鈍行痴漢電車 01 02
あり
「前から思ってたんだけどさ」
「何?」
「美住の尻ってエロくない?」
「……はあ?」
どういう話の流れでそうなったのだか、もう思い出せない。思い出せないのだからくだらない話に過ぎなかったのだろう。
前野にとってはただの思いつきの冗談だったはずだ。それでも美住は、胸が不穏な音をたてるのを止められなかった。
「いや、他の奴と違ってなんかプリっとしてるなーと。ちょっと触らせろよ、な、いいだろ」
「マジ何なの、キモいし」
「男同士なんだしいいじゃん。ほら」
「ひっ」
過剰に嫌がるのもおかしいのだろうか。一瞬そう思ってしまって反応が遅れた。前野の手が尻に触れていた。
「やっぱり……柔らかいし触り心地いいわ」
「やっやめろよ」
「いいじゃん。悪くないだろ、ほらほら」
尻たぶを指で無遠慮にぐにぐにと揉まれる。ぞくりとして心拍数が勝手に上がっていった。これはまずいと友達の手を振り払って、何とか動揺を押し隠す。
「……そんなに拒否らなくてもいいのに。あーあ、山崎の尻もこんな感じなのかなー」
山崎、というのは隣のクラスの女子だ。前野が以前からエロくて可愛いと言っていた女。
つまり美住の尻を女の代わりにしていたということだ。動揺はムカムカした不快感に変わり、美住は無言で友達を蹴っ飛ばした。
◇◇
自分は男が好きなのかもしれない。そう気づいたのはいつのことだったか。
女にモテなくてやけを起こした、というわけではない。女子に告白されたこともある。でも、周りの男子のように、可愛い子と付き合うことをステータスと感じたり、キスしたり、もっとすごいことをしたい、と思ったことは一度もなかった。
エロ動画を見てもしっくりこない。女の高い嬌声には耳を塞ぎたくなる。むしろあまり映らない男優のほうに目が行って、そんな自分が嫌で途中で見るのを辞めてしまうのが常だった。
美住は自室で一人、尻を鏡に写してみた。――エロい、だろうか。確かに男にしては丸みを帯びた形がくっきりしている気もする。
でも、尻が少しぷりっとしているからって何になるというんだろう。他のパーツや顔は男そのものだ。女みたいに可愛らしさなんてなくて、かといって特別男らしくて逞しいというほどでもない、普通の男。いや、第一女になりたい願望はないと断言できる。
そう、女になりたいわけじゃない。ただ男に――。
「ん……」
前野にされたように尻を揉んでみると、アナルがかすかにきゅんとした。男にもある一つの穴。本来はそのための器官ではないそこに挿入することができると、漠然とした知識はあった。
パンツの上から触るとくすぐったいような感触があって、美住は慌てて手をどかした。興味本位がエスカレートして、戻れなくなるのが怖かった。
あまり眠れないまま翌日の朝を迎えた。
高校へは電車で二十分ほど離れていて、上りなのでかなり混雑する。
最寄り駅までは自転車で10分。今日はあまり時間に余裕がない。駅近くの駐輪場に置いてホームに駆け下りると、発車寸前の電車に滑り込んだ。いつも以上に混んでいて憂鬱になる。いつもなら満員ながら多少の隙間はあるのに、今日は人混みとドアに体を挟まれてろくに身動きもとれない。ドアに体を預けられることだけが救いだ。
スマホをいじる気にもなれず、窓から面白くもない住宅街の景色を眺めているときだった。
「……っ?」
何かが尻に触れた。それだけなら珍しくも何ともないことだ。満員電車なので他人と触れ合おうとバッグをぶつけられようといちいち気にしていられない。
だけど、今日に限っては体がぞわりとした。触れたものは明らかにバッグなどの無機物には持ちえない柔らかさと熱を持っていたから。
「それ」はぴたりと動きを止めて触れたままになったかと思うと、ゆるゆると動き出し、尻を上下に往復して擦られる。――偶然ではありえない動きだった。
すぐに腕を掴んで捻り上げるくらいできればよかった。だけど今日はタイミングが最悪だった。美住は身が竦んでしまい、とっさに動けなかった。触られて条件反射のようにびくんと体が揺れて、そんな自分に動揺して、体が固まってしまったのだ。
その様子は痴漢を調子づかせた。何も言えないからオーケーとでも判断したのか、それまではおそらく手の甲で触れていたのを、露骨に指の腹と手のひらを使って尻をもみ始める。
「……っ、んっ……んぅ…」
すりっ……すりっ……むにっ……ぐにっぐにっ……
痴漢は熱心かつ執拗に尻の感触を味わっていた。強い力ではなく優しく、時にくすぐるような力加減なのが余計に背筋をぞわぞわさせ、足が震える。
「はっ……はぁ……ん…」
されるがままで窓に顔を押し付ける。相手の姿は見えないが、手の大きさや微かに聞こえる吐息からして、間違いなく男だ。
満員電車の中で男に尻を揉まれている。何度も何度も指先が柔らかい肉に食い込む。今までこんなこと一度もなかったのに……。
完全に抵抗が遅れた美住に、痴漢は追い打ちをかける。大胆に揉みしだき、アナルを晒すように両方の尻たぶを広げた。
もちろん服を着ているから実際に見られたわけじゃないのに、入り口の皺が少し伸びただけで奥までずきりと疼いて、声が漏れた。
「あぁっ……んっ、ひっ…」
慌てて口を閉じる。電車の走行音に紛れる程度だったが、すぐ近くにいる痴漢には聞こえてしまったかもしれない。
それを肯定するように、痴漢は片手でぐっと尻を開くと、片手の指を穴に食い込ませてきた。
「〜〜〜っ! ん゛っ、ふっ、んぅっ……」
「はぁっ……はーっ……」
ぐにっ……ぐにっ……ぐりっ……ぐりっ……
明確な意図を持ってその場所を突かれる。腰が大げさにびくついて、周りに悟られるのではないかと血の気が引いた。熱が出たときのように、暑いのに寒気がする。
狭い箱の中で多くの人の息遣いを感じる。心なしか空気も淀み、酸素濃度が低くなっているのではないかと疑うほど頭がクラクラして呼吸が荒くなる。
女の子から痴漢されたという話を聞くたび同情したし、合意も得ず触るなんてキモい男がやることだと軽蔑していた。そんな行為に感じてしまう自分は一体どうしてしまったのか。
「ひぁっ……はっ、んっ、んっ、ぅん〜〜っ…」
ぐりっ……ぐりゅっ……ぐにぐにっ……
男がアナルに興奮していることは明らかだ。そして美住は、男に興奮され、欲情されている事実にゾクゾクしてしまう。
スラックスに阻まれ実際に挿入できないのがもどかしいどばかりに、布地ごと挿入されてしまいそうな勢いで執拗に入り口を弄られる。
もしも女の子のスカートのように手を入れられる構造ならば、とっくにパンツごしの感触を楽しんだ後、濡れたパンツをずらして、直接触られていただろう。いや、触るだけでは飽き足らず、今尻の感触を味わっている指を穴の中まで――。
何故かアナルの入り口が切なくひくつき、ペニスから汁が漏れる。
「はぁっ……ぁあ、んっ、ふっ……」
そう、美住は勃起していた。触れられた直後から、嫌悪感もあるはずなのにあさましく反応して、穴を弄られるとどうしようもなく興奮して、勃起し濡れたペニスをドアに擦りつけている有様だった。
走行中の満員電車では逃れようもなく、擦られるペニスが痛いほど感じる。すでにパンツはいやらしい汁で濡れていて、このままだとスラックスまで漏らしたみたいに染みが広がってしまう勢いだ。
はあはあと息を荒げながら慄いていると、それを察したように痴漢の片手が前に回り、ベルトを外してきつくなっていた前のファスナーを開いた。
「んっんっ……、あんっ…、っ」
「…………」
下着ごしに、くちゅりと水音が出そうなほど濡れた先端を無遠慮な手付きで触れられ、ひっくり返った声が出てしまった。
ちらりと見えた男の手は大きく筋張っていて、加齢による皺は見あたらない。悪い想像上にいたくたびれた汚い中年という感じではなく、だが紛れもなく立派な男の手が性的に美住をいたぶっている。その様子に目が釘付けになっていると追い打ちをかけるように、特に敏感な、汁が出る割れ目のあたりをぐりぐりと刺激された。
「〜〜っ……ん゛っ、ん〜〜っ…ぁはっ、ぅうんっ」
「――気持ちい? こんなに濡らして……エッチだね」
「ひっ……ぁ……」
初めて男が言葉をかけてきた。やはり想像より若く、汚さや嫌な感じはない声だったが、口調はまるで女に対するような甘さがあって、自分がそんな扱いを受けている事実に首まで赤くなる。
「やめっ……んっ、はぁんっ……」
「嫌じゃないよね……? エロいプリケツして誘ってたんだろ。お尻いじられただけでビショビショに濡らしておいて」
「はあぁっ……んっ、ん゛〜っ」
淫らなことを言われ腰が震えた。尻は後ろにある男の体に、ペニスは男の手にずりずりと擦りつけてしまう。
誘っていた、なんて最低な言いがかりだ。
でも昨日、美住は男にどうされたいと想像していただろう? そんなはずないと打ち消そうとしても、体の反応はごまかせない。
いつもどおり決まった順番に制服を着て、いつもどおりに髪をセットして家を出た。どこからどう見てもいつもどおりで、何も変わっていないはずだ。
見透かされるはずがない。それでも不安になる。あいつは本当は男が好きで、尻をいじってほしがっている変態なのだと思われてしまうのではないかと。
「んっ、んっん゛ぅっ、ふっ、ふあぁ」
「先っぽ好きなんだね、どんどん濡れてくる……」
「ん〜〜っ……」
ぐちゅっ……ぬちゅ、くちゅっくちゅっ……、ぐりぐりぐりっ……
男が囁く唇が耳を掠め、それにも感じる。親指が濡れた鈴口のあたりに食い込んで、ぐりぐりと何度も擦られる。扱くのではなく一番敏感なところだけ指先で弄られて、まるで女のクリ○リスにするみたいだ。そんなことを考えて、倒錯的な興奮にまたじんじんと感じてしまう自分が信じられない。
「はぁっん゛っ、〜〜っ」
「んっ……」
ぐっ……ずり、ずりっ……ごり、ごりっ
不意に、尻に硬いものが擦りつけられた。硬くて熱くて、少し広げられたままの尻たぶの間にぴたりとはまって、そのまま上下に動く。
ぞくぞくとした愉悦が、下半身から背筋を駆け上がった。
(ああぁっ……ち〇ぽ、勃起ち〇ぽ擦りつけられてる……っ、電車の中なのに、男に痴漢されて、興奮して硬くなったち〇ぽが、はぁっ、すごい、太いのがビキビキになってるの伝わってきて、苦しい……)
「んっはぁんっ……ひっ、うぅ」
「はぁ……は……っ」
男の息も上がっていた。美住のペニスの先を弄くり回しながら、尻肉を使ってごりごりと勃起を扱く。
「――俺の、勃起してるの分かるよね……?」
「ひっ……あっ、んっ、ん゛っ」
男は強引に美住の手を掴むと、自身の昂ぶったペニスに触れさせた。硬くて太くて、ドクドク脈打っている感覚が伝わってくる。
思い切り攻撃を加えてやれば、男は怯んで痴漢行為など止めるかもしれない。だが美住は目をとろんとさせ、男に導かれるがまま硬いものを性的な手付きで撫で回していた。
男の手が美住の手から離れても、その動きを止めることは何故かできない。するとご褒美と言わんばかりに、今度は片手が胸元に上がり。
「んぉっ、っ、〜〜〜っ」
こすっ、くにっ……くにっ、くにっ
乳首を正確に捉え、指先で転がされた。その瞬間、もどかしいような切ない悦楽が腰まで蕩けさせ、少しの間声を抑えることも忘れてしまった。
すぐに激しい羞恥が湧き上がり、かと言って乳首の敏感さは触れられると高まっていくばかりで、美住は息苦しささえ覚えながら悶える。
「ん゛っ……ひぃっ、はっん゛っんっん〜〜っ……」
「…………乳首も敏感なんだ」
「んんっ……! おっ、ほぁっ、ん゛っんんんっ」
男は過剰な感じ方に少し驚いたような反応を見せたが、すぐ熱心に乳首をこね回し始める。
乳首は敏感――そのとおりだった。アナルに何かを挿入する勇気はなくとも、外に出ている乳首は、そのつもりがなくたって触れてしまうこともある。だから自分で弄ったこともあった。
オナニーしながら乳首をいじって、声が漏れてしまうくらい感じて少しの罪悪感を覚えていた。
他人に触られるのは、自分でするよりずっと不安で、ぞくぞくした。
くりっ、くにっ、こすっこすっこすっ……、くりくりくりくり
「はああぁっ……ぅあ、んっひっ、あぁんっ」
「エッチだね、高校生のくせにこんなモロ感な乳首して……」
「ん゛〜〜〜っ……」
美住は必死に首を振った。乳首で感じまくっているのはバレバレで、もう声も抑えられなくなってきている。
橋やカーブが多くうるさいと評判の路線だから、ドアに向かって多少声を出しても誰も気づかないはずだ。そうであってほしい。もしバレたら終わりだ。周囲にはスーツ姿のサラリーマンが多いが、間違いなく同じ学校の生徒も乗っている。濡れたペニスの先端と敏感な乳首を好き勝手に弄られて、興奮した勃起を扱かされて、抵抗もせず感じまくってしまっている姿がバレたら……。
「あっおっ……んっ、ん゛っ、んんぅ」
「はぁ、はぁ、ん……」
乳首は硬くコリコリになり、全体を指で刺激されるたびに腰が跳ねる。美住はもうわけが分からなくなりながら、恍惚として手の中の勃起を擦った。男も興奮しているのが更に大きくなった勃起から伝わってくる。自分に欲情してここまでなっているということに、頭では理解が追いつかない一方、体はすっかり受け入れたがって奥を疼かせていた。
「あっ……っ、ぅんっ、んっんっん゛っんっ」
片方の乳首が男の指で弄られ、皮膚が張り詰めるほど勃起すると、今度はもう片方を責めらる。どっちがいいか分からないほど両方ともよくて、あっけなく性器と化してしまう。
人差し指の先で何度か弾かれ、その刺激で頭が出たところをすかさず布ごしに摘まれ、左右に捻られる。そして搾乳するようにぎゅっと潰したかと思うと、そのままの状態で別の指で先端をくりくりと掠められ。
感じさせるためだけの動きに、ペニスの先からだらだらと汁が出続け、腰が抜け、ドアと男の支えで何とか立っていられる状態だった。
(あ〜〜……乳首、乳首だめ、モロ感になっちゃった乳首ずっとくりくりされるのヤバい……。あぁもう思いっきり声出したい、乳首イイって媚びた声出しながら、腰がんがん揺らして、みっともなくてもいいからイきたい……っ)
半ば無意識にそんな願望を思い描いていた。ありえないことなのに、乳首が気持ちよすぎて、異様な状況に興奮して、淫らな妄想が脳を侵食する。
「あー……挿入れたいな」
「……っ」
「君の中にハメて、奥までガンガン突きたい……んっ」
「ふああぁっ……」
男は押し殺した声で、淫らなことを囁く。さすがにここでは出来ないことだと分かっていて、欲情をぶつけるように耳を食み、穴に舌をねじ込んできた。
ねっとりと敏感なところを舐められ――こちらにも欲しいのだと言わんばかりにアナルがきゅうきゅうと収縮する。
美住は熱に浮かされたように、本能のままに、硬く隆起する男のペニスの形をぎゅっと握った。スラックスを押し上げているカリの形をなぞり、立派な段差にうっとりとする。
耳に熱い息がかかり、軽く噛むようにしながら囁かれる。
「……ぁっ、これがほしいの?」
「ぅんっ……、あっ、ちがっ…ふぁ、はー、はあぁっ……」
「……」
ほしい。それを奥まで挿入してガンガン突かれたらどれだけ気持ちいいか、想像ばかり膨れ上がる。
違う、そんなものほしいわけがない。男の興奮した性器をほしがるなんてどう考えてもおかしい。ましてや人で溢れた電車の中でなんて……。
異様な興奮と理性がせめぎ合い、頭がぐちゃぐちゃになる。男の手がベルトにかかっても、美住は抵抗せず身を任せたままだった。
「はあぁっ……ぅあ、んっ……」
男がそっとボタンを外すと、スラックスはあっけなく膝のあたりまで落ちてしまう。
もしかしたら電車内で脱がせることには躊躇いがあったのかもしれないが、美住の反応が一線を越えさせたのだ。
美住はぴったりフィットするボクサーパンツを愛用している。履き心地の良さが気に入っていたパンツに、今は淫らな汁によるシミが広がっていた。
男は興奮しきったペニスを擦りつけてきた。尻にまとわりつく布地は薄く、熱さやビキビキと脈打つ血管、カリの傘の部分がひっかかる感触が生々しく肌に伝わる。
ずりっ……ずりゅっ、ずりゅっ、ぬ゛りゅっ……
「ん゛〜〜っ……、あぁっ、はっ、ぅん、ふうぅっ…」
「んっ……はぁ」
男のペニスも先走りで濡れている。痴漢に欲情されているという事実にどうしてこんなにも興奮してしまうのだろう。分からないまま体はどんどん熱を帯びていく。
「ん゛んっ……ひぁ、……っ!」
張り詰めた勃起を擦りつけたまま、男は少し乱暴な手付きでパンツをずらすと、とうとう直接濡れそぼった先端に触れてきた。
びくびく震える美住を押さえつけ、そのまま汁をまとわせた指でアナルの入り口をなぞる。
くちゅ、ぬ゛っ……ぬちゅ……っ、ぐちゅっ……
「ん゛ん〜〜〜〜っ……ふっ、ううっ、んっんっ……」
大げさなくらいアナルがひくつく。止めようとして力を入れると、余計男の指を吸ってしまってどうにもならない。
淫らな反応に男は息を飲む。押し付けられているペニスが、挿入するべき性器を見つけたとばかりに、どくりと雄の鼓動を伝える。
完全に快感を待って準備万端になっていたそこに、指がねじ込まれた。
「お゛ぉっ……んおっ……、っ」
「はぁ……」
ぬ゛ぶっ……ずぶ、ぬ゛ぶぶぶっ……
はじめての衝撃だった。それでも散々妄想していたからか、痴漢の指によって発情しきっていたからなのか、痛みよりも別の狂おしい感覚が勝った。
男も、まるで自分の昂ぶりをそこにハメたかのように、あるいはそれを想像したのか、やけに色っぽい息を吐く。柔らかくなっているとはいえ指一本でもきつい中、抜き差しが始まった。
「ん゛んっ……あッあぅっ…あっ、〜っ」
ぬぶっ、ずぶっ、ずぶっ、ぬ゛っ、ぬ゛ぶっ……
ゆっくりと感触を確かめながら、長い指が締め付ける中を擦っていく。
「あ゛ひっ……んっんっ、あうっんっんっ、んんっ」
一本を挿入したまま二本目が強引にハメられた。ギチギチで圧迫感があって苦しいのに、それ以上に感じる。マゾにでもなってしまったのだろうか。
二本の指を別の方向に動かし、入り口のあたりを拡げられる。もっと太いものが挿入できるようにするための動きだ。そう、尻に当たったままの、熱い塊を――。
ぞくぞくが止まらない。自分では指一本挿れる勇気もなかったのに、痴漢によってあっさり淫らな本性を暴かれしまった。
おっ…ああんっ…ん゛〜〜っ」
ぬ゛っ……ずぶっ……ぐりゅっ、ぐりゅぅっ……!
入り口がほぐれてきたところで、今度は中を重点的に責められる。指先が前立腺を掠めた瞬間、信じられないほど甘い声が出た。
(あああぁっダメ、そこ変、ヤバイ、ヤバい、気づかれちゃう、痴漢に指マンされて女の子より感じまくってるって、みんなに知られちゃうっ……)
「ん゛ん゛っ、ん゛っふっ、おっ、ぉんっ」
ぐりっ……ぐり、ぐり、ぐりゅぐりゅぐりゅぐりゅ
前立腺、男の体の中にある気持ちいい場所。経験はないが知識だけは豊富だった。そこを圧迫すると、ペニスでの射精とは別物の途方もない快感を得られると。
人によって感度は違い、開発が必要だとネットでは言っていたのに。いきなりこんな、感じてしまうなんて。
もうそこが美住の性感帯だと、男はすぐに気づいたようだった。必死に声を我慢しているというのに、容赦なくぷっくりとした部分目がけて指を曲げ、半ばまで挿入したままぐりぐりと圧迫してくる。
襲いかかる絶頂感に美住は痙攣しながら耐えることしかできなかった。吐息で曇った窓におぼろげに映る顔は、涙や汗で濡れ蕩けきってぐちゃぐちゃになっている。むき出しにされたペニスが冷たいドアに擦られ続けるのを気にする余裕もない。犯される穴が全てになってしまう。
男の口数がすっかり少なくなったのも不気味だ。ただ指と硬い勃起だけが男の本気を伝えてきて、見知らぬ雄に蹂躙される恐怖にぞくりとする。
「はあぁっ……あうっ、ンッふぅっんんんんっ」
口を閉じても閉じても、えぐられた瞬間に勝手に開いて、だらしなく舌まで突き出しての繰り返しだ。だがもう本当にまずい。自分が未知の快感に上り詰めていることは知識の外だったが、本能的に理解できた。
美住は必死に振り返り、男だけに聞こえるよう何とか言葉を絞り出した。
「ふあああっ……だめ、も、ヤバいっ……マジでっん゛っ…それ、ヤバいからぁ」
「…………どうして? 指マン気持ちいいんだろ」
「……っ、だから、よすぎて、お、おかしくなっちゃうから、お尻のっなかで……イっちゃうっ……」
ぬ゛ぶっ……ずっ……ぬ゛ぶ、ぐりゅっ、ぐりゅっ……
窮状を訴えると、男は手を引くどころか、一層強く前立腺を押しつぶす抜き差しを始めた。
(あ〜っ……ヤバいっすごい、いい、きもちいいっ、お尻でイっちゃう、激しい指マンされて、イッしちゃう……っ周りのひとにアクメ声聞かれちゃう……っ!)
ぬ゛ぶっぬ゛ぶっぐちゅぐちゅっ、ぐりっぐりっぐりっぐりっぐりっ!
「ん゛っん゛っ、おっ、あ゛っ、〜〜〜〜っ!」
セックスしているような激しいピストンで、我慢しきれない快感が全身で暴れまわり、美住は強制的な絶頂へ導かれた。
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