失恋と10万円 2話 02


あり

「お前、何で連絡無視した? 何だあの金は」
「れ、連絡? ……あっ、電源切ってた。っていうかあれ、何で連絡先」
「お前がホテルに残していったんだろうが!」

確かちゃんとゴミ箱に捨てたはずなんだけど、まさか漁ったのだろうか。というか大声でホテルなんて言わないで欲しい。視線が――主に相馬のそれが痛い。

「君、うちの客に絡まないでくれる?」
「んだと? 誰お前、何そいつにベタベタしてるの」
「見たところホストか何か? この店には君のお客になるような人はいないよ」
「お前もホモか。おい、こいつが浮気されたから別れてるって言ってた彼氏?」
「そういう君は篤己に買われた男か。一晩限りで後腐れなしが暗黙のルールだと思うんだけど、何しに来たの?」

何故か篤己を放って不穏な空気になっている。そして会話が成立していない。
とりあえず、海斗は色々誤解している。相馬に初めて名前を呼ばれた。覚えられていないと思っていた。
何だろうこの状況は。
とにかく他の客から注目されているのも非常によくない。篤己は財布からお札を取り出して相馬に押し付けた。

「あ、あの、俺こいつと少し話してくる」
「やめておきなよ。やばそうなら人使って閉め出すよ」
「大丈夫だよ。悪い奴じゃないし……多分。ちゃんと話した方がよさそうだし」

何だかんだで相馬は心配してくれている。迷惑はかけられない。
少しの間視線を交わしていると、腕をぐっと掴まれた。

「さっさと来い」
「ま、待て、引っ張るなよ。相馬さん、また来るから!」

海斗によって、そのまま強制的に連れ出されてしまった。次にここに来たときもまた馬鹿連呼されるのは確実だろう。

「あのいけ好かない優男がお前の彼氏か」
「ええっ、まさか。あの人はバーテンだからたまに相談に乗ってもらってるだけ」
「ってことは、また別の男ってことか」

海斗が舌打ちする。苛ついた様子で篤己の腕を掴んで足早に歩く。一体どこに向かっているのだろう。
確か、なんだあの金、などと言っていたが、もしかして足りなかったとか……いやしっかり数えたはずだ。

「っていうか海斗、一体何の用が? とりあえず腕痛いから離して」
「何の用だと? あんな書置きだけで勝手に帰っておいてよく言う。連絡先があったから電話してみれば繋がらないし、彼氏のところに行ってたのか」

篤己の疑問や訴えは綺麗に無視して足を止めないまま逆に詰問される。連絡先も彼氏に浮気された話も没にして丸めて捨てたはずなのに、やはり読んだのか。何のために。

「いやだって、よく寝てたから起こすの悪いと思って……あれ?」

何だか見覚えのある建物に連れられて入る。
そして。

「って、何でホテル……?」

朝方出たばかりのホテルに再び同じ相手と入るという謎の状況が出来上がった。
部屋に入った途端、海斗はテーブルの上にお札――恐らくあの10万円だ――を叩きつけた。

「こんな金……手切れ金のつもりか? お前、俺に運命を感じたとかふざけたこと言ってたくせに、結局彼氏に浮気された腹いせにヤっただけだったのか。淫乱が」
「ひいっすいません!」

威圧的ににじり寄られ、篤己はびびって思わず謝る。
海斗はとても怒っている。どうやら彼のプライドを傷つけてしまったらしい。

「否定しないのか…。馬鹿にしてんの?」
「いやその、あまりに海斗がイケメンで、それで彼氏にちょっと似てたから、っ!?」

言い訳の途中で、噛み付くように唇を塞がれてしまった。

「んんっ、ふっぅ、ん、ん」

ちゅっちゅぅっ、くちゅ…、くちゅ…、ぬちゅ、れろ、れろ…

強引に吸われ、すぐに舌がねじ込まれる。とても熱い舌に口内を犯され、舌同士を擦りあわされ、こんな状況なのに腰がずくんと疼いてしまう。

「はぁっ、くそ、俺はただの彼氏の代わりだったってか? あんなにあへってたくせに…」
「やっ、はぁっ、ちがっ…。確かに、似てたのがきっかけだったけど、代わりなんて思わなかった。あいつとはもう駄目だと思って、今日別れ話…っあっ、あぁッ」

篤己の股に海斗が太ももを擦り付けてゴリゴリしてくる。人が話している途中だというのに、感じて上ずった声が出てしまう。

「別れたからいいって問題じゃねえからな。んっ……」
「ふっ、んん、ん、ん……」

まだ正式には別れてない、と訂正する間もなく、再びねっとりとしたキスをされる。
舌を絡められ、力が抜けて海斗にもたれてしまうと、海斗の脚に股間が強く擦れてしまう。更にキスしたまま、乳首を掠められた。

ちゅっ…ちゅ、ちゅく、くちゅ、くちゅ…、ぬろ、ぬろ、ぬちゅぬちゅっ…
こすっこすっ、くり、くり、くりゅ、くりゅ、ぐりっぐりっ

「んんーっ…ん、ぅんっんっんっ」

シャツの上から指の腹で擦られ、敏感になった乳首はすぐに勃ちあがってしまう。するとそれを摘んで押しつぶすようにされたり、指先で弾かれたり――股間をゴリゴリされ、舌を絡ませながらそんなことをされると、腰が溶けるように感じてペニスが濡れてきた。

「んふぅっ、んっ、ふ、んぅ、ん、ん」

海斗は歯を立てながら舌を吸い、片手で尻をぎゅむぎゅむと揉む。
抵抗しなければいけないのに、する気になれない。いつしか太ももじゃない熱くて硬いものが篤己の体に擦り付けられ、体の奥がじんっと疼く。

「ふああっ…はぁっはぁっ、ぁ、ん、」
「こんなにすぐ、乳首もチ○ポも勃起させやがって、淫乱が。男なら誰でもいいなんて言わないだろうな?」
「ちがっ…待って、あぁっぁっんんっ」

制止の声なんて完全に無視され、服を剥ぎ取られベッドに押し倒された。言い訳しようも無くビンビンに充血した乳首と、勃起して先端が濡れてるペニスが海斗の目に晒されて、顔がかあっと熱くなる。

「……淫乱」

海斗は篤己の体をじっと凝視したかと思うと、体を屈めて乳首を舐めてきた。

「あぁあっ、らめっ、ちくびっんっああぁっ」
「はぁっマジで乳首敏感すぎ…どれだけ開発されたんだ」
「ぁんっらめっあっ、ぁんっ、あっ、あっ、あっ」

くちゅ、くちゅ、れろ、れろ、ちゅぶ、ちゅぶ、ちゅぶ、ちゅぶ
くちゅくちゅっぬちゅっぬちゅっぬちゅっ

乳輪ごと口に含んで舌先で転がしながら、ペニスの先端にまで触られ弄られる。濡れたいやらしい音が響いて、腰がびくびく跳ねてしまう。
というか何を流されているだろう。こんなのはいけないのに。

「あひっああッ…らめっっ、海斗、俺っはぁっ、まだ、別れてなくて、こんなことしちゃだめだからぁっ…」
「……何だと?」

どこか熱っぽかった海斗の声が、一気に底冷えしたものになる。

「何言ってんだ。別れ話したんだろ」
「したけど、……別れないって言われちゃって」
「――んだよそれ。浮気するような奴だったんだろ。別れないって言われてそれを飲んだのか。それだけそいつが好きだとでも言うつもりか」
「い、いや、ちゃんと話する前にどっか行かれちゃって」

海斗は恐ろしい顔で篤己を睨みつけ、――言い放った。

「携帯貸せ」
「え」
「いいから貸せ。ああ、あった」

海斗は脱ぎ捨てられた服のポケットから勝手に携帯を取り出すと、勝手に電源を入れる。

「彼氏に電話しろ」
「い、今!?」
「今に決まってるだろ。お前俺とこんなことして、まだ彼氏と付き合えるなんて思ってないだろうな」
「それはそうだけど、でも」
「スピーカーにしろよ」

――海斗に勝てるはずがなかった。どうか出ないでほしいと思いつつ、電話をかける。

『――もしもし』

そしてこんなときに限って出る隼人。まだ全く心の準備ができていないというのに。何故こんなことに……。

「も、もしもし、俺だけど、あの」
『隼人ぉ、こんなときに電話しないでよっ…』
『悪いけどちょっと待ってて』

電話の向こうから、聞きなれない高い声が聞こえてきた。
「こんなとき」がどんなときなのか、その声の甘さで嫌でも分かってしまう。
体が固まる。慣れたこととは言え、2日連続で、しかも違う相手といかがわしいことをしているなんて……。
しかしそれに関しては、篤己も全く人のことが言えないのが恐ろしいところだ。

『今忙しいから用なら早く言って』
「その……あぁッ」

何と言っていいのか戸惑っているとき、いきなり、海斗が乳首を指で摘んできた。

『――何? その声』
「はぁっ、なんでも、ぁっんっ」

涙目になって、海斗に向かって首を振る。だけど海斗はそ知らぬ顔で無視して、今度はペニスの奥の秘所に手を伸ばしながら囁く。

「篤己、きっぱり別れるって言えよ…。俺にされてこんなに感じてるんだから、もう女とヤってる彼氏なんていらないって」
「ぁうっ、ん、ちょっと、まっ、はぁっ…」
『おい、何してんだ? 椎名』

気だるげだった隼人の声が、にわかに険を帯びる。
喋れないから今すぐやめてほしいのに、海斗はよりによって指をアナルに押し挿れてきた。

ずっ、ずぬ、ずぬ、ずっぶぅっ…

「あぁんっ! ぁあっ、らめっ、やっああっ」
『っ、椎名、一体何を…』
「ほら、早く言え。俺にハメられてこんなに感じて、俺専用のま○こになるから、浮気野郎とは別れるって、おら、おらっ」
「あぁっん、らめっ…ひああぁっ」

ずぼっぢゅぶっぢゅぶっ、ぬぶっぬぶっぬぶっぬぶっ

言葉責めと同時に抉るように乱暴にピストンされ、腰がびくびく跳ねてベッドが音を立てる。電話の向こうの隼人の声が段々遠くなっていく。

「あぁッ隼人ぉっ…おれっおま○こにされちゃったのぉっ…ぁあんっもう、つきあえないっ…ぁあッあっあっああっ」
『っ、椎名…っ』
「あぁっやぁっ、ハメられてるのっ、指でずぼずぼされて、変になっちゃうっあっあッあんっ」

そこで海斗がいきなり携帯を奪うと、通話を切って放り投げた。
そして、ギンギンに勃起して天を仰ぐペニスを取り出すと、性急に篤己の中に挿入してきた。

ぬっずっずぶっずっずぶううっ…

「あ゛あぅっ…ひっああぁッ」
「くっそ…俺専用ま○このくせに、エロ声聞かせて他の男の名前まで呼びやがって…っ」
「はぁっあッあ゛ッ」

海斗は興奮しきった様子で、異物にぎゅうぎゅうと抵抗する中の狭さにおかまいなしで腰を使い始める。
いやらしい声を隼人に聞かせてしまったのは完全に海斗のせいなのに、何故責められなければならないのか。とはいえこれで完全に隼人との仲は終わったのだ――などと感傷に浸っていられたのは一瞬のことで、抉るようなピストンに一瞬で全身が快感に支配される。

「あ゛っあひっあぁっ、あんっあんっ」
「きっつ…っ、ギチギチに締め付けて…、どれだけチ○ポ咥え込みたいんだよ…っ」

ごりっごりっごりっごりゅっごりゅっ

海斗のペニスは大きくて硬くて、少し揺さぶられただけで中のイイところを強く擦られて全身がとろけそうなほど感じてしまう。

「あぁっひっあ゛っあ゛っ」
「はぁっ、今までどれだけ咥えこんできたか知らないが、これからは他の奴とヤったら許さないからなっ…」
「あぁっちがっ…俺、昨日が初めてだからっあっあんッ…」
「何……?」

海斗が目を見開いて繋がったまま動きを止める。挿れられてるだけでも粘膜全体を圧迫されていて、気持ちいいのが止まってくれない。

「何が初めてだ、ド淫乱のくせに、そんな嘘……」
「はぁ…う、嘘じゃない…隼人はノンケだし、こんなことっ…あぁっ」
「何他の男の名前出してんの…っ」

引き抜いたかと思うと奥までずぶぅっとハメられる。

ずりゅ……ずんっ、ずりゅ……ずんっ

「あッ…あんっ…あぁんっ…」
「こんなっ、淫乱で男好きする体しといて、よくも処女だなんて…」
「あぁっほんとっ、いままで、こんなこと…っはぁっ海斗がはじめて、あっああんっ」

だから少しは優しくしてくれと言いたかったのに、海斗は中の勃起ペニスを更に大きくして腰を振りたくってきた。

ぬぶっぬぶっぬぶっぢゅぼっぢゅぼっ、ズッパンッズッパンッズッパンッ

「はぁっ、ホント? 俺だけ? このきつくてぐねぐねして淫乱でどうしようもない穴、ずっと俺専用ま○こなのかっ…?」
「あ゛あっ海斗だけっ、だから、もっとゆっくり…っあッんんっんーっ」

呼吸を奪うようなキスをされ、勃起ペニスを突き上げながら激しく舌をぬるぬる絡ませられる。
上も下も、粘膜がめちゃくちゃに擦れて気持ちよすぎる。

ちゅっぬちゅっぬっぬるっぬちゅっぬっぬちゅっ
ぢゅぶっぢゅぶっばちゅっばちゅっばちゅっ

正常位でガンガン突かれ、篤己は無意識に海斗の背に強く抱きつき、脚もペニスを抜いて欲しくないと言うかのように腰に絡みつけていた。

「っ、はぁっ、くそ、さっきの男とヤってないって知ってたら、声なんて聞かせなかったのに……なんでもっと早く言わないんだよ、馬鹿っ」
「だって…っあひっあっはぁっアッあっ」
「もうあんなことさせないから…、はぁっ…篤己、篤己っ」
「ああぁんッ…あんッあンッあんッ」

甘く掠れた声で名前を呼ばれ、腰がじんじん疼く。経験がなかったと告げたのに優しくなるどころか激しさが増しているのは気のせいではないと思う。
硬いもので何度も奥まで抉られ、強い絶頂感に支配される。

「あひっあ゛っもっいくっいっちゃうっあっあッあッ」
「いいよ、イイところたくさん擦ってやるから、いってっ」

パンパンパンパンッ ごりっごりゅっごりゅっ! びくっびくびくっびゅっびゅっびゅるっびゅくんっ

重々しく全身がとろける様な快感に支配され、篤己は激しく痙攣しながらイった。中の硬いものをぎゅっぎゅっと締め付けて、カリが出っ張った形がありありと分かるくらい海斗のペニスを感じる。

「はぁっすごい、俺もいく…っ篤己の中に、俺専用ま○こに中出し…くっ」
「あ゛あ゛ひっあ゛っまって、らめっあ゛っあ゛ッ」

ずりゅっずりゅっぢゅぶっぢゅぶっズバンズバンズバンズバンッ!
びゅっびゅくっびゅるっびゅーーーーっ!

イって敏感になりすぎた中を、限界まで引き抜いて奥までハメる激しいピストンで蹂躙される。一番奥まで腰を押し挿れられた瞬間、どくっどくっと中に熱いものが勢いよく注がれた。
奥にハメて中だししながら、海斗は強く篤己を抱きしめる。

「はぁっ…お前は、俺だけのものだ。いいよな、篤己、ね…」
「あッ…、あぁ…ぅ、ん…」

耳を食むようにしながら甘く囁かれ、ぞくぞくする。
こんなセリフ、自分にとっては全く縁遠いものだと思っていた。それを海斗に言われる――。

(あれ、何でこうなったんだっけ……。お金で買ったのに、お金は返してくれて、昨日の今日で会いにきて、またセックスして……)

頭がぐるぐるする。

「もしかしてだけど……海斗、もしかして、俺のこと、好きなの?」
「は……?」

海斗が虚を突かれたような顔をする。
――やはりそんな訳ないか。まさかとは思ってたけど、でもならどうして……。

「ご、ごめん、ものすごい自意識過剰だった。でもだったら……あ! やっぱりアナルセックスの締め付けにハマっあっああッ」

いきなり乳首をぐりっと擦られ、いつの間にか復活していたペニスを再び突き入れられる。

ぐりっくにっくにっくにっ
ずっ…、ずぶ…、ずにゅ、ずにゅ…

「はぁああ…ぁん、も、らめ…」
「ったく、馬鹿なこと言えないくらい、淫乱ま○こにハメ続けてやるよ…」

ギラギラした目で睨まれながら、そんなことを言われる。
どうやら海斗の中でも篤己=馬鹿が定着してしまったらしい。

「あッあッやぁっそこっあぁんっ」
「ここがいいのか? 擦るたびに絡み付いてくる……っ」

海斗は一度イって多少余裕ができたのか、今度は激しく突くだけではなくこちらの反応を窺いながら責めてくるものだからたまらない。

ずぶっ…ずぶっ…ぬぶ、ぬぶ、ぐりっ、ぐり、ぐりゅうっ…

「あぁああん…らめ、あっあっいいっ…」
「エロい顔して……そんなにいいのかよ」
「はぁん…んっ、ぁあ、はっあんっ…」

無意識のうちに、篤己の腰は硬い怒張の先端をいいところに擦り付けるように揺れていた。擦られるたびにぎゅんぎゅんとアナルが収縮して、太い怒張の形がくっきりと分かるほど締め付けてしまって、腰が止まらない。

「っ、くそっ……」
「あ゛っひっあっあんあんあんッ」

中で肉棒がこれ以上ないほど大きくなった。両手の指をぎゅっと絡ませられたかと思うと、一番感じる場所をガンガン突かれる。絶え間なく襲ってくる絶頂感のような気持ちよさに涙が滲んだ。

「あ゛あ゛あんっひっい゛ってるっ、いってうからっあ゛あっもっらめえっあっアンアンあ゛あーっ!」
「っすげ…、またイくから、種付けしまくってやるからなっ……くっ、」
「あッひッあ゛っひあぁっああああんっ」

ズパンズパンズパンズパンッ! びゅっびゅくっびゅるるっびゅーーーーっ

「あぁあん……も、だめ……」
「はぁ、はぁ、篤己……っ」

お互いに息が乱れたまま、濡れた舌が淫らに擦れあう激しいキスをされる。未だにペニスはずっぽり挿入されていて、舌をねちっこく絡めるうちにすぐ硬さが戻ってくるのが恐ろしい。
正気に戻ったら待ちかまえている様々な問題を、今は全く忘れてしまうほどの快感の中に篤己は沈んでいった。

end

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