白い秘密 高梨視点SS 02
最近やけに気になって仕方がないやつがいる。
このクラスでモテるのは誰かって聞かれたら、多分ほとんどの奴は俺ともう一人の名前を挙げると思う。謙遜したらむしろ嫌味になるくらいモテてきた。イケメンに生んでくれた親には感謝してる。
で、もう一人っていうのが倉科拓海。こいつの存在が俺のペースを乱してくる。
いつから気になっていたのかは覚えてない。気がつくと目に入ってくる。最初はなんでこいつ俺の視界をうろちょろするんだって思ったレベルで。
俺、高梨葵はチャラいとか軽そうだってよく言われるタイプだ。髪は染めてるし制服も着崩してる。親とか先生にはだらしないってたまに怒られるけど直すつもりはさらさらない。
逆に倉科は髪型も服装も校則を守っていて、背筋もやけに伸びてて、だからってダサいわけではない。涼しげっていうのかなああいうの。
別にライバル意識があるってわけじゃない。女子がみんな自分を見ていなければ気に食わないと思うほど傲慢でもないし。むしろ同じくらいモテるやつがいると、他の男子からの嫉妬が分散して気楽になるくらいだ。
まあ、横に並んだとき自分の方が背が高いって気づいたときは、悪い気はしなかったけど。俺の方が二センチくらい高いかな。ってことは体重も俺のほうが間違いなくある。倉科はガリガリじゃないけど細い。腰とか特に男にしては細いから。
「おはよ」
「……おはよう」
クラスメイトだから朝会えば挨拶くらいはする。けど交流といえばそのくらい。女子なら顔を赤くする笑顔を向けても、返ってくるのは軽い会釈だけ。
多分よく思われてないんだろうな。男から反感を持たれることには慣れてる、はずなんだけど。
「おはよー倉科! なあ、俺数学あたるんだよー。ノート見せて!」
「朝からうるさいな。自分でやれよ」
「そこをなんとか!」
倉科が席に着くと、久保がへらへらと話しかけにいく。
久保も大概いい加減でちょっとウザい奴だ。だらしないっていうなら俺以上だ。
倉科はちょっとウザそうにしつつなんだかんだで友達みたいで一緒に昼食を食べたりしてる。
――何で俺には冷たいのに久保ならいいんだろ。ちょっとおもしろくない気分になった。
倉科は頭がよさそうな顔をしてるけど、意外と鈍感なんだと思う。体育の時間のとき、短パンで堂々と脚を晒していて二度見してしまった。
男なら大抵、暑くてもダサいからって短パンを嫌がってジャージを穿く。なのに倉科は恥ずかしげもなく短パンを穿いている。スタイルがいいから格好悪い感じはしないけど……。
ただでさえ短いのに、倉科の短パンはサイズがぴったりかむしろ小さいくらいで、どういうつもりなんだろ。理解不能だ。長くまっすぐな太ももの大半が露出しちゃってるし。自分で不安にならないのかな。
案の定準備体操の時点で、屈んだりすると短パンの生地がパツパツになる。お尻の形が分かるくらいに。
あれって……、例えば男が好きな男から見たら、相当エロい姿なんじゃないかな。
ゲイって、人口の何パーセントか忘れたけどとにかくクラスに一人二人はいるって何かで見たことがある。体育は二クラス合同だからもうほぼいると言っていい。そういう趣味の奴はこっそりエロい目で倉科のことを見てるに違いない。
俺がやきもきしてることなんて倉科は気づくことなく、倉科は平気で授業を受けている。その日は少し暑くて、運動したら汗をかいて短パンの生地が太ももにはりついている。
そんな状態で走ったら――、心配してたとおり短パンが食い込んじゃった。尻の割れ目に薄い生地が食い込んで、丸みのある形が浮かび上がってる。
倉科は走り終わった後、指でさっと食い込みを直した。
女子が恥ずかしそうにパンツの食い込みを直す仕草を、男同士でエロいなーって言い合ったことならあるけど、倉科は男だ。別に恥ずかしそうにもしていないし、あの短パンの下に着てるのは間違ってもエロいレースの下着なんかじゃなく、どうせグレーのボクサーパンツとかなのに。
っていうか何で短パンの下まで想像してるんだろ、俺。もうそうなると全部が気になってくる。
倉科は上も体操着一枚だ。遠目からだと分からないけど、近くを通ったら乳首が体操着を押し上げているのがほんの少し見えて、固まってしまった。
短パンの食い込みと併せて指摘したほうがいいのか俺は本気で迷った。
ああもう、なに立ち止まって休憩してんの。ガン見できちゃうじゃん。ずーっと動き回ってなきゃ乳首と太ももがエロいってこと誰かにバレるだろ。もう一生走ってればいいのに。
体育は割と好きなのに、倉科のせいで全然集中できなかった。
家に帰ってまで、俺は気づいたらあいつのことを考えてた。
短パンを穿いて食い込ませるなんて恥ずかしいことなんだって分からせたい。
あんなに堂々と穿いてるんだから、口で言ってもわからないんだろうな。もっと強硬手段に出ないと。
そうだ、指で無理矢理短パンを引っ張って、俺が食い込ませてやればいいんじゃないか。そしたら嫌でも恥ずかしさに気づく。……その前に殴られるかな。
もうめんどくさいから、あの太ももに勃起したち〇ぽでも擦りつけられちゃえばいい。男に欲情される危険があるって分からせればいいんだから。
思いついたら、今まではムスッとしてるだけだった想像の中の倉科が、頬を赤く染めて涙目になった。
で、倉科の太ももにち〇ぽを擦りつけてるのは、紛れもなく俺で。
「…………マジ?」
デニムの前が押し上げられてパツパツになってた。
何で変な想像で勃起してんの、俺。いやいや気のせいだ、気のせい……。
そう言い聞かせてみても困ったことに全然萎えない。
「はぁっ……ん……」
どうしたかって、そりゃ勃起しちゃったら出すしかない。視覚的なオカズは何もなかったのにいつもより気持ちよくて早く出た。しばらく頭の中から倉科が出て行ってくれなかった。
俺の頭の中がおかしくなってることなんて、もちろん倉科には知ったことじゃない。むしろ知られたらヤバいし。
だけど後輩の女子といい雰囲気になっていると聞いたときは、理屈抜きに無性にイラっとした。
こっちは初めて男で勃起して悩みまくってるのに、そっちは女の子と青春しちゃってるのかって。
それに最近は前にも増して邪険にされてる。ちょっとずつでも話しかけて歩み寄ろうとしてたのに、露骨に嫌な顔をされて歩み寄るどころかどんどん距離をとられてる感じ。
もしかして俺の変な気持ちがバレてる……? だとしたら最悪。
腹いせみたいに、倉科と仲がいい一年の女子に少し近づいてみた。もう拍子抜けするくらいめちゃくちゃ簡単だった。誰かとは大違い。
ミナというその子は、可愛い系に見えてゴリゴリの肉食系だった。イケメン大好きではっきり言ってビッチ。俺がシャワー浴びに行ったときに、他の男に平然と「ごめーん今女友達と遊んでるの」と電話するような女だった。
「――どうしたんですか? 機嫌よさそうですね」
「ん? そう? これからミナちゃんと楽しいことできるからだよ」
「えー、やだー」
無意識に感情が漏れちゃってたらしい。
だってもし本気で一途に倉科が好きって子だったら、両思いになって倉科と真剣に付き合うことになってたかもしれない。
でも全然そうじゃなかった。この子じゃ倉科にふさわしくない。
◇◇
「おい、ちょっと顔貸せよ」
体育が終わった後の休み時間、珍しく、というか初めて倉科から話しかけられた。ぶっちゃけちょっとテンション上がって、のこのこ着いていった。
そういえば最近の倉科は濃い色のインナーをきっちり着込んでる。
暑くなってきたのとは逆に、制服のときも体操服のときもいつもだ。やっぱり俺がガン見したのに気づいた……?
けどそれなら、短パンのままなのはおかしい。今だって後ろから食い込みかけている尻を見てるのに倉科は全然気づいていない。
食い込みに気をとられてるうちに体育館裏に着いて、二人になったらいきなり突っかかられた。
「お前、ミナに……何かしたってのは本当なのかよ」
あー……ミナのこと知っちゃったんだ。まあ最初から剣幕な態度だったから予想はついたけど。話しかけられたからって何をちょっと期待しちゃってたんだろ俺。馬鹿みたいだ。
ミナの話が漏れたのは、まあ本人から以外ないか。分かりやすく自己顕示欲が強いタイプだし。自分で言うのもなんだけど、俺とホテル行ったって自慢したくなっちゃったんだろう。
倉科の前だと大人しくて可愛い子を演じてるみたいだけど。女優か。
「あの子は遊びでそういうことするようなタイプじゃない。見れば分かるだろ。それなのに手を出したのかって聞いてるんだよ」
倉科は俺が無理強いしたって思っているらしい。めちゃくちゃ心外なんだけど。賢そうな顔をして人を見る目がない。あんな女よりよほど俺の方が――。
ぶっちゃけミナのことは別に嫌いじゃない。変に本気をアピールしてくる女より付き合いやすいし、男癖はまあ最悪だけどそこ以外はそんなに悪い子じゃなかった。
だけどミナを大事な相手みたいに言う倉科にイラっとして、思いきりミナのことを悪く言ってやった。そうしたら殴りかかられて、とっさに避けたら思い切り睨みつけてきて。
「はぁっ……お、お前なんて、大っ嫌いだ……っ」
嫌い。知ってたはずだけど、柄にもなく言葉が刺さった。
……それにしても、何か倉科が変だ。顔が赤くて、息をはあはあ乱しながら涙目になっているのを見て、変なとこがぞくりとした。
え、もしかして誘ってる? ありえない想像をしてる間に倉科は俺を置いて走って行ってしまった。
居ても立ってもいられない気分になって、俺は後先考えず部室棟に入った倉科を追いかけた。
その部屋で見た光景は、一生忘れられないと思う。
「ヤっ……見るなっ、んっ、あぁんっ…」
そう言われても目が離せるわけがない。倉科は死ぬほどエロい顔をしてて、最近はインナーで隠されてた乳首をむき出しにして、そこからいきなり白い液体が吹き出した。
何が起きたのか分からないまま、俺のち〇ぽは一瞬でバッキバキに硬くなってた。
「高梨…言わないでくれ、誰にも……」
あの倉科が泣いてる。いつも俺には態度が悪い倉科が、膝を立てて座り込んで無防備に太ももを晒して、体操服をまくり上げて、乳首からミルクを出しながら無防備な顔を俺に晒してる。
全身の血が熱くなるような感覚がした。今すぐ襲いかかっちゃいそうになるのを必死に押し殺して、倉科に近づいた。
片方の乳首には傷用のパッドが貼られてる。乳首が隠されてて、見ちゃいけないものを見ちゃったみたいなエロさがある。
倉科は最近乳首からミルクが出るようになって、それを恥だと思って必死に隠してたらしい。
はっきり言ってエロすぎる。そして俺にとってはこの上なく幸運だった。誰も知らない秘密を俺だけが知ってると思うと興奮して、乳首を弄り倒したくなる。
遠回しに脅すようなことを言うと、出てけって言ってた倉科がおとなしくなった。我ながら結構最低。でもやめられない。
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