見つめる男 02
あり
「それ、何に」
「何って、分かってるんだろ」
薫が口角を吊り上げた。ぞくりと悪寒が走って後ずさろうとするが、拘束されていてままならない。
振動し始めたそれが、無情にも下半身に押し当てられた。
「ひああぁーっ…! いぁあっ、ヤッ、はぁッ、あぁうっ!」
想像を超えた強い刺激に、全身が大きく跳ね、悲鳴のような喘ぎ声が勝手に上がった。
握りこぶし大の先端部が、ジーンズの上からペニスをごりごりとなぞっていく。
自慰のときの気持ちよさとか、そんな生やさしいものじゃない。わけがわからなくなるような衝撃が絶えず全身を苛むのだ。
「あひぃいっ…あっあんッ! やめっらめぇっあひっあッんっはぁっ」
「……すごいな。気持ちいい? 男なのに電マ押し付けられてそんなやらしい声出すんだ…」
「あンッあっぁあッ…いうなぁっ…んんっはぁっ、あぁんっ…」
狂おしく喘ぐ修司を、薫はぎらぎらとした目で凝視する。
その視線が怖くて、だけど何故か余計下半身のあたりがきゅううっと疼いてしまって――修司は足先をぴんと伸ばして身悶える。
「ジーンズの上からこれなら、脱がせたらどうなるだろうな……」
「っ! むりっヤッはぁあっあっ…はぁっ、やめっ……」
そんなことされたら、自分でもどうなってしまうのか分からない。
だけど薫は修司の言い分を聞く気などはなからないようで、ジーンズに手をかけた。
修司は羞恥心に耐えられず、ぎゅっと目を閉じた。
電マの攻めでペニスはギンギンに勃起して、パンツがびしょびしょになってしまっているのだ。
こんな、はしたない姿を薫に――晴香の弟に見られてしまうなんて。
「んっ、…はぁっ…」
すっかり敏感になったペニスは、ジーンズがずり下ろされたときの擦れる感触にさえ感じてしまう。
――見られている。ジーンズは脛のあたりまで下げられ、ペニスを隠すのは濡れたボクサーパンツのみだ。
視線はありありと感じるのに、薫は何も言わない。さすがに男のこんな姿を見て気持ち悪くなったのだろうか。
沈黙に耐えられずそっと目を開くと、いきなり薫とばっちり目が合ってしまい――、次の瞬間、思い切り電マを押し付けられた。
「あ゛ああぁあんッ!! あひぃっあぅっあッあッんっ…はぁあっあぁーっ!」
ドプッドプッと汁が出て、下着のシミが卑猥に広がった。
自分がイったのかイっていないのかすら、よく分からない。
刺激が強すぎて、ずっとイった瞬間のような官能が続くのだ。
「っ……淫乱すぎ。自分の目で見てみろよ、電マ攻めされて、どうなってるのか……」
「やッ…はぁっあっあぁあッ…!」
薫に顎を捕まれ、強制的に下を向かされる。
最早抵抗する力などなく、否応なしに自分の卑猥な様を目の当たりにした。
「ッあぁんッ…あっはぁっあひッ…」
ボクサーパンツは思っていた以上に濡れ、反り返ったペニスの亀頭や裏筋のかたちをくっきり透けさせていた。
そこを執拗に攻める電マが、ミスマッチなようでやけに卑猥に感じられ、自分がAVの中の女になったかのような倒錯感に、腰がびくびく跳ねる。
「はぁッああぁっもっ、んっやめっやめてくだっあぁッ…おかしくっはぁんっ、おかしくなるッひっあぁんッ」
「……こんなによがってるのに、やめてほしいの? ……なら……」
興奮したような声で、薫が囁いた。その内容は信じがたいものだったが、これ以上やられたらおかしくなると本気で感じていた修司に、拒否することなどできなかった。
「ッいいっきもちいっ…はぁっはぁっぁ…電マでちんちんごりごり、されてッあぁんっ…きもちいっ…!」
「ん……お前のチ○ポ、電マでどうなってるの?」
「はぁッぉれのちんちん、ぎんぎんになって、あぁっ、いっぱいエロイ汁、だして、んっ、ぱんつ、ぐちょぐちょにしてる、っはぁッあっあんっあああぁんッ!」
薫の荒い息が頬を掠めたかと思うと、電マの振動が突然更に強くなり、腫れた亀頭に押し付けられた。
ヴーーーーー!
ごりっごりっぐりぃっ!
「ひああああぁーっ! やらぁっいくっいくっあッアッああああぁんッ!!」
その瞬間、大波のような快感が全てを支配して、頭が真っ白になった。
「あああぁっ…ひっ、ひあぁッ、あっふぅっいぃッ…」
ドプッドプッと、今までになく大量の液がパンツの中で漏れ、本当にイッたのはこれが初めてだったのだとおぼろげに自覚する。
ペニスだけじゃなく全身が甘い余韻で痺れて、痙攣が止まらない。
薫は目元を赤く染め、獣のような顔で修司をじっと見つめていた。
「はぁッ…はぁっ……ん、なんで、なんでこんなっ……」
酷く混乱して訊くと、薫は一瞬はっとしたような表情をして、それから皮肉げに笑った。
「どうして? 頭が悪い奴だな。自分の胸に聞いてみろ」
「……っ俺が、はぁっ…晴香さんの周りをうろちょろして、手紙出した、から……? でも俺、どうしようもなく本気で好きでっ……」
「――気持ち悪いんだよ、お前」
吐き捨てるように言われ、修司は凍りついた。
酷く悲しくて、涙が滲んでくる。分かっていたはずなのに。自分は一体、どんな答えを期待していたのだろうか。
晴香に似た綺麗な二重の目で見つめられ、晴香に似た形のいい唇で罵倒され――彼女に言われたようで悲しいのか、『薫』に言われて悲しいのか。自分自身でもよく分からなかった。
「うぅっ……うっ」
涙は勝手に溢れて頬を濡らす。手を拘束されているから拭うこともできない。
惨めで悔しくて、それでも最後の意地で睨み付けてやろうと思った刹那、唇をやわらかいもので塞がれた。
「んっ……ふ、ぁっ…ん、ぅっ…」
最初は軽く、角度を何度も変えて啄ばまれたかと思うと、下唇を食むようにして吸われる。
ずく、とおかしな痺れが走って、思わず息を吐き出すと、すぐさまその隙間から熱い舌が侵入してきた。
「ふっ…んぅ、んんっ…はふぅっ……」
びっくりして追い出そうと舌で突き返したら、濡れた粘膜同士が擦れる感覚に思いの外ぞくぞくしてしまった。薫も興奮したように修司の後頭部をわし掴むと、執拗に舌を擦り合わせてくる。
「んっんっ……ふぅっんっ、んんーっ…」
歯列の裏を舐められ、上あごをなぞられ、じゅんっと下半身から汁が漏れたのが分かった。
猛烈に恥ずかしくなって脚を擦り合わせると、ぐちゅ、と濡れた音が響いて、鼻にかかった呻き声が一層甘いものになってしまう。
薫にも気づかれた、と思った瞬間強く舌を吸われ、腰がびくびく跳ねた。
「……っ、はぁっ…」
「ん、はぁっ、はぁっ…ひっ、あぁんッ」
ようやく唇が離れたかと思うと、薫は性急な手つきで濡れた下半身に触れてきた。
さすがに気持ち悪くないのだろうかと疑問に思う間もなく、パンツをずらされ、濡れそぼった穴に指が食い込んだ。
「ひぁああんッ! やっ、そこやだっ、ぁっんっんぁうっ」
「嫌じゃないだろ…。すげえひくついてる……」
薫に、どころか誰にも触られたことのない場所をぐりぐりしながら、薫は掠れた声で囁く。
確かにアナルは指を食むようにひくついていて、わけのわからない疼きが湧き上がってくる。
今から何をされるのか想像し、同時にそれをどうしようもなく期待している自分に気づいて、修司は痙攣しながら身悶えた。
「まってっ…、んっ、ハァッ、あっああぁんッ…」
ヌッ、ヌチュ、ヌプっ、ズブブブブッ…
長い指が、ずっぽりと奥まで挿入された。
濡れていたおかげで痛みはなく、ただじっとしていられないような違和感と疼きがアナルから全身に広がる。
薫は熱い息を吐くと、ゆっくりと抜き差しを始めた。
「ヤぁああっ! はっあっだめッ…あっぁあんっあんッ」
グチュ、ぬぷっぬぷっ、ずぷっずぷっずぷっずぷっ
ぎゅうぎゅうと締め付ける中を掻き分けるように、指が内壁を突いてくる。
卑猥な音と尻を犯されているという倒錯感で、慣れない疼きがはっきりと官能に変わっていく。
ひっきりなしに甘い声を上げる修司に興奮したように、薫は乱暴に片手でセーターを捲り上げると、あらわになった乳首に吸い付いてきた。
「はぁあんっ…あっあっやらぁッ…そこっあんッふぁあっ」
「ん……乳首もいいのか……。ガキみたいに小さくてピンクのくせに、コリコリになってる……」
「やっちくびっ…はぁっあんっあっアッあひぃっ…」
恐る恐る視線をやると、舐められていない乳首までピンと勃起していて驚いた。
舐められているほうに至っては、ぷっくりしたものが唾液でてらてらと光っていて、それが舌で押しつぶされる様は言いようもなく卑猥で。
視覚からの興奮でアナルが収縮して、指をぎゅううっと締め付けた。
「あぁああッ……もっらめぇっ、ひぁっいぃっあんっ、あぁんっ……はぁっ、ぁ……」
このままでは、乳首を弄られながら尻を突かれてイってしまう。そう思ったとき、ずるりと指が抜かれた。
ほっとした気持ちとは裏腹に、アナルはものほしげに収縮を続け、余韻で身体の疼きは中々治まらない。
こんな中途半端なところで終わりなのだろうかと、安堵とももどかしいともつかない気持ちで薫を見上げると、獰猛な獣のような男と視線が交わった。
「っん、はぁ、……」
ごくり、と喉が鳴った。薫は下半身をくつろげていて――勃起した怒張が眼前に突き出された。
修司のものより数段巨大なそれは、腹に突きそうなほど反り返っていて、先端がてらてらと濡れて光り、強烈な雄のフェロモンを発している。
薫は修司の膝裏を掴むと、それをアナルに押し付けてきた。
「っ、ぁ、だめっ、やだっ……」
「何で嫌……? こんな、男好きする体のくせに、姉貴以外とはしたくない?」
言われて初めて気づく。不思議なことに、男に掘られることへの嫌悪感だとか、晴香以外の人間と性行為することへの拒否感だとか、そういうものはあまりなかった。
ただ、それをされたら二度と戻れなくなるような予感と恐怖、そして甘い期待が、今の修司を支配していた。
「だって、こわ、ぁっ、こわいからぁっ…」
素直に言うと、薫の張り詰めた空気がほんの少し緩んだ気がした。
「――怖くないよ。これで、気持ちいいところたくさんごりごり突いてやるから……」
「あぁあっ……はぁっ、はぁぅっ……」
ぬっ、ぬちゅ、ちゅぶ、ぬぷ、ぬぷ……
先端が、ひくつく襞を少しずつ広げてめり込む。
我慢できない。――いや、何が我慢できないのだろう。もうわけが分からない。助けて、ほしい。
「挿れてって、言えよ。チ○ポほしいって……」
「やっ……そんな、ぁ、んんっ……」
「言えよ……。やらしく誘えたら、指じゃ届かない奥までハメて、種付けして、……のオンナにしてやる」
怒張で入り口を愛撫されながら、壮絶に色っぽい声で囁かれ――修司の中の何かがぷつりと音を立てて切れた。
「……っ、はぁっ、いれ…いれてっ…おっきいちんちん、ほしいっ……ぁあっ、おしり突いて、ごりごりして……っ! あぁッああんっ!」
修司は官能の誘惑に陥落した。涙目で卑猥な言葉を口にする表情をじっと視姦したまま、薫は腰を押し進めた。
ぬぐっ、ぬぷ、ズッズッ…ずぷっずぷっばちゅんっ!
「あぁあんッ! ひっああぁーっ…」
「ぁっ……くっ」
巨大な肉棒が、隙間なくみっちりと尻穴に埋め込まれた。
酷い圧迫感と、性感帯をじかに殴られ続けているかのようなすさまじい快感に、修司は涙で濡れた目を見開いて呆然とする。
ぐっと奥まで押し込められると、腰が勝手に跳ねてもうわけがわからない。
「ああぁッ…う、ごいちゃっひあぁっらめっあぁっあんっアァンッ!」
「はぁッ……大丈夫、お前のお尻、俺のをずっぽり咥えこんでる…。約束どおり、突きまくってやるよ…ッ」
「やああぁっ! あ゛っあぁッあひっあんっあんッ!!」
両膝の裏をぐっと押して密着してくると、薫は卑猥な言葉で攻め立てながら腰を動かし始めた。
ヌッ、ヌッ……ヌチュッ、ズプッ、ズプッ、ズプッグプウッ!
「はぁんっあっアッいぃっ…あ゛ぁうっらめぇっあんあんぁんあんッ!」
ぎゅうぎゅうと収縮する中を、怒張がごりごりと擦りまくる。
奥を突かれ、抜くときには傘の部分がぐりっと前立腺をひっかき、信じられないほど気持ちいい。
「っ、いいか? お尻突かれて感じる…っ?」
「はぁうっあぁッらめっあんっこわ、こわぃっ…あんっあひっあぁんっ…」
「はぁっ、仕方ないな……乳首、舐めてやるから……」
感じすぎて怖いと言っているのに、薫は屈みこんできて、ぷっくり腫れあがった乳首に舌を這わせた。
その間にも揺すられ続けているので時々歯が当たって、鋭い刺激が全身に突き抜ける。
「あんっ! ひっちくびっ…あっアッふぁっんぁあっ…」
れろ、れろれろっ……ちゅぶ、ちゅっ、ぐりっぐりっ……
ずぷっずぷっぬぶっ…グプゥッ、ごりゅっごりゅっ、パンッパンッパンッパンッ!
乳首を吸いながられろれろ舐められ、腰は奥まで突っ込んだまま抉るように回される。
「ひあぁッ…あんっぁんッらめっ…もうっあんあぁんっ!」
「ん……?」
「もっあぁっほどいてぇっあッふぁっ…イきたいっちんちん、しごきたぃっはぁっあんっんあぅっ」
挿入されてからはペニスに触れられてもいないのに、イきたくてたまらなくなって、修司は泣き叫ぶように訴える。
すると薫は突然ピストンの動きを激しくしてきて、拘束を解いてくれることはなかった。
「あああぁッ…あんっぁんッあひぃっんっふぁあっ…らめっアァッおねがっあんっんぁあ…」
「はっ…チンチン弄らなくても、お尻と乳首だけでイけるだろ……?」
「あァッ、そんなぁ、むりっ、はぁんっあんっアンッ!」
口ではそう言いつつ、奥を穿たれ乳首を強く吸われるたび、射精感はどんどん高まってくる。
もう理性はどろどろに溶けていた。とにかくイきたくて、修司は半ば無意識に腰を揺らし、咥えこんだ肉棒を前立腺に擦りつけた。
「っ、淫乱。イけよ……お尻と乳首でいっちゃうって、言いながらイけ。っ、二度と、女なんか抱けない体にしてやるっ……」
そんな煽りにも、ショックというより女にされたような興奮のほうが強くて、激しい疼きが膨れ上がる。
「あぁあっ…いくっ、おしりと、っちくびだけで、いっちゃうっはぁっあぁんっ…ちんちんでおしり突かれてっアァッいっちゃ…ひっああああぁんッ!!」
「はぁっ、くそ、淫乱……!」
ずぶっずぶっずぶっばちゅっヌチュッズパンッ!
パンッパンパンパンパンッ!
これ以上ないほど高速で突かれまくり、肉壁の全てを灼熱の肉棒が擦る。
足先はぴんと伸びてガタガタ震え、生理的な涙や涎が勝手に出てくる。
ごりゅっと一際強く前立腺を押しつぶされた瞬間、強い電流のような衝撃が全身を襲った。
「あ゛あああぁーっ、いくっ、いくっ…ひっアンッあひっあぁあああンッ!!」
「っ、は、ぁっ……!」
ぬぷっずぷっ…ドプッ、ドプ、ドピュウッ!
アナルが激しく収縮し、触られることのなかったペニスから何度も白濁が発射されて胸のほうにまでかかった。
ほぼ同時に中で怒張が膨れ上がり、熱い液が大量に奥まで注がれた。
「あひっ…あぅっあっあっ…はぁっあぁっ…ん、はぁっ……」
射精が終わっても、余韻なんて生易しいものじゃない快感が長く尾を引いて、身体が痙攣し続けた。
そのたびに未だハメこまれたままのペニスのかたちがくっきり分かってしまい、泣きたい気分になる。
薫は荒い息を吐きながら、じっと修司を見つめ、やがてらしくなく弱弱しい声で囁いた。
「思い出せよ……」
意味は分からなかった。だけど終始強引だった薫が不意に見せた乞うような表情に、何故か胸がぎゅっと切なくなって、修司は目の前の首筋に頭をうずめた。
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