憑かれた男 2 02
あり
「古川、ありがとう。上がって」
「え、でも……」
「もう終電ないだろ。迷惑かけたし、狭いけどよかったら泊まっていってくれ」
不思議と密室で二人きりになると酔いがすっと引いていき、サトシの欲望が膨れ上がっていく。
まずい、もう抑えられそうにない。
「不動、水を……、!?」
「はぁっ……」
サトシは不意打ちで古川の体に抱きついた。
細く見える体は、意外に筋肉のついた紛れもない男のもので、サトシがどんどん高ぶっていく。
「ふ、不動、どうしたの?」
「んっ、古川君、好きっ……
」
言ってしまった。古川から動揺が伝わってきて湊はとてもいたたまれない気分になる。
「ちょっと待って……落ち着いて」
「あっ……」
抱きつく腕を引き剥がし、古川は湊の両肩を掴んで顔を覗き込んでくる。
「好きって、俺のことが?」
真剣な表情で訊かれた。決して蔑んだり、気持ち悪がったりする様子はない。
そんな真摯な古川に対して、サトシは言い放った。
「うん好き。思いっきりセックスしてハメまくってほしい」
空気が凍りついたように感じた。湊は絶望した。
「何……言って……」
古川は心なしか顔がひきつっていて動揺が隠せていない。それはそうだろう。いきなり男の同級生にセックスしてほしいなどと言われたら受け入れがたいに決まっている。
「セックス嫌……? じゃあせめてフェラさせて。古川君のち○ぽしゃぶらせて」
「な……」
サトシは必死である。王子のような容貌の古川によくもまあ下品なことが言えたものだ。
古川が固まっているのをこれ幸いにと、サトシは古川のスラックスを脱がせにかかった。
「ちょっ…不動」
「はぁっ……ち○ぽ、早く舐めてしゃぶりたい、我慢できないっ
」
今の湊はさぞ発情しきった淫乱の顔をしているのだろう。それを古川に見られていると思うとどうしようもなく恥ずかしくてたまらなくなる。
「っ、やめろよ…っ」
「あッ」
ペニスに触れようとした瞬間、古川に手を振り払われてしまった。サトシは拒絶されたことにショックを受けて涙目になる。
「どうしたんだよ不動……君はそんな人じゃなかっただろ。潔癖で、結婚するまでしなくていいとまで言っていたのに」
「だって、だってだって、俺ち○ぽ挿れてもらわないともう駄目なのっ……
ああもう駄目、せめてオナニーさせて、古川君オカズにオナニーするっ…
」
サトシは相当古川が気に入ったらしく、必死で食い下がりオナニーを始めようとした。サトシの存在など知るよしもない古川から一体湊はどう思われているのか、考えるまでもなく絶望的だ。
湊は意識の中で抵抗したが強い欲望に抗えず、下をすべて脱ぎ、脚を開いて古川に見せつける体勢になった。
「古川君、見てぇ……
ち○ぽもう硬くなってる…っ
あっ、ほら、ち○ぽほしくて、ケツま○こひくひくしてるぅ…
あぁん
」
「……っ」
激しい羞恥に顔がかっと熱くなる。
朝、サラリーマンに犯されたばかりのアナルを古川に曝け出している。精液は全て綺麗に処理してアナルの中から溢れ出てくるはずはないのだが、散々嬲られペニスを突っ込まれ性器になってしまったそこを見られると、たまらない気持ちになった。
サトシにとってはそれは興奮の材料にしかならず、見せつけるように指を舐めると性急にアナルに触れた。
「はあっ……指、ハメるね、見てて、古川くんっ…
あッ
ああぁんっ…
」
ぬちゅ……ぬぶ、ぬぶ……ずぷぷっ……
今朝太いもので散々突かれた割にアナルは狭く、指をぎゅうぎゅう締め付けてくる。性感帯が圧迫されて、湊は快感と羞恥でクラクラした。
古川に見られている。自ら足を開いてアナルに指を挿入する淫らな姿を。
「あッ
あッ
あんっ
ふぁっ、ケツま○こきもちいっ…
古川くんの挿れてほしくて、ひくひくしてるっ…
あッあぁんっ
」
ずぶっ、ずぶっ、ぬぶっぬぶっ、ずりゅっずりゅっ
息を乱して指を抜き差しする。こんなこと嫌で仕方がないのに、サトシの欲望は湊の体にそのまま伝わってきて、古川に挿入されるところを想像してしまう。
古川は――その気になればすぐに部屋から立ち去ることもできるのに、そうはしなかった。
「……もしかして、誰かに強要されてるの?」
「あぁッ…
ふるかわくんっ…
あッ
ひあぁっ…
」
「だって君が、こんな……」
この期に及んで湊の心配をする古川の優しさに湊は苦しくなる。
しかしサトシは「御託はいいから早く突っ込んでくれ」という自己中な欲望で頭がいっぱいのようだった。
「はぁッ、だっておれ、セックスしたいっ…淫乱なのっ…
あッあぁっ…
古川くんのっチ○ポほしいっ
」
ずぶっ、ぬぶっ、ぬぷっ、ぐりぐりぐりっ
「それは俺のことが、好きだから?」
「んんっ
好きっ
古川くんが、他の男より一番すきっ…
」
「……他の男?」
「んっ、今日の朝も、電車でハメられて気持ちよかったけど、満足しきれなかったからぁ…はぁッはぁッ
」
おいやめろ、と湊は頭の中で全力でツッコんだ。
何てことをいうのだろう。古川の目に自分はどれだけ汚らしく見えていることか、考えるだけで恐ろしい。こんなことを言ったら余計にセックスしてもらえる可能性はなくなるというのに、サトシは馬鹿だ。
そう思っていたのだが。
「っ…古川くん…? はああぁっ
」
古川は無言で近づいてきて、湊の指をアナルから抜かせたかと思うと、自らの指を勢いよくハメた。
ぬっ、ずぶっ、ずぶぶぶっ
「あぁあんっ!
あッあぁっ
ひあんっ
」
「熱くて絡みついてくる……。不動がこんな、信じられない」
「あぁっ
指マンっ…
あッ
あんっ
あんっ
あんっ
」
ずぶっずぶっずぶっ、ぬぶっぬぶっぐりぐりっ
古川は見たことのないような怒った顔をして湊を見ながら、指で抉るように抜き差しする。
自分の指とは違う強制的に与えられる快感に、腰がびくびく跳ねる。
「あぁんっ
古川くんに指マンされてるっ…
あッあッうれしいっ
はぁっいいっ
きもちいっ
あッ
ひあぁっ
」
サトシはもう挿入されることしか考えておらず、懲りもせず再び古川のスラックスを脱がせにかかる。
「ハァッはぁっ…
古川くんのチ○ポ…っ
あぁっ……
」
古川は、今度は抵抗しなかった。驚いたことにペニスは勃っていて、サトシは狂喜した。
「はぁっ、んっ
んぅ、んっ…
」
舌を這わせ、先端を咥えるとビクリと脈打つ。
古川のペニスは硬くて大きく、血管が浮き出ていた。綺麗な顔をした古川にこんな欲望の塊があるなんて、強いギャップを感じる。
ちゅくっ、れろ、れろっ、ぢゅぶっぢゅぶっぢゅぶっ
「んんっ…
ん、ん…
」
口の中の粘膜を硬いペニスで擦られる。苦しくて、なのに体は昂ぶって、涙目で古川を見上げると、じっと見つめ返されて恥ずかしくなる。
「――もういいよ」
「はぁっ……」
フェラを止められた。はあはあと息を乱しながら古川を見つめていると――完全に勃起したペニスを、湊のアナルに押し当てられた。
「あ、あッ…
うそ、古川くん、あ、はぁっ…
」
「……」
古川は無言のまま、湊の腰を掴んでペニスを挿入した。
ずぶっ…、ぬぶっ、ずぶっ、ずぶぶっ…!
「あ゛ああぁーっ!
あッ、ひ、あああぁッ
」
アナルが硬く大きいもので満たされ、押し広げられた粘膜から強烈な痺れが全身に広がる。
同時に、頭の中で悲壮な声が響いた。
『嘘でしょ、逝っちゃう…まだ逝きたくないのにっ…もっとセックスしたいのに、気持ちよすぎて昇天しちゃうっ』
快感に真っ白になりながら、湊はサトシの成仏が近いことを感じる。
『あああ、意識が遠のく……くそっ中出しされるまでがセックスだろうが。ああ駄目、生まれ変わったら絶対古川くんみたいな男と……』
そこで声は途絶えた。自分の中から何かが消えていくのがわかる。
――何とサトシは、古川に挿入されたことで今度こそ成仏したらしい。案外あっけない幕切れだった。
湊に対しては別れの言葉一つなく、最後までできなかったことがさぞ不満そうだったが、挿入されただけで逝くほど古川との行為はよかったのだろう。
とにかくこれで問題は解決――かというとそう単純な話ではなく。
性行為は幕切れどころか、始まったばかりなのだった。
「ッあ゛ああぁっ…
」
感覚が全て自分の元に戻ってきて、意識もクリアになる。怒張をずっぽりハメられたアナルの苦しさも、古川の体温や息遣いも、急に夢が現実になったみたいに湊の体に襲いかかる。
「ひあぁっ…
も、あ゛ッう、も、うあぁあ…っ
」
挿入されているだけで内壁を硬いものでゴリゴリ圧迫されて、狂おしいほどの感覚を与えられる。サトシが出ていったというのに興奮も体の熱も全く冷めず、湊は恐ろしくなった。
「はぁっは、あ゛っ
ふるかわっ…も、いいから、はぁっ、セックス、しなくていいから、抜いてぇ、ひっ、あ゛あ゛あッ…
」
「――今更、何言ってるの」
ズブッ……ズヌッ、ズブッ、ぐりゅっ
息も絶え絶えになりながら逃げようとする湊の体を古川は押さえつけ、怒張をゆっくり引き抜いたかと思うと、再び奥へねじ込んだ。
「あ゛ひっ
あッあんっ…
ふっあ゛っい゛ッ…
」
「君が言い出したんだろ、俺に、挿れてほしいって」
「ヒッあ゛ぁっん
あッあッ
あああッ
」
ずぷっ、ずぬっ…ずぷっ、ぐりっぐりっ
「俺にこうしてっ、勃起を奥までハメて、突きまくってほしかったんだよね…?」
「あ゛ああっ!
アッお゛っ
ひっあッ
あんッ
あんッ
あぁっ
」
古川は湊の腰を掴み、段々と抜き差しを速めていく。
掠れた声で責められると恥ずかしくて、ゾクゾクして余計に怒張を締め付けてしまう。
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