偏食の淫魔 02
あり
その日はなんだか胸騒ぎがした。
「明智、放課後時間作れる?」
休み時間。席を立つ生徒が多く周囲の人がまばらになったタイミングで、穂高が話しかけてきた。
「……忙しいんだけど」
「明智、バイトも予備校も行ってないよね。部活もしてないのに放課後よく残っているし、今日くらいいいだろ」
どう聞いても遊びの誘いではなく、教師のように命令してきた。
穂高の視線に罰するような感情が見て取れて、すごく行きたくない。
しかしわざわざ呼び出すには相応の理由があるはずだ。もし良の噂を聞きつけて咎めようとしているのなら、行かないという選択肢はなかった。教師に告げ口でもされたら、親の耳にまで届きかねない。
「信じがたい君の噂を聞いた」
放課後になると、特別教室が集まった階は人が少なくなる。奥の一室に連れて行かれ、入った途端嫌な予感が的中したことを知った。
「あー……それ嘘だよ。誰かが俺を死ぬほど嫌ってて嫌な噂を流したんじゃないかな」
「俺も最初はくだらないと思ったけど、調べれば調べるほど確信が濃くなっていったんだよ」
何をわざわざ調べたのだろう。穂高の語気は強く、嘘だとゴリ押しするのは難しそうだと悟る。一体どこの愚かな童貞が先走りのように話を漏らしたのだろう。そいつのモノは二度としゃぶってやらない。
「……実際見たわけじゃないよね。俺が被害者かもしれないのになんで責められなきゃいけないんだ」
「調べたと言っただろう。証言がいくつもあるんだ。あんな……汚いことを」
「……汚い?」
「この上なく汚い。そうだろ。学校に病気が蔓延するかもしれない。だからもし……誰かに強制されたというなら言え。俺がなんとかする」
「お前が?」
「俺のことが気に入らないみたいだけど、最悪な行為を強制してくる男よりはましだろ」
穂高の正義感ぶった物言いに、良はかっとなった。
「うっざ。俺は好きでやってるからほっといて」
「何……?」
「病気が学校に広まるって? 大丈夫だよ、ちゃんと童貞選んでやってるし、俺性病にはかからない体質なんで」
「選んで……なんだって?」
「ちゃんと童貞おち○ぽ選んでしゃぶってるってことだよ。ここまで言わなきゃわかんないのか」
そう、かっとなっていた。
汚い、最悪と蔑視される行為が、良にとってはどうしても必要な生命線なのだ。何故迷惑をかけたわけでもない人間からここまで言われなければならないのか。
ぶちまけてしまったものの、大人に告げ口されるのは困る。すぐに立ち去ってしまいたい気持ちは抑えて相手の出方を伺う。
「ホントに無理やりとか一切ないし、金のやりとりもないよ。男同士ってとこは、個人の問題だから他人に言いふらしたりしないよな?」
「…………そうか。明智はそんなに男が好きなんだ」
「いや男なんて好きじゃないし。ただ童貞のを咥えてるだけで」
「なら俺のもして」
「……」
驚いて息が詰まった。
穂高は真面目なだけでなく積極性もあり集団のリーダーに向いているタイプで、背も高く、同じように成績がよく育ちのよさそうな女子から人気がある。
男でもいいからフェラされてみたいと良に懇願してくる生徒達とは人種が違う。
「な、なんでお前のなんかを。無理」
「これが好きなんだろ」
「あっ……」
にわかに部屋の温度が上がるほど熱っぽい空気が立ちこめる。穂高のそれを見た瞬間、頭がクラクラした。
穂高はじっと良のことを見つめながら、握った幹を何度か扱いた。知らずに淫魔の力が働いたのか、瞬く間に勃起して恐ろしい大きさになる。
「ふー……、ふぅう……っ」
息が荒くなる。厄介なことに、良の非童貞アレルギーは事前に正解を教えてくれるわけではない。精子を出されるまで、相手が童貞か非童貞か、判断してくれる本能はないのだ。
つまり目の前の逞しく反り返った穂積のペニスは、とてつもなく魅力的に見えて……。
「……ふああっ……だめ、だめっ……お前のは、絶対だめ、んッ……近づけないで、あ〜〜っ……」
「そんなに嫌? 佐藤や伊藤のち〇ぽならよくて、俺のは嫌だっていうの」
「いやっ、いやだ、あいつらのおち〇ぽはいいけど、これはっ……あっあ゛っ、オスの匂いさせないで、あっ……おっ……ん゛ぅっ」
「ふざけるな。誰のでもいいなら、黙って俺のも咥えろ」
ぢゅぼっ……! ぬ゛ぶっ、ぢゅぶっ……
硬いペニスが、口の中に挿入されてしまった。嫌だ嫌だと言いつつ、圧倒的なオスのフェロモンを放つ怒張を前に、良はだらしなく口を開けて舌を出してしまっていた。穂積は歯が当たるのも厭わない勢いで強引に口にねじ込む。
「んっ……ん゛ぅ、んッお…んっ〜〜〜っ……」
「はぁっ……あ、明智の口……っ、ちゃんとしゃぶって、みんなにしてるみたいに口で扱いて?」
「ん゛ん〜〜っ……」
良はイヤイヤと首を振る。非童貞と思われる男の精子を口腔内に出されたら、本当にまずい。穂積の精子は絶対に強烈だ。どうなるかわからない。最悪死んでしまうかもしれない。
(非童貞おち〇ぽだめ、絶対……。だから、絶対、お口でしゃぶったり舐めたりしたら駄目なのに……ああぁ、このおち〇ぽすごい、顎外れそうなくらい大きくて、ビキッビキッて脈打って、オスに犯されてる、一発で口をおま〇こにされちゃってる……)
ぬ゛るっ……ぢゅぶっ……ぢゅぶっ……
「ほら、舐めて……?」
「ん゛んっ……ふぅ、んっ、んッ……」
いけないと分かっていて、張り出したカリで頬の裏の粘膜を突かれると、良は本能的に吸い付いてしまった。
ドクドクという、射精を準備しているような脈動が興奮を煽る。良を殺す凶器そのものだ。
(あっ…あん…っああ〜……おち〇ぽ、こんなので口の中擦られたらっ……、そう、扱くだけ、中に、精子出されなければ平気、フェラして、気持ちよくさせるだけなら……)
誘惑に抗えず、とうとう良は淫らな考えに屈した。
うっとりとして口の輪で幹を扱き、吸いながら頭を上下させる。
「ふうっ……ん゛っんっ…んお…、んっんむっ、んっんッ」
「っ、いきなり……っ、あっ、明智、んっ……」
「ふぅっ……ん゛っんっ、れろ、ちゅ、ん゛ぶっ……」
ぢゅぶっ、れろ、れろ、ぢゅぶっぢゅぶっぢゅるるっ……
口腔内の粘膜で怒張を締め付けながら、少しでも気持ちよくしたくて舌でカリの境目を舐める。
期待通りドクドクとペニスが悦んで感じる気配がして、恍惚とする。
「はぁっ……くそ、上手だね、……当たり前か、色んな男にこうやってしゃぶらせたんだもんな」
「ん゛っ、んっふぅっ……ん〜〜っ……」
上ずった声で訊かれて頷く。上手いと褒められるの嬉しい。しかし穂積にとってはただの褒め言葉ではなかった。
苛ついたように腰を乱暴に動かし、良の口でペニスを気持ちよくする。
「ん゛っんむっ、ふぅっ、んぉっ…ふっ、んっんっ…」
(駄目かも。穂積のおち〇ぽ勝手に吸っちゃう。先走り出て来て濡れてる……、先走り、エッチな汁美味しい、精子じゃないから大丈夫、精子じゃないからもっと……、あーもうイラマチオされたい……。ガンガン突かれて口おま〇こに中出し……、されたら絶対駄目だから、止めなきゃ、言わなきゃ)
良は最後の理性を振り絞って一度ペニスから口を離し、必死に訴えた。
「ん゛ぉっ…ふうぅ……口、なかには出さないで……っ、びゅーびゅーするときは教えて……?」
「……すごく吸い付いてきておいて、そんなに嫌なの」
「ん゛っ……かお、顔にかけていいから……ッ、ん゛っんむううっ…」
「そんなに言うなら顔射してやるから早く……っ、そう、あーいいっ」
ぢゅぶううっ、ぢゅぼっぢゅぼっ、ぐぽっぐぽっぐぽっぐぽっ
「ん゛っんっんぅっ、んぶっ……んおっ……」
「ふー、ふーっ……出すよ、あぁっ、すごくいい、射精したい……っ」
穂高は興奮しきって良の頭を押さえつけ、オナホにするように腰を振りたくる。ペニスが硬く張り詰めたままどくんどくんと脈打ち、言われなくても射精が近いことを知らせてくる。
「んんっ……ンっ、ぐ、ふぅ、ん゛ん〜〜ッ……」
イくときは言ってくれと念を押したいのに、喉奥まで怒張したペニスで満たされては言葉を発しようがない。
(口に出したら殺す……ああぁ、すごい、口ま〇こ気持ちいい、粘膜がおち〇ぽで全部性感帯にされて、擦られるたびにもっとおま〇こになっちゃう……、中に出して……駄目、死んじゃう、顔にかけて、あああぁ……)
頭の中の警鐘を、強烈な興奮が上書きしようとする。良はすがるように穂高を見上げた。彼は目元を赤くし、普段からは想像もできない雄の顔をしていた。目が合った瞬間体が疼き、口腔の粘膜がペニスに吸い付いた。
「……っ、あー出る、出すよ、明智……っ、ん゛っ、ぉ、あっはぁっ、はぁっ」
「ん゛ッん゛ッ、んむ、んぉっおっ…〜〜ッ……」
どびゅっ、どびゅっ! びゅるっ、ビュルルルルルルッ……!
それが脈打つときに及んでも、力づくで引き剥がすことはできなかった。興奮した穂高は簡単に約束を反故にするかと思われたが、ギリギリでペニスを抜き、いきり勃った先端を良に向けてきた。
尿道が開閉しながら大量の精子を吐き出す様を至近距離で呆然と見つめる。
びゅるっびゅるびゅるっ、びゅーーーっ……
「っあー……っ、いい、すごい出る、……ん、まだ……」
「んああぁっ……でて、ぅ、あ、お、ん…」
穂高は太い幹を扱きながら射精を見せつける。唾液で濡れて赤黒く光り、先程より凶悪な存在に思える。
「ふー、ふーっ、ぅあ、んっ、……」
(何これ……今までしゃぶってきた童貞のとは全然違う。先っぽからドクドクって、こんなに、たくさん精子、もったいない……違う違う! はぁ、ちょっと口の中に入っちゃったかも、精気にあてられそう……)
のぼせたように頭がぼうっとする。ほとんどの精子は良の頬から首筋に流れていく。しかし先走りに混じった精子が口の中に入ってしまったかもしれない。吐き出せばいいのに、良は射精に見惚れてごくりと唾液ごと飲み込んでしまった。
「はー、ふぅ……ごめん、目に入らなかった?」
「だ、大丈夫」
穂高がそっと頬に触れてくる。今さっきまでイラマチオしていた男とは思えない優しい手つきに、力が少し抜ける。
(優しい。オナホ扱いされたなんて勘違いかも。興奮してる顔もかっこいい…………、いやいやいや、今のなし!)
良は動転した。無理やりしゃぶらされてほだされかけるなんてどうかしていた。
いや、本当に物理的にどうかされたのかもしれない。この男の精子は危険だ。
「ん、ごほんっ……もういい? バカみたいに出して満足しただろ」
「……満足?」
「お前も俺にしゃぶらせたんだから、これで共犯だよな。暴露とかしたらお前のことも暴露し返すから」
目を逸して、努めて冷めた声で言い放つ。
「そんなに嫌だった……?」
「当たり前。佐藤だか伊藤だか、そのへんの陰キャのおち○ぽのほうがずっと好き。お前のは絶対二度と……」
憎まれ口を叩けたのもそこまでだった。穂高はモノをしまうどころか、良の体を押し倒した。
「何をっ……」
「――本当に嫌? 俺のち○ぽ、あんなにうっとり咥えてくれたのに。そのへんのさえない男のほうがいいって……?」
背後からのしかかられ、熱い息がかかり、背筋が震えた。それだけではなくびくびくと腰が跳ねて、体の奥が熱くなる。
――他の男のほうがいいというのは本当であり、嘘でもあった。フェラをさせられ、良の体は今までにないほど高揚した。下品な声を出しながら腰を振りたくなるのを我慢するのに必死だった。
それが非童貞アレルギーのせいであるならとてもまずい。
尻を揉まれ、割れ目に意味ありげに指を食い込まされ、つい腰が動いた。
「ひぐっ…、お、尻、……ふー、ふーっ、だめ、そこは、そこだけはだめ……っ」
「どうして? 俺の精子ほしいよね」
「あぁあほしい、精子いっぱい……、ん゛っ、ちがう、だめ、あああぁ」
中毒者のように強い渇望と危機感とで、良の心身はめちゃくちゃになっていく。淫魔の力のせいか穂高も尋常ではなく興奮した様子で、乱暴に良の下を脱がせてしまう。
「あ、見ないで、んッ…」
「はぁ、はあ……綺麗だよ、明智」
「〜〜っぉっ……」
不意に恋人に向けるような甘い声で囁かれ、尻がびくりと揺れてしまう。穂高は優しい手付きで尻を撫で回した。ぞくぞくして背筋に悪寒が走る。それも束の間のことで、尻たぶをつかんで左右に開かれた。
穴が、ひくひくと痙攣しているところを見られてしまった。イラマチオしているときから体は昂ぶるばかりで、淫らな汁が垂れて濡れている。
「お゛っ……み、見ないで……、っん、はぁん……っ」
「ん、……何このおま〇こ……濡れてくぱくぱしてる。今すぐにでもハメられそう」
「おっ……おま〇こじゃない! あぁんっ…、ん、おっ、ハメ……」
一生そこを使うつもりはなかった。しかし良は確かに男を誘惑する種の淫魔で、精力を奪うための器官であることに間違いはないのだ。
普通のアナルとは違う。わずかに縦に長く、催淫効果のある粘液が挿入を助け、中の襞は何重にも張り巡らされてペニスを刺激するようにできている。
ここで男のペニスを扱いて虜にし、興奮した怒張から大量の精子を注がれる。それが淫魔の至上の喜びであり、生きるための手段でもあった。
くぱ、くぱ……と微かに中の薄紅色をちらつかせながら蠢く穴を、穂高は静かに凝視する。尻を掴む手が強くなり鈍い痛みが走った。
「はぁっ、明智のおま〇こ……縦に割れてる。まさかここにも散々挿入されてきたのか」
「ん゛んっ、してない、ぉ、フェラだけ、俺は絶対、お、おま〇こしない、男だから、特にお前みたいなのとは……っんっ」
「本当かな。俺だってガチガチに硬い肛門だったらさすがに突っ込むのはためらってたと思うよ? でもこんなの見せられたら――」
「ひっあああっ、ん゛ッ、おっ、あ゛ああぁー…っ」
ぬ゛る……ぬ゛ぷ、ぬぷ、ずぬ、ヌッ、ヌプ…
アナルに、熱くて滑ったものが触れた。予想外のものは躊躇うこともなく粘液ごと入り口の襞を舐め、くぱぁ、と穴が隙に中に侵入してくる。
「あああっ、あぅ、んッぉっ、…ひぁっ、そこ、な、舐めるなんて…っあっ舌がっあー、あぁあー……」
「ん゛、ふー、明智のおま〇こ、これなら俺のも……、お、ッん……」
舌がずりずりとざらついた面を粘膜に押し付けながら出し入れされる。指を突っ込まれることまでは想像ができていたけど、こうも抵抗もなく舌で舐め回されるとは。正気に戻ったときさぞ後悔するだろうに、と穂高のメンタルを気にする余裕はすぐになくなる。
「あ゛っおっ、なか、だめなのに、おま〇こッ、あッあっああぁ〜ッ……」
舌の長さでは入り口付近しか舐められない。それでも快感は蕩けるように甘く、届かない奥までひくひくと痙攣する。
ぬ゛るっ……ぬる、ずぬ、ぬ゛ぷ、ぬ゛ぷっ……
「ん゛っあっあへっぇっ……ずりずりしてぅ、んっあっあっいッ …あぁんっだめ、むり、おっ…ッ」
穂高は厚い舌を挿入したままぐるりと回し、襞を広げる。もっと太いものを挿入するための準備だった。
粘膜が絡み合い、大きく跳ねる腰を穂高が強い力で押さえつける。
「ん゛っ……、ふー……ん、ん……」
「あっあひっ…ぃ、ん゛っ、ふうっ、おっ……いい、おま○こ……っ、あああぁ」
舌が押し込まれるたびに中が蕩けて、良の頭も蕩けていく。
「ん゛っあッぁッしゅご、おっ……んっあっあっ……」
「ん、……もう入りそう、奥まで……」
熱っぽい声と同時に、熱く滾ったものがごり、ごり……と太ももに押し付けられる。
想像せずにいられない。疼く奥に、喉にしたように無理やりにでも挿入されて、中に出されるのを……。そうしたら、今まで良がちまちまと童貞から摂取していた精気を全部合わせても劣らないくらいに満たされる。本能で感じた。
彼が童貞でさえあれば。
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