誠人、淫乱体質に。 02
あり
仁藤誠人(にとう まこと)の隣人は、とんでもない変人だ。
「変人って、そんなに酷いの?」
とあるカフェの一角。誠人と向かい合った野崎悠(のざき ゆう)が苦笑しながら訊く。
「そりゃあもう……実験だかなんだか知らないけど変な爆発音はするし、変な臭いはするし! 絶対危ない実験してるんだよ。宇宙人でも呼び寄せようとしてるんだよ」
誠人はうんざりしたように語りかけた。
二人は高校時代の友人であり、誠人にとって悠は異色の存在だった。
成績優秀でスポーツ万能、社交的で男女問わず好かれていた悠と、昔からネガティブで友達の少ない誠人。
こうして卒業してからも会う機会があるほどの仲になったのは、誠人の中ではちょっとした謎だ。
「まあ……あんまり酷いようなら警察に通報したら?」
「う、うーん、そこまでは……」
言いかけたとき、不意に悠の携帯が鳴った。
「あ、いいよ、出なよ」
「うん、ちょっとごめん。――――もしもし、美咲?」
楽しげに話し出す悠に、誠人は内心複雑な気分になる。
悠は名門大学の法学生だ。一度誠人がバイトしていた居酒屋にコンパで来たことがあるが、大層な人気ぶりだった。
対して誠人は受験に失敗したフリーター。何もかもが違いすぎる。
携帯から、小さく『何してるのー』と女の子の甘えたような声が聞こえた。
「――ごめん悠、俺そろそろバイトだ。今日はありがとう」
「え、おい、誠人?」
「またな」
軽く手を上げて、誠人はそそくさとカフェを出た。
悠はきっとこの後、あの女の子と会って、それから……。
「…………くそ、うらやましい」
悠のことは好きだが、コンプレックスが刺激されるのはいかんともしがたかった。
「――はー、疲れたぁ」
ドンドンッ!
「……」
バイトから帰宅し、これから寝ようと思っていた矢先。
深夜ということなどお構いなしに、薄っぺらいアパートのドアが叩かれた。
「……お、俺は寝る。俺は寝るぞ」
ドンドン、ドンドンッ!
しかし叩く音はどんどん大きくなるばかり。
ただでさえ大家に気に入られていないのに、近隣から苦情がきたら追い出されかねない。
「くそっなんなんだよ!」
うんざりしながらガチャリとドアを開けると、予想通りの男がそこに立っていた。
「やあ、仁藤君」
ぼさぼさの長い髪に、表情を隠す変な眼鏡。ひょろりと高い背を包む白衣は、白衣の意味皆無といっていいほど薄汚れている。
「今日もヨロシクね」
不気味に微笑しながら手を差し出す男に、誠人は頬を引きつらせた。
男の名前は佐原涼(さはら りょう)。名前だけは爽やかだが、本人は爽やかさとは無縁のマッドサイエンティストである。
誠人の『変人な隣人』であり、悠には言っていないが、誠人はしばしば彼の怪しい実験を手伝わされていた。
「ったく、なんで俺が……」
促され、しぶしぶ佐原に着いていく。
ボロアパートの隣の、やけにでかい洋館風の一軒家。
誠人が一生働いても手が届かないであろう立派なそれが、忌々しいことに佐原の住処だった。
「――さて、今日はそれをかき混ぜててもらおうかな」
広さだけは立派な空気のよどんだ研究室で、いかにも怪しい液体の入った大鍋を指して佐原が言い放つ。
「ええー……どのくらい?」
「とりあえず、明日の昼くらいまでかな? ゆっくり、満遍なく頼むよ。時給はそれなりに出すから」
「ひ、昼!? 半日もずっと混ぜてろって!?」
「そそ、僕はちょっとこっちの実験で手が離せないから」
冗談じゃない、と抗議する間もなく佐原は他の部屋へ行ってしまった。
確かに佐原の提示する時給は馬鹿にならない。
仕事内容は熱いは異様に疲れるわ変な臭いがしみつくわで、割に合っているかというと甚だ疑問だが。
典型的なNOと言えない日本人である誠人は、諦めの溜息を吐いて巨大なかき混ぜ棒を手にした。
「見習いシェフでも、こんなに長く混ぜないだろ……」
何時間が経ったのか。酷く腕や腰が痛むし、熱気にさらされ続けて汗もだらだらだ。
外はもうすっかり明るくなっているはずだが、研究室は24時間薄暗いため分からない。
鍋の中の物は、怪しくぐつぐつ煮え続けている。
佐原が一体何の実験をしているのかは知るよしもないが、とんでもなくろくでもないものに違いない。
もう勝手に帰ってやる、と思ったとき、ようやく佐原が姿を現し、鍋の中を覗きこんできた。
「――うん、こんなもんかな。仁藤君お疲れ様。あと1時間ほどで帰っていいよ。僕は少し寝る」
「ね、寝るって!? おいちょっと……」
佐原の勝手さに眉を吊り上げても、本人はどこ吹く風であくびしながら出て行ってしまう。
「はぁ……はぁ……」
ようやく一時間経った頃には、誠人はボロボロに疲れきっていた。
「くそっ……」
そのとき、ふと隅にある冷蔵庫が目に付いた。
他の機材や家具はのきなみ汚れていたが、それだけは新品同様の綺麗さだった。
佐原へのちょっとした反抗心もあって、誠人はそれを開いてみる。
「ろくなものがないな……。あ、オレンジジュースだ」
生活臭皆無の冷蔵庫に、ぽつんとオレンジ色の瓶ジュースが入っていた。
何故だか、それが誠人には酷く魅力的に見えた。
無意識にごくりと喉を鳴らす。
「ちょっとくらい、いいよな……。こんだけ酷い環境で、働かされたんだし」
自分に言い訳するように言うと、誠人は性急な動きで瓶の蓋を空け、口に含んだ。
(なにこれ……甘くて、めちゃくちゃうまい)
喉の渇きも相まって、誠人は一気にそれを飲み干した。
一眠りした後、誠人はやけにダルい身体を引きずりながらバイトへ向かった。
複数掛け持ちしている中で、今日はよりにもよって居酒屋の夜間シフトに入っている。
スタッフルームに入ると、タイミング悪く口うるさい店長が休憩しており、憂鬱さが増す。
誠人の態度が気に入らないらしく、『男ならもっとしゃきっとしろ』だの『腹から声を出せ』だの、会うたびに耳が痛くなることを言われるのだ。
「おはようございまーす……」
「お前か。もうちょっと早く――――」
店長はそこまで言いかけて、はっとしたように誠人を凝視してきた。
いつもと違う店長の様子に、誠人は違和感を覚える。
じっとりとした視線を向けられると、何故か心臓が脈打ち、頬が熱くなり――。
信じられないことに、股間がずくんといやらしく疼いた。
「は、早く着替えなきゃ……」
誠人はそれを隠すように少し前かがみになりながら、おざなりに仕切られた狭い更衣室に入った。
(――なに、これ……。なんか、ぁついっ……。最悪だ、疲れマラってやつか、きっとそうだ)
静まれ静まれと言い聞かせても、ドクドクと身体の疼きは一向に治まらない。
しかしいつまでもここにいるわけにもいかない。店長にでも知られたら最悪だ。
そう思って上着を脱ぎ捨てたとき。
「!? て、店長っ!?」
突然、店長が更衣室に侵入してきた。
「なっ……!?」
荒い息を吐きながら後ろ手にドアを閉めると、よどんだ目つきで誠人と向き合う。
「ハァッ、仁藤、最近お前の態度はなっていないんじゃないかっ? 今から指導を行うっ!」
「指導って、なにっ、ぅあっ」
店長は性急に誠人のシャツを胸の上までまくりあげた。
「っ、なんだこのけしからん乳首は! こんなにビンビンに勃たせて、お客様にどんな接客をするつもりだったんだ!」
「て、てんちょっ、やだっ、ひあっ、んっ」
言っていることが滅茶苦茶だ。それなのに乳首を太い指でこりこりと擦られると、誠人はわけも分からないくらいに反応していやらしい声を上げた。
「はぁっはぁっ、ほらっ、自分で触って、こりこりして、淫乱な乳首をしっかり自覚しなさい!」
「は、はいっ……」
熱い息を吐き、目を血走らせる店長に、誠人は何故か逆らえなかった。逆らう気も起きなかった。
「ぁっああんっ、ちくびぃ、んっぅ……」
「ああっ……いいぞ……。もっと、もっとイヤらしい声を出して、イヤらしいことを言うんだっ……」
「やらっ、あぅんっ、てんちょうに見られてるよぉ……。こりこりって、気持ちいいっ」
ぐり、ぐりっ。
両手で一心不乱に乳首を擦る。親指と人差し指でつまんでくりくりするのが気持ちいい。
そうするたびに、とっくに勃起した肉棒がビクビクしながら汁を吐き出して、もう下着の中はびしょびしょになっている。
「ぁん、あっ……チンコがぁっ」
「っ、こっちもこんなに勃たせて、この淫乱め! なんだ、お客様にイジってもらうつもりだったのか!? 許さないからなっ。おチ○ポって言ってみなさい。おチ○ポ触らせてって!」
そう言う店長の肉棒もビンビンに勃ち上がって、黒のスラックスを押し上げていた。
誠人のものより一回り大きそうなそれを見て、誠人の腰が淫らに揺れる。
「あぁぁっ、オチ○ポ、触らせてぇおち○ぽっ!」
「ハァ、よし、いいぞ、触ってみなさい!」
許しの声に淫らに微笑んで、誠人はジーンズを下ろした。
ボクサーブリーフは広範囲が誠人の汁で濃い色に染まり、そのせいで限界まで勃起したもののかたちが浮き上がっている。
店長がごくりと唾を飲む音が、その場にやけに響いた。
「っ、なんてイヤらしいっ!! ああ、パンツは脱ぐんじゃない。そのまま、おチ○ポをくちゅくちゅしてイくんだ!」
「はいっ、はぁあんっ……!」
下着の上から少し触れただけで、イったときのような痺れが身体を駆け巡る。
「こっちで、乳首をいじるんだ!」
「ひぁあんっ!! ふぁっ、おち○ぽいいっ、ちくびも、すごいよぉっ」
片手で乳首をいじりながら、片手で下着越しに一心不乱にぐちょぐちょの肉棒をしごく。
店長もたまらなくなった様子で、スラックスの上から太いものを弄り始める。
「あーっ、いくっ! ぁんっ、おち○ぽきそうなのぉってんちょおおっ! 」
「くぅっ、俺も、いくぞ! 仁藤の淫乱なおチ○ポに、いっぱいかけてやるっ!!」
店長は巨大な赤黒い肉棒を取り出し、激しく扱いて誠人のものにぶっかけた。
「あああぁんっ、てんちょうのっ、すごいっ……! あっ、ぁんっ、ふあぁっ、俺も、いってるのぉっ! せいえきでてるよぉっ!!」
ドピュッ、ドピュウウッ!!
誠人は下着の中に大量の精液を吐き出した。
店長のものと混じってドロドロになるのを指ですくって、うつろな瞳でうっとりと見つめていた。
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