誠人、サクラになる。 03
あり
二度射精したというのに、疼きは一向に治まってくれない。
「奏、さん、あつい…」
「……っ」
すがるように手を伸ばして奏に触れると、びくりとその身体が震えるのが伝わってきた。
「…触るな」
「ぁっ」
どこか苦しげにそう言うと、奏は一転して乱暴に誠人の手をネクタイで縛った。
頭上で一まとめに拘束され、フェロモンに犯された身体は被虐の悦びにゾクゾクと疼きだす。
「何をっ、んぅっ…」
「黙って、大人しくしてろ…」
くちゅっ、れろっれろっ、くちゅうっ…
酷く熱い吐息を感じたかと思うと、奏は言葉を奪うように誠人の唇を塞ぎ、荒々しく口内を犯し始めた。
舌で濡れた唇をこじ開けられ、軽く舌を噛まれたり、上あごをねっとりとなぶられる。そうされるたびに蕩けるような快感に身体がひくつき、腰が揺れてしまう。
――気持ちいい。ほしい。どうしようもなく。
「ぁっ…はぁん、んっ、んっ…奏さぁん…」
快感に焦点の定まらない潤んだ瞳で奏を見つめ、吐息混じりの甘ったるい声で名を呼ぶ。
そのしぐさが男の目にどれほど淫らに映るのか、今の誠人には自覚できるはずもない。
奏も眉間に皺を寄せながらも目元を赤く染め、ごくりと息を飲み込んだ。
「……仁藤君、君は……っ」
「あぁんっ!」
奏の親指が、勃起してシャツを押し上げていた乳首をぐりっと刺激した。その一瞬でゾクゾクッと甘く切ない快感に犯される。
「こんなに…衣服の上からでも分かるほど勃たせて。男に見せつけて触ってもらうために、こんな薄いシャツを着ているのか?」
「んぁあっ…んっ、らめぇっ、あっあぁんっ」
見下しながらも興奮を隠し切れない様子で、奏は両方の乳首を同時にくりくりと転がす。布に擦れる感触と執拗な言葉での責めはおかしくなりそうなほど強い疼きとなって、放置されたままのペニスからドプンッと汁が漏れた。
そしてそれだけではなく。
「ん? 何か、湿っているな…」
「ぁんっ」
シャツが胸の上まで引き上げられる。自分でさえ見慣れないほど赤く腫れて勃起した乳首が、奏の眼前に晒された。
「…乳首まで淫乱のそれそのものだな。男のくせに、こんな…」
「ああぁーっ! あっあぁっ…ぁんっ」
ぐにっ、ぐにゅっぐにゅっ、くりくりっ
奏は親指と人差し指で敏感な側面を掴み、軽くひねるようにして性器になった乳首全体をなぶってくる。
激しい快感に、絶頂のときのように頭の中が白くなっていき。
「あっひぃいんっ! もうっ、らめえぇっ! れちゃうっ、おっぱいからぁっミルクがぁっやぁああああぁーっ!」
「…っ!?」
ぴゅっ、ぴゅうっ、びゅるうっ!
「はぁんっ…あっ、ぁん…」
どうやらまだあの薬の効果は切れていなかったらしい。前回よりは量や勢いは減っていたが、それでも奏を驚愕させるには十分に異様に、そしていやらしく誠人の乳首はミルクを噴き出した。
「はぁっ…なんだこれは? 男がこんな……」
「んっ…ちが、これは、さはらさんがぁ、ひぁあああんっ!」
言い訳する間もなく、濡れた乳首にむしゃぶりつかれる。
「…はっ、男に、こんな身体にされたのか? そうまでして男をあさりたいのかっ…」
れろっ…れろっ…ちゅっ、ぢゅううっ、れろっぢゅぅうううっ
「あぁああんっ! あひっ、あはぁあんっ、ちゅうちゅうっ、いいよぉっ、ぁんっちくびぃっ」
ちろちろと乳輪まで舐められ吸われ、またミルクがピュッピュと滲み出てくる。
イきつづけているようなあまりに強い快感に呼吸もままならず、両方の乳首を吸い尽くされた頃には誠人は息も絶え絶えになっていた。
「はぁっ…はぁっ……もっ、やらぁっ…あちゅぃのぉ…ぁん…」
全身の小刻みな痙攣が止まらない。身を焦がす熱さも一向に治まらない。
そんな誠人の様子を、奏は普段からは想像もつかない酷くギラギラした表情で見下ろしていた。
「……はぁっ、くっ……俺は、こんなっ……」
フェロモンの力に犯されても尚、人一倍自制心の強い奏は自分が信じられない気持ちが残っていた。
こんなことはおかしい。それは分かっている。
だけど身体が、身体だけでなく確かに自分自身の意識が、誠人にどうしようもなく欲情し、もっと滅茶苦茶にしてやりたいと思っているのだ。
誠人がゆっくりと目を開け、唇を舐めながら奏を探して視線をさまよわす。
「奏、さん…」
甘ったるい声で呼ばれただけで奏のペニスはドクンと疼き、先走りの汁を滲ませた。
欲しい。欲しくて堪らない。縛られた両手がもどかしくて堪らない。
奏の方を見ると、ペニスがスラックスを押し上げているのが至近距離で目に入った。
一目で大きいと分かるそれに、尻穴がキュンキュンッと激しく収縮する。
あれで中をごりごり擦られたら、奥まで激しくピストンされたら。
想像するだけで、前立腺のあたりがどうしようもなく疼いた。
「……ぁ、奏さ…ほしぃ、」
「……何が?」
冷たくも聞こえる返事をしつつ、奏は視線で誠人を犯す。肌の上をいやらしく撫でるような、情欲の篭った視線で。
「っ、奏さんのっおち○ぽ、おれのケツま○こにっ、挿れてっ、挿れていっぱい、ずこずこしてぇっ」
「っくそっ」
パシィイインッ
「あぁんっ」
尻を強く張られ、穴がヒクヒクっと痙攣する。
痛い。また叩かれ続けるのだろうか。やはり入れてはくれないのだろうか。
抗いようのない疼きにうずくまって小さく喘いでいたとき、熱く湿ったものが尻穴にあてがわれた。
ぬっ、ぬるっ、ヌッヌッ
「ぁっ…、あんっ、はぁん…」
誠人自身の汁でぐしょぐしょに濡れた穴に二度三度と擦り付けられ、振り向かずともそれが何か分かった。
「…欲しいのか?」
「はぁんっ、ほしぃっ、おち○ぽ、入れてっ…」
入りそうで入らず表面の襞をグニグニ撫でるばかりのペニスに、誠人は腰を揺らめかせながらねだる。
「欲しいなら、もう一度しっかりねだってみろ…」
奏は後ろから覆いかぶさり耳を甘噛みしながら、興奮した声でそう言った。
尻穴の収縮が一層激しくなり、奏のペニスの亀頭にパクパクと吸い付く。
「っ、奏さんのおっきいおち○ぽ、おれのいやらしいけつま○こにっ、はぁっ、挿れてくださぃっ。挿れて、いっぱい、なかこすって、ぐりぐりってしてぇっぁっあああああぁっ」
「……っ」
ぬぷッぬぷっ、ヌ゛ヌ゛ッ、ズニュウッ
いやらしい言葉を追うように、奏の長大なペニスはゆっくりと肉壁を掻き分けて中へ挿っていった。
フェロモンの効果で慣らしていないにも関わらず尻穴は熱く蕩けてペニスを受け入れ、受け入れた後は逃がさないとばかりにぎゅうぎゅうと絡みつく。
ペニスのかたちがくっきりと分かるほどの中の締め付けのせいで、誠人は肉壁全体を一度に擦られ、信じられないほどの快感に絶叫するように喘ぐ。
「ああああぁーっ! あっ、あっ、あんっ、あんっぁあんっ!!」
「は、ぁっ……くっ…」
奏は根元まで挿入して熱い息を吐くと、ゆっくりと動き出す。
「ひゃああっ! あぁっ、あっあっ…はぁんっ、ぁあんっ」
ヌッヌッ、ズプッ、ズプッ
激しくはない、じれったいような動きだというのに、巨きなペニスの張り出した亀頭は少し動いただけで前立腺をごりごりと擦り、目の前がチカチカするほど感じる。
「っ、そんなに、締めるな…」
パシイイイィンッ!
「あ゛ひぃぃんっ!! やっああああっ」
咎めるように尻を叩かれ、余計にキュウウッとペニスを締め付けてしまう。
その状態で今までより激しく中をグリグリされ、自然と腰が淫らに揺れる。
「ぁっ、これが、そんなにいいのかっ…」
「あっぁっあっ、いいっ、きもちいいよぉっ…奏、さぁんっ、あああぁんっ」
パンッ、パシィッ、パアアアァンッ!
立て続けにスパンキングされながら、どんどんピストンの速さが増していく。
強い興奮と快感によって、二人に限界が訪れるのはあっという間のことだった。
「あっあんっあんっ、もうっ、いっちゃうっ、ぐりぐりされてぇっ、せいえきれちゃうよぉっ!!」
「はぁ……、このっ、淫乱っ…」
「あぁーっ、いくっ、おち○ぽいくっ! ひぃあああんっ、れてぅよぉっ! あっはぁあんっ!」
「くっ……!」
ビュッ、びゅるびゅるっ! ドプッドプウッ…
誠人のペニスが精液を吐き出すのとほぼ同時に、尻穴にも熱い液体が勢いよく吐き出された。
「はぁ……あん、ん……」
ヌプゥッ…と音をたててペニスが引き抜かれ、誠人はその場に倒れる。
例によって精液を受け入れたことで、少し気分が落ち着いてくる。今はこのまま何も考えず、眠ってしまいたい。
が、そんな願いは叶う事なく、誠人はすぐに身体をひっくり返された。
仰向けにされた上には、欲情した獣のような表情の奏がいた。
「ちょっまっ…あっ、やぁああんっ!」
ヌヌッ、ヌプッ、ドプウウッ!
「は、あっ……待つかよ…いいんだろ、これがっ」
「あぁっ、あんっ…らめぇっ、そこやぁっ…あっ、ああぁっ!」
どうやら多少理性が戻ってきた誠人とは裏腹に、奏のほうは完全にきれてしまったところらしい。
「はっ、また、ミルク垂らして…んっ」
「ひぃあぁっ! やっ、ちくびぃっ、ぁんっあぁんっ」
深く挿入したまま腰をぐるりと回され、その体勢で乳首を吸われると、誠人は息も絶え絶えに喘ぐことしかできなくなる。
奏はもうミルクなど出ないというほど乳首を味わうと、今度は口付けて口内を舐りながら、ガクガクと激しくピストンを始める。
「んぁああっ、んっ、んっふぅ、んんっ……!」
気持ちよすぎて呼吸もままならない。このままじゃおかしくなる。
そんな恐怖に手足に力を入れると、いつの間にか手首を拘束していたネクタイが外れていた。
すがるように奏の腕を掴むと、反対に手を取られ、両手とも指を絡ませながら床に押さえつけられる。
「はぁっ、は…、出すぞ、君の中に…」
「やっ、ああぁんっ、らめっ、あんっぁあんっ」
興奮に掠れた声で囁かれ、ゾクゾクッと身体が熱くなり、尻穴の中のものを更に締め付けてしまう。
なんだか恋人同士みたいな体勢でこっ恥ずかしい、なんて考えていられたのも一瞬のことで。
入り口から前立腺、奥まで叩きつけるような激しい律動に、誠人は甲高い声で喘ぎながら奏の指を握り締め返した。
パンッパンッ! グリッグリィッ! ゴリュッ、ヌッヌッ、ズプッズプッズプウッ!!
「あああぁっ、ひぃぁっ、いくっ、またいっちゃうっはぁんっ、おち○ぽれちゃうよぉぉっ!!」
「っ、いくっ、い、くっ…!」
ドピュッ、ドピュウッ! ビュッビュルルルッ!
全身がビクビクと痙攣し、再び熱いものを体内に感じる。
怖いほど気持ちよかった。汗ばんだ互いの身体も、握られた奏の手も何もかも心地いい。
……しかし、いつまでもこうしてはいられない。しかし……。
「仁藤君…」
「ん……」
掠れた声と共に唇をふさがれる。恐ろしいことに、体内のペニスは未だ衰えていない。
後悔先に立たず。
この言葉の意味が誠人に重くのしかかってくるのは、もう少し先の話だった。
end
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