失恋と10万円 02


あり

いきなり視界に海斗のアップが広がって、ただでさえ速くなっていた鼓動が全力疾走したときのように激しくなる。

「焦らしてるつもり? 俺とやりに来たんだろ」
「やっ……やりっ……ぁっ」

さすがホストとしか言いようのない色っぽい声で囁かれたかと思うと、慣れた手つきでシャツのボタンを外される。
急展開に頭がパンクしそうになり、篤己は思わず海斗の胸を押し返した。

「っんだよ。もったいつけてんじゃねーよ」
「ち、ちが……海斗はその、ノンケだろ? 無理しなくていいから、俺がするっていうか」

不服そうな海斗に、篤己はそうまくしたてた。
海斗としては金のためにさっさと済ませてしまおうという感じなのかもしれないが、何せ彼はノンケだ。普通にやったら萎えられるのは火を見るより明らかだった。
せっかく大金払うのだから、いかにも嫌々やっているのを見るのは辛い。
篤己は意を決して、海斗の股間に触れた。

「……っ」
「なあ、触っていい……?」

と、触った後に聞く。金を出すのはこちらなのだから、多少強引にいってもいいだろう。
少しびくりとしただけで抵抗がないのをいいことに、篤己はスラックスの前を開いた。
意外なことに、少しスラックスの上から擦っただけの海斗のペニスは半勃ちになっていた。この刺激に対する弱さ、思った以上に若いのかもしれない。ちょっと可愛い。
テンションが上がってそれを取り出すと、なんというかサイズは可愛くはなかった。
半勃ちでもズル剥けでカリが立派に張り出していて、赤黒く大きい。
こんなところまで少し隼人と似ている――と苦々しい思い出が蘇ってきて、篤己はそれを振り払おうと目の前のペニスに舌を這わせた。

「っ…、おいっ…」
「んっ、ん、…んむっ」

唾液で濡れた舌で側面を何度も往復すると、頭上から海斗の吐息が聞こえてくる。
感じさせているのだと思うと嬉しくて、興奮してきた。
歯を立てないようにゆっくりと深く咥えても、大きすぎて半ばまでしか入らない。
軽く吸いながらいったん口を離すと、ペニスは腹につかんばかりに反り返り、青筋を浮かせていた。
見ているだけで身体が疼いて熱くなる。

「はぁ…きもちいい?」
「…うるさい……」

カリのくぼみのところを舐めながら海斗を窺うと、目元を赤く染め、欲情した顔をしていた。
きっと今の自分は、彼より数段いやらしく物欲しげな顔をしているのだろう。
そう思ってもあまりに色っぽい海斗に目が離せず、また海斗も何故か同じで、互いに見詰め合ったまま逞しいペニスを咥え刺激する。
大きすぎて顎が痛くなってきたけど、それ以上にエロい気分になって、興奮する。

ちゅ、ちゅう、れろっれろっ
ヌプ、ちゅぶ、ちゅぶ、じゅぶっじゅぶっじゅぶっ

「んっ、んっ……ぁっ、すごい、おっきぃ…、んんっ」

恍惚としてそう呟くと、ペニスがドクッと震え、海斗が篤己の頭を押さえつけ腰をガンガン振ってきた。
強制的にピストンされ、硬いペニスで口内のやわらかいところを突かれまくる。

「んんっ…! んっ、むぅっ、んっ、ぅんっ、んっ」
「くっ、…はぁっ、いくっ、…!」

息苦しくて少し痛くて、それでも酷く身体が昂ぶる。
海斗は腰を振りたくって掠れた声を上げたかと思うと、いきなりそれを引き抜き、大量の精液を篤己の顔にぶちまけた。

「はぁっ…ぁ、あ、ん……」
「ハァ、ハァッ……」

どろりとしたものが頬をゆっくり伝い落ちて、篤己は呆然とする。
隼人のを咥えたときだって顔射などされなかったのに。
屈辱的で、自分が酷く恥ずかしい存在に思えて――ぞくぞくと身体が疼いた。
海斗が何故かこちらをじっと見てくるものだから、どうしようもなくいたたまれない気分になる。

「……顔洗って……シャワー浴びてくる」

と、あからさまに顔を逸らして、篤己はバスルームに向かった。
ラブホは初めてだが、自宅のユニットバスと比べて数段広くて綺麗だ。
心を落ち着かせるためにも風呂に入りたいなと思い、篤己は勢いよくお湯を出した。
その間に、丁寧に頭からつま先まで洗っていき、手持ち無沙汰になったのでまだ浅い浴槽に入る。

「ん? 泡風呂かあ。このボタンは……うわっ」

壁についていたボタンを押してみると、ぼこぼこと気泡が出た後ジェット噴射が始まった。
そこに泡風呂用の入浴剤を入れると、どんどんきめ細かい泡が立っていく。

「気持ちいいなあ…」

篤己は泡に埋もれてぼーっとした。
何分も、何十分も。
しかし上がる頃になってようやく、今は海斗の時間を買っているのだと思い出す。もったいなかったかもしれない。
身体を拭き、ドライヤーで髪を乾かし、バスローブを身につけてベッドルームに戻ると、海斗はベッドに座っていた。
金だけとって帰ったりしていなくて安心すると同時に、リラックスしていた体が再び緊張してくる。
二人の視線が交わった。と、海斗の目が何だか据わっているように見えるのは気のせいだろうか。
よく分からないが焦って、篤己は作り笑いを浮かべて言葉を探す。

「あー、風呂、気持ちよかったよ。海斗もよかったら――」

言い終わる前に、篤己は再びベッドに引き倒されていた。
今度は海斗の表情を確かめる間もなく、噛み付くようにキスされた。

「んんっ!? んっ、ぅんっ……」

驚きすぎて、頭が真っ白になる。
一旦離れようとするも顔を押さえつけられ、何度も何度も食むように唇を吸われる。
最初は閉じていた唇も、狭間をじっとりと舐められているうちに力が抜け、少し開いてしまうとこじ開けるように舌が侵入してきた。

「ふぅっ…、んっ、んんーっ…」

上あごや舌の裏側にやわらかい粘膜を擦り付けられ、全身が痺れてぞくぞくする。
めまいがする。唇も、自分の身体も、海斗の身体も、熱くてたまらない。
舌を絡めとられて吸われると腰がひくついて、半勃ちのペニスが海斗の腰のあたりに当たってしまう。
恥ずかしくて逃げようとすると、逆にその部分に硬くて熱いものをぐりぐりと押し付けられ、言葉にならない喘ぎが漏れた。

「んっ…ぁっ、や、ぁんっ」
「――俺を焦らしてるつもりかよ? この淫乱がっ…」
「なに…ぁっ、ん…」

キスが終わると息つく間もなく耳に唇を寄せ、憎憎しげに囁かれる。
熱い息でびくりと震えたところに濡れた舌を差し入れられ、勝手に腰が揺れて海斗の昂ぶりと強く擦れてしまった。
海斗の言っていることの意味はよく分からず、篤己はただもどかしい感触に悶えることしかできない。

「ひゃっ…、あっ、あっ、だめっ…んんっ」
「ハァ…これだけでいやらしい声出しすぎだろ、なあ…」

ひたすら耳をしゃぶられて、脚ががくがくしてくる。
いつの間にか篤己のペニスもビンビンに勃起して、行き場のない快感がカウパーになって下着を濡らしていくのが分かった。
気持ちいいけどもどかしい。もっと、もっと激しく、ちゃんと触って欲しい――そんな欲求を見透かされたのか、海斗が意地悪く囁いてきた。

「…どうしてほしいんだ? 男相手なんてよく分からないな。言ってみろよ…」
「……ぁっ、ん…」

隼人に良く似た面差しに壮絶な色気を浮かべた海斗と、至近距離で目が合う。
胸が疼いて、篤己はごくりと唾を飲んだ。
いつもは可愛い女の子としか寝ないであろうこの男が、金のためとはいえ、命じれば好きなことをしてくれるのだ。
正直なところ乱暴な海斗に少し怖気づいていたが、こんなチャンスは二度とこないかもしれない。
篤己は意を決して、シャツの裾の掴んだ。

「っ……、ち、ちくび、さわって…」

篤己は羞恥に頬を赤くしてぎこちなくねだった。
気持ち悪いと突き放されるかもしれないと思うと怖くて、海斗の顔を見ることはできず俯く。
すると一瞬の沈黙の後、頭上で唸るような声が聞こえたかと思うと、突然乳首にむしゃぶりつかれた。

「っひゃぁっ! あんっ…アッ、あぁっ」

まさか舐めてくるとは思っていなくて、予想外の強い刺激にひときわ甘い声が漏れてしまった。
唇で食まれたかと思うと舌でちろちろと舐められ、濡れた粘膜の感触が今まで経験したことのないような快感を与えてくる。

ちゅ、ちゅ、れろれろ、ちゅく、ちゅくっ、ぢゅううっ

「あっあッ、…んっ、やっ、はぁんっ…」
「はぁっ…男のくせに、エロい乳首しやがって…んなに気持ちいいのか?」
「んぁっ、…い、い…ちくび、きもちいっ…あっあぁんっ」

最早どう思われるかなんて考えられず素直にいやらしい言葉を口に出すと、片方を指でぐりぐり弄りながら、片方を乳輪ごと強く吸われた。

「あぁんっ! ぁっあっ、もっ、らめぇっ…ちくび、ふぁっ、あんッ…」
「何が駄目なの…? いいんだろ? ピンク色のエロ乳首、こんなにビンビンにして…」
「だって…っ、ぁっ、ん、もう、いっちゃ…いっちゃうからぁっ」
「……っ」

篤己のペニスは、乳首の快感とごりごり押し付けられる海斗のペニスとで、硬く張り詰めながら濡れそぼっていた。
涙目で訴えると海斗は熱い息を吐き、やめるどころかいやらしく舌を回して敏感な乳首全体を舐めてくる。
乳首が性器になったかのように強烈な快感が全身に広がり、篤己は泣き叫ぶように喘いだ。

「ああぁっ、やぁ、いっちゃ、あんッ、いくっ…あっあっ、はぁあんっ!」

張り詰めた乳首を吸いながら舐められ、ぎゅっぎゅっと搾乳するように絞られ、篤己は腰を痙攣させながら絶頂に達した。
下着が精液でびしょびしょになり、ペニスは布に圧迫されながら絶えずびくびく震えている。

「あーっ……はぁっ、はぁっ、ぁ、ん、…」

想像のセックスより遥か上をいく気持ちよさに、篤己は呆然と天井を眺めていた。
しかし余韻に浸る間もなく、海斗の手が性急にバスローブをめくってくる。

「うわ…ぐしょぐしょだな。こんなに濡らして、恥ずかしい…」
「やっ……、ん、だめ、ぁう…」

パンツに大きなシミができ、亀頭から裏筋まで貼りついて透けている様を見られ、羞恥と興奮に身体が震える。
ノンケなのだから流石に萎えるんじゃないだろうか。そんな心配とは裏腹に海斗は情欲の篭った目で凝視してきて、パンツをゆっくりと横にずらした。
ペニスも玉も肛門も、全てが露になる。
視線を意識してしまうとどうしようもなく下半身がひくついて、生理的な涙が滲んできた。
もういいと止めてしまおうかと思った瞬間、海斗の指が濡れそぼったアナルに触れ、大げさなほど腰が跳ねた。

「あっ…そ、そこは、いやだっ…」
「何で…? ひくつかせて、誘ってんだろうが」

慌てて押し返そうとすると少し不機嫌な声で言われ、執拗に襞を伸ばすようにぐりぐりと撫でられる。
驚いてしまって、すぐには言葉が出なかった。
篤己はゲイだが、アナルセックスをしたいと思ったことはない。本来そのための器官ではないアナルにペニスを入れるには抵抗があるし、触れ合えるだけで十分だと思っていたから。
だから、そんなところに触れてくる海斗が最初は信じられなかった。
しかし、考えてみるとノンケの彼の中ではゲイはアナルセックスをするものだというイメージがあるのかもしれない。金で買われている以上、嫌でもやらなくてはいけないという間違った義務感からしているのだろうと。

「やっ、海斗、そこは、ホントにしなくていいっ…ぁ、やめっ…」
「しなくていい…? 今更、そんなのが通用すると思ってんのか?」
「なっ…ひっ、ぁっ、あぁあッ!」

海斗のためにも制止したつもりだった。なのに海斗は、怒ったように息を吐き出すと、アナルに長い指を挿入してきた。

ヌッ、ぬちゅ、ヌプププッ

カウパーと精液で濡れそぼっていたため、恐れていたような痛みはなかった。
ただ感じたことのない異物感と、内部がじくじくと疼くような感覚に、篤己は胸を喘がせる。

「っ……絡みつきすぎ。好きなんだろ? 尻にハメられるの…」
「あっあッ…やらぁ…ぬいて、はぁ、ぬい…んぁあっ」

少し抜いたかと思うとヌプヌプと出し入れされ、言葉は喘ぎに変わった。
内部を擦られると電流のような快感に支配されて、何も考えられなくなってしまう。

「あんっ…やらぁっ…おしり、んんっ、らめぇっ…あっふぅっ」
「っ、ビッチのくせに、嫌とか言ってんじゃねえよ。誰かに操立てでもしてるつもりか」

嫌だというたびに海斗は乱暴さを増して中を弄り、いつしかアナルにハメられた指は2本に増えていた。
海斗の物言いの意味が本当によく分からなかったが、次の瞬間、篤己は突然正気に引き戻された。

「くそっ…金払ってるのはこっちなんだ、お前はただアンアン言ってればいいんだよ」
「えぇっ!? ちょ、ま……やぁあ…まって…っあぁっ、あっあッ」

耳を疑って問いただそうとするも、腹側のしこった部分を指を回しながらごりごりと擦られ、ひっきりなしに喘ぎ声が出てしまう。
しかし、到底そのまま聞き流せるような話ではなく、篤己は快感に震えながら必死に言葉を紡いだ。

「はぁっはぁっ…んっ、じゅうまん、はらうのは、おれなんだけど…あっやぁっ」
「……はあ?」

なんとか伝えると、海斗は虚を突かれたような表情でこちらを凝視してくる。
しかし指は相変わらず内部に埋め込まれたままで、動いていなくても腰が震えてしまう。

「だから、はぁ、おれが、おまえを、買ったのっ…!」

涙目で睨みつけながら言うと、海斗は眉間に皺を寄せて何か考えているようだった。
信じられないことに、海斗は自分が篤己を買ったと思い込んでいたらしい。
普段高く売っているのであろう男が何故そういう発想になったのか全く不明だが、まずは間違いを正さなくてはならない。
乱暴なのも待たせて怒るのも言うことを聞いてくれないのも、自分が客だと勘違いしていたのなら合点がいく。正しく認識すれば、きっともう少し篤己の意思を尊重してくれるだろう。
沈黙の後、ようやく海斗が少しばつが悪そうに口を開いた。

「――なんで、俺を買おうと思った?」
「……、な、なんで、って……」

思いの外真剣な表情に、篤己は視線をさまよわせる。
話すとそれなりに長い事情はあるが、自身の惨めな失恋話を目の前の男に知られたいとは思えない。
少し考えて、篤己はおずおずと口を開いた。

「う……運命だと、思ったから……かな?」

そこに至るまでの過程は大きく端折ったが、嘘は吐いていない。
あんなタイミングで隼人とよく似た海斗が現れて、篤己は普段ならありえないような衝動に突き動かされたのだ。
すぐに言葉を返してこない海斗に、この言い方じゃ引かれたかもしれないと思い、篤己は笑顔を取り繕う。

「いや、変な意味じゃなくて…。とにかく、ちゃんと金は払うから、俺の言うことを…って、ひゃっ」

一度は抜かれていた指を、いきなりアナルに突き入れられ、ひっくり返った声が出てしまった。
人の話を全く聞いていなかったのだろうか。

「やっ…海斗っ、はぁっ、おれは、尻はしないって…ん、ぁっ、あんっ」
「何で…? 10万払って買ってるほど男が好きなんだろ? 気持ちよさそうな声出して…」
「っ…それはっ…やァッ、あっあッ、そこっ…、ぁひっ、あーっ…」

海斗は首筋に齧り付きながら、今度は最初から的確にイイ場所をぐりぐりしてきて、少し治まっていたペニスがあっという間に張りつめてしまう。
おかしい。こんなはずじゃなかったのに。頭ではそう考えていても、全身は強烈な快感に支配されて痙攣し、ろくな抵抗もできない。

「海斗ぉ…っ、あっあんっ…もっ、そこやらぁっ! はぁっ、あッぅ、ぐりぐり、しないでっ、んっ、いぁッ、へんに…っ、へんになっちゃうっ…」
「……っ」

わけがわからなくなる快感が怖くて必死で懇願すると、海斗は痛いところがあるみたいに眉間に皺を寄せて顔を歪め、指を引き抜いた。
抜かれてもじんじん痺れるような快感の余韻が続き、穴は物欲しげに絶えず収縮している。
やめろと言ったのは自分なのに、何かがほしくて堪らないような感覚に襲われて、篤己ははあはあと荒い息を吐いて目を閉じた。
本当に、どうにかなってしまうかと思った。ここから、こちらがリードして仕切りなおしできるだろうか――と無理があることを考えていると。
熱くて硬いものが、アナルに押し付けられた。

「ひっ…ぁ、だめ、海斗っ……」

目を開けて、篤己は驚愕した。
海斗の巨大なペニスが、ひくつく篤己のアナルにハメこまれようとしていたのだ。
ぞくぞくぞくっ……と身体に電流が走った。
海斗のペニスは今達してもおかしくないほど猛々しく反り返っていて、ゴムもつけず血管を浮き立たせている。
ナマであんな凶器を挿れられて、奥まで突かれまくったら――。
恐怖心を忘れたわけではない。だけどそれ以上に激しい興奮と期待で、勝手に腰が熱くなっていく。

「挿れるよ…お前のいやらしい穴に、奥までずっぽりハメてやるから…」
「ぁっ、だめ…っ、そんな大きいの、むりっ…、はぁっ、あッ、あぁーっ…」

拒絶の声は、最早喘ぎと同等に甘いものでしかなかった。
狭く濡れた肉を押し広げながら、膨れ上がった亀頭が挿入されていく。

ぬちゅ…ヌ、ズヌ…ヌッ、ズブッ

「ひっ、あーっ…らめっ…はっ、……っ」

あまりの衝撃に、一瞬呼吸もままならなくなった。
慣らされたおかげか、恐れていたほどの痛みはなかったが、太い剛直が内部をこじ開ける感覚に全身が震える。

「ひぃっ…んっ、ぁぅ、…むり、あッ…うぅっ」
「……っ、きつ……、力抜いて…」

海斗もどこか苦しげな声で、今の篤己にとっては無茶なことを命じてきた。
篤己とて痛いのは嫌だから力を抜こうと試みても、窄まりが緩むことはなく、むしろやたらひくついてみっちり咥えこんでいるペニスをより意識してしまう。
すると海斗が堪えかねたような荒い息を吐き、いきなり強引に腰を押し進めてきた。

「ああぁんッ! いぃっ…うぁっアッ、あぁーッ!」
「……ッ、ハァッ」

張り出した亀頭が内部の全てをしたたかに擦り上げながら、ズプズプと奥まで侵入する。
やり場のない壮絶な快感に、篤己は指が白くなるほど強くシーツを握り締めて卑猥な声を撒き散らす。
海斗の筋肉質な腹が篤己の下半身にくっつき、全部挿れられてしまったことが分かった。

「はぁっはぁっ……あ、ぁぅ…、はぁっ、んッ…」

ろくに出し入れもしていないのに、海斗のペニスが巨大なせいで常に性感帯を圧迫されている状態で、内部が蕩けるようだ。
すがるように海斗を見つめると、情欲に濡れた目に射すくめられる。
百戦錬磨のホストらしからぬ、どこか切羽詰ったような色がそこには合って、不意に胸がざわめいた。
顔立ちはやっぱり隼人によく似ている。似ていることは確かだが、実際に隼人と重ねて見ることはできていない自分に気がついたのだ。
誰かを誰かのかわりにしようなんて、土台無理な話だった。隼人は決してこんな目で篤己を見ることはない。
何とも言いがたい切ない気分になって、思考を奪うような強烈な快感とあいまって勝手に涙が滲み出てきた。

「ひっ…ぁ、ぅんっ……」
「――泣くほど、痛いのか」

篤己の涙を見た海斗は、少し動揺したようにそう訊いてきた。こういうところは憎めないやつなのだなと、おぼろげに思う。

「…っ、い、たくは…ぁ、あつくて、硬いの、んぁっ……きもちぃ…あっ、あぁんッ!」

ヌッ、ズプ、ズプ、ズプッヌプッ、ズヌゥッ

言い終わらないうちに、大きな手で腰を強く掴まれ、海斗が律動を始めた。
挿れられているだけでも感じてしまっていたのに、動いて擦られると目の前が真っ白になるほど気持ちがよくて、自分でも信じられないほど卑猥な声がひっきりなしに出てしまう。

「あーッ、あぁッあっあっあんっ、らめぇっ…ごりごりしちゃっ…はぁッ、いぁあんっ」
「お前…っ、そんなに、これが好きか…? 淫乱……っ」
「ちがっあっ、ひっふぁっ、い゛ぃっ…あっぁんッあふぅっ」

紛れもなく初めてなのに淫乱よばわりは心外だと言いたくて、一方で獰猛な表情で言葉責められるとぞくぞくとどうしようもなく感じてしまう。
最初は浅く緩やかだった律動も段々と速度を増していき、無意識に攣りそうなほど脚を突っ張りながら篤己は悲鳴のように喘いだ。
海斗はその様をじっと見つめながら、尖った乳首をきゅっと親指で押しつぶしてきた。

「ひゃああっ! らめぇっ…あッあんっ、あんッそこっ…んっ」
「乳首弄られるの、本当に好きだな…。舐めてほしい…?」
「あッ、いいっ…ひあっアッあんッなめちゃっやらぁっんッ」

舐められながら突かれたりしたら、それこそ本当におかしくなってしまうかもしれない。
だから断ったつもりだったのに、海斗は一層興奮した顔になって、性急に篤己の身体を抱き上げてきた。

「ああぁんっ! んゃあぁっ、あッやあっ、あんっ、あぁッ」

海斗の脚の上に座らされ、自分の重さのせいでより深く咥えこんでしまう。
その体勢で乳首に吸いつかれ、蕩けるような気持ちよさに篤己のアナルはぎゅううっと音がしそうなほどきつくペニスを締め付けた。

ちゅっ、レロ、れろっれろっ、ヌロォ…ちゅううっ……。ヌッヌッ、ヌプヌプ、ズプッズプッズプッ、パンパンパンパンッ

「あぁッひっぃいっ…もっやらぁっ…ちくびっ、…アッはぁっアッあっ!」

勃起した乳首をじれったいほど優しく舐め回し、吸いながら、腰はガツガツ突き上げてくる。
ろくにさわっていないペニスは失禁のように汁を垂らして天を向き、今にも絶頂に達しそうで、篤己はもうわけがわからなくなってすがるように海斗の腕を掴んだ。

「あっひぁッかいとぉ…っもっいっちゃう、あっあぁんっ、せーえき、でちゃうっ…」
「っ、イくの…? 篤己は、お尻に俺のチ○ポハメられて、乳首吸われていっちゃうんだ…?」
「あッひあッらって、かいとがぁっ…ああぁあッ、ふあっぁっ! あんッ! あんっ!」

乳首を舐めたまま卑猥な言葉で責めてきて、もう我慢できないほど射精感が高まる。
腰が勝手に揺れて、膨れ上がった海斗の肉棒を前立腺に擦り付けるように動いてしまう。

「ッ、淫乱すぎ…俺もヤバい。なあ、俺にお尻犯されてイくって言いながらイってよ、…」
「そんっ…アッ、あーッ…」

拒否しようと思えばできたはずだ。だけど異様に熱の篭った目で上目遣いに射すくめられ、焦らすように腰を回され、最後に残ったわずかな自制心はどろどろに溶けていった。
卑猥な言葉を口に出せばもっと気持ちよくなれる。頭にあるのはそんないやらしい考えだけだ。

「っ…いっちゃっ…あっあッ、いっちゃうっ……かいとのっデカいチ○ポで、んっはぁっ、お尻、ごりごり犯されてっ…あッあんっ…いっちゃ、せいえき、でるっ…あっあんっ! あぁああッ!」
「っくっ、俺も、イく……中に、種付けしてやるよ…っ」
「あああァンッ! らめっあっあぁあッ、やああっいくっいくっ…あああぁーっ…!」

ズプッ!ヌップヌップ、ズンッズンッズンッズパンパンパンパンッ!
ビュッ、ビュクッ、ドピュッ、ビュルルッ!

「ああぁーっ…はぁっ、ふぅっ、アッ、はぁっ、はぁっ…」

海斗の腹筋に擦れた篤己のペニスから大量の精液が撒き散らされ、ほぼ同時にアナルの中のペニスもぐっと大きくなって、最奥に熱いものを大量に注がれた。
絶頂感は目の前がチカチカするほど強烈で、射精が終わっても繋がった部分が痺れて波が引いてくれない。
余韻と言うには激しすぎる、ずっと射精の瞬間が続いているような気持ちよさに、篤己は海斗にすがり付いて身体を痙攣させた。

「はぁっ、はぁっ…ぁう…ん、ん……」

喘ぎ混じりの息を吐く篤己の背中を、海斗が撫でる。
それが気持ちよくて、少しずつ身体が落ち着いてくると、今度は頭が落ち着かなくなってくる。
海斗と、この憎らしいほど格好いい、好きだった相手によく似ている行きずりの男と、セックスを最後までしてしまったのだ。
後悔はない。海斗との時間は衝撃的すぎて、失恋の悲しみを一時忘れることができたし、この先も隼人のことを思い出すたび、この一連の出来事がその思考を濁らせてくれることだろう。
しかし。それで楽になるかは微妙なところだ。考えれば考えるほどこんなことになったのが信じられなくて、
恥ずかしい。
まずは突っ込まれたままのものを抜こうと身じろぐと、中が擦れてびくりと震えてしまった。

「ぁっ…ん、海斗…ひぁっ」

抜きたいと声をかけた途端、篤己はベッドに押し倒された。
そこでようやく気づく。海斗のペニスが、未だに硬さを失っていないということに。

「っ、あの、…んっ、ぁっあっ」
「……ありえない。中学生のときだって、もっと保ったのに……」

海斗が低い声で、唸るように呟いた。
一瞬何のことか分からなかったが、どうやら持続時間のことらしい。
篤己としてはかなり喘がされた気がするし、少なくとも10分は経っていたから気にするほどでもないと思うのだが。

「……ああ、あの、尻……だったからじゃ? ほら、入り口がよく締まるから……」

聞きかじりの知識でそう言うと、海斗がぎろりと睨みつけてきた。
フォローしようとしたのに、何が気に障ったのか分からない。
困っていると、不意に腰を揺すられて、性懲りもなく甘えたような声が出てしまった。

「あんっ…やっ、ちょっ…」
「俺、いつもはこんなんじゃないから……。次は今の三倍は保つから」
「やっ、もう無理っ…あっ、あッ、ああんっ」

制止の声など最初から耳に入っていないというように、海斗は腰を突き上げてくる。
一度達した内部はとろとろに蕩けて敏感さを増しており、なかを擦られるともう喘ぐことしか出来なくなってしまう。

(くそ……金払うのは俺だぞ。俺がセックスにハマったら、こいつどう責任とってくれるんだ。……どうせ金貰ったら、すぐポイするくせに……)

ちょっとネガティブなことが頭を過ぎって顔を歪めていると、海斗が噛み付くように唇を塞いできて、考えることすらろくにできなくなる。

「んんっ…ふぅっ、んっ、んっ、んぅ……はぁんっ」

舌を吸いながら腰を回して奥をぐりぐりされ、イッたときみたいに感じる。
灼熱のような快感に翻弄されながら、何だかすでに取り返しがつかないことになった気がすると、篤己は予感していた。

end


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