っはぁっ、はぁっ…」
「覚えてますか、あのときのこと。俺がどんな気持ちだったか分かりますか?」

そういえばそんなこともあった。確か僕が中学に上がったばかりの頃だ。


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