根暗な淫魔2 02


あり


不思議な匂いがする。何なのかと訊かれても上手く形容できないのだが、南はそれを知っていた。
そう、これは加藤の匂いだ。
決して悪臭というわけじゃない。ただ言葉にしがたい違和感があって、嗅いでいるとどことなく落ち着かない気分になるのだ。

「加藤って、香水とかつけてる?」

一度、加藤に指摘したことがあった。他の生徒にも気づかれてからかわれたりしたら、可哀想だと思ったから。

「つけてない。……俺、臭い?」
「いや、そうじゃないけど」

加藤は慌てた様子で自分の腕の匂いを嗅いでいた。それ以来、頻繁に制汗スプレーや衣服用の消臭スプレーを使うようになったようだ。
そのおかげか匂いを感じる頻度は減った。自分が臭いのだと気にさせてしまったのなら悪かったが、南は安心していた。

なのに今、その匂いが何十倍にも濃厚になっている。頭がクラクラして、おかしな気分になる。
南はゆっくりと目を開けた。

「……っ」

下半身の強い快感に南は息を飲んだ。水音が聞こえて、熱い粘膜にペニスが刺激されている。
――フェラされているのだ。
ぼやけていた輪郭がはっきりしてきて、上目遣いでこちらを見ている加藤と目が合い、南は雷に打たれたみたいな衝撃を受けた。

「……なに、やって……!?」

加藤が、あの加藤が自分のペニスをフェラしている。とても信じられない。
しかし目が合って感じたのは嫌悪ではなかった。

「んっ、南のおち〇ぽおいしい……んっ……
「……っ」

れろ、れろ……ちゅくっ……ぢゅぶっぢゅぶっ、ぢゅううっ

加藤は恍惚とした表情でペニスを舐め、しゃぶり、口の中で扱く。
本当に美味しくて、勃起したペニスが好きでたまらないという顔をしていて、それを見るとゾクゾクする。
衝動的に体を動かそうとして、自分が拘束されていることに気づく。両手を縛られて身動きがとれない。

「んっ……ふぅ、んっんっ……
「はぁっ……やめっ…」

加藤は南が寝てしまった間にベッドに縛って、こんないやらしいことを始めたらしい。
これは夢なのだろうか。だって加藤は、大人しくて、友達もいなくて、下ネタを言ってるのすら聞いたことがない。オナニーしているのかすら怪しいと南は思っていた。そのくらい性とは無縁にしか見えなかったのに。

「んっ……おち〇ぽっ…んぅ、精液、飲みたいっ……ふぅっ……
「……っ」

いつもは長い髪に半分隠れている目が今はあらわになっているる。潤んでキラキラした目を見ていると酷く落ち着かない気分になって、何故か快感が膨れ上がる。
いやらしい言葉を口に出しながら南の勃起を愛おしそうにしゃぶる加藤に、萎えるどころか感じたことのない衝動を覚える。
おかしい。男に拘束されて好きにされているなんて状況で、自分にはそんな趣味は一切ないのに。
混乱しても、昂ぶりと快感が今まで経験したことがないほど強烈なものであることは否定しようがなかった。

「はぁっ……」
「んっ……んっんっ……

ぢゅぶっぢゅぶっ、れろれろれろっ、ぢゅぼっぢゅぶっぢゅぶっ

口の中の熱い粘膜がビキビキに勃起したペニスに絡みつく。 柔らかい舌が敏感なカリを舐める。濡れた唇と赤い舌がグロテスクに勃起したペニスを舐めるのを見ていると、絶頂はあっという間にやってきた。

「んっ……おち〇ぽおいしいっ…すごい、ドクドクしてきた…精液飲ませて……?んんっ…
「加藤っ、お前…くっ……」

いつもとは違う甘い声で淫語を言う加藤に、ペニスがどくりと脈打ち、強く吸われて我慢する間もなくイかされてしまった。

「はぁっ……いくっ…ん…っ」
「ん〜っ…んっんんぅっ…

ビュルッ、びゅるっ、どびゅっ、びゅーーーっ…

無意識に腰を突き上げ、加藤の喉の奥にまでペニスを咥えさせる。熱い粘膜の中でペニスがドクドクいって、大量の精液が出てきた。加藤は嫌がりもせず口の中に受け止める。

「はぁっ……」

南は呆然と息を吐いた。フェラとはこんなものだっただろうか。快感の余韻で腰が重い。
加藤は嬉しそうに精液を全て飲み込むと、今度は下着を脱いで自らの下半身を南に晒した。

「南のおち〇ぽもっとほしいっ……見て、おま〇こ見てっ……おち○ぽほしくて、濡れ濡れおま○こになっちゃったからぁっ
「な……」

加藤が脚を開いて、発情しきった顔をしてアナルをこちらに晒している。
男なのにおま〇こなんていやらしい言葉を使って――と嘲笑うことはできなかった。そこは濡れて濃いピンク色になってテラテラ光り、物欲しげに収縮していた。
挿れられるための穴――性器なのだと、南は自然に思った。あの穴にいきり勃ったものを挿入するところを想像してしまって、苦しいほど興奮してしまう。

「南っ、指挿れるところ見てっ?んっ、あっあっああんっ
「……っ」

加藤は誘うように南を見つめると、自らの指をアナルにずっぽりと挿入した。

ずぶっ……ぬぶ、ずぶっずぶぶっ……

「いいっ…あッあひっんっ…おま〇こきもちいぃっ…ッあッあぁんっ

指を挿れただけで加藤の体はびくびく痙攣する。
顔も声も、普段の彼からは想像もできないほど淫らだ。

「いいっ……あぁっあッあんっおま〇こきもちいぃっ…はぁっ、あッひああッ

ずぶっ…ぬぶ、ぬぶ、ずぶっ、ぬぢゅっ

濡れた穴が、指をずっぽり咥えこんでいる。かなりきつそうで抜き差しするたびに卑猥な音が立つ。 中はきっと、指にぎゅうぎゅう絡みついていているのだろう。
――挿れたい。そんな強い衝動に駆られた。だが両手を縛られていてはどうすることできない。

「……これ外せよ、加藤っ」
「んっあっらめっあんっひあッあッ

睨みつけても、加藤はオナニーする手を止めず拘束を解く気は更々ないようだった。
加藤がアナルでオナニーして、とんでもなくいやらしく喘いでいる。なんて淫乱なんだろう。しかも南を縛り付けて見せつけるなんて、完全に変態だ。
なのに――加藤から目を逸らすことができず、イったばかりのペニスを勃起させている。
弱々しい加藤に縛られて、無理やり卑猥な光景を見せつけられて、それで勃起してしまうなんて。
許せない。今すぐにでも自分の腕で加藤を押さえつけて、どちらが上の立場なのか分からせてやりたい。
なのにいくら変態、犯罪だと罵っても、加藤はただオナニーを続けた。
屈辱だった。

(俺が挿れてあげるより、自分でするほうがいいのか)

無意識にそんなことを考えていた。

「あぁっ…ちくびっ…ひアッあぁんッ
「……っ」

加藤はTシャツを脱ぎ捨てると、今度は乳首を指で弄り始めた。
乳首は赤くぷっくり勃起していて、男なのに見てはいけないものみたいにいやらしく見える。目が離せない。摘んだだけで加藤の腰はびくっと跳ねて、相当敏感らしい。

こす、こすっ、くに、くに、くりくりくりっ

「ひああぁッ…ちくびいいっあんッあっあぁんっ

乳首をこねくり回す加藤はもう蕩けきったメスの顔になっていた。
こちらを見つめながら乳首舐めて、と言われて、一層体が熱くなる。
あのいやらしい乳首を乱暴に舐めて、吸って、自分が加藤を喘がせまくるのを想像する。
だけど加藤は口でねだるだけで、南に近づこうとはせずオナニーを続けた。

「あぁあんっ…南の舌っ、きもちいっ…アッあぁんっそこっ…ひっあッあッあぁッ
「くそっ……」

くにっ、くにっ、くりくりくりくりくりくりっ
ぬぶっぬぶっぬぶっ、ぢゅぶっぢゅぶっずぶっずぶっ

加藤は乳首を弄りながら指を激しく抜き差しする。南に舐められるところを想像して淫乱な姿を晒している。
本物が目の前にいて、拘束を解けと言っているのに。加藤がこんな自己中心的な変態だったなんて。

「あぁあんっ…いきそうっ…イっていい? 南っ…あッあッあぁんっ

南の苛立ちなどお構いなしで加藤は体を昂ぶらせていく。
まさか乳首とアナルだけでイくのか。南は加藤をじっと凝視する。

「っあぁっイくっイくとこ見てっ乳首とおま○こでイくからぁっ見てぇっああぁんっ!

くりくりくりくりくりくりっ ずぶっずぶっぢゅぶっぢゅぶっぐりぐりぐりぐりぐりぐりッ! びゅっびゅくっびゅくっびゅくんっ…

「……っ」
「ああぁーーっ…あひっあッう、ああッ…

乳首を押しつぶしながら高速で指マンし、触られていないペニスから潮を吹くみたいに精液が出てきた。
加藤は恍惚とした表情で痙攣し、荒い息を吐いている。
――女でもこんなにいやらしい子は見たことがない。
ペニスが、痛いくらい反り返ってビキビキになっている。

「はぁ……南、南のおち〇ぽ…っ
「くっ……」

加藤が、初めて南の体に、ペニスに触れた。それだけでビクリと反応してしまう。おかしな薬でも盛られたのかというほど体が敏感になっている。

「挿れるよ……南のおち〇ぽちょうだい」

拘束されたまま上に跨がられる。ペニスは早く中に入りたいと脈打っていたが、このまま逆レイプされるなんてプライドが許さなかった。
一体何故こんなことをするのか、南は訊いた。

「加藤、俺のことが好きなの……?」

南はモテる。今までにも女のほうが積極的だったり、付き合えなくてもいいからしてほしい、と誘われたこともあった。だから女にこんなことをされたら、訊くまでもなく自分のことが好きで勢い余った結果の行動だと分かっただろう。
だけど加藤はどうだろう。いつも大人しくて、控えめだった加藤。他の人間よりは加藤のことを知っているつもりだったけど、今思えば南に対して心を開いていたわけではなく本心は全然理解できていなかったのだろう。

「好きっ……南が好き」

言われた瞬間の気持ちは、なんとも形容しがたいものだった。
そうか――好きだから、思い余ってこんなことをしてしまったのか。
好きで気持ちを溜め込んでいたからこんなに淫乱になって、拒絶されるのが怖いからわざわざ縛ったりしたのか――。
不思議と、それまで感じていた怒りがすっと引いていった。

「はぁっ、すき、みなみが好き南のおち○ぽほしくて、がまんできないからぁっ…
「っ、加藤……んんっ」

加藤が上からキスをしてきた。柔らかい感触に抵抗するのも忘れていると、脈打つペニスに触れられ、加藤がゆっくりと腰を落とし――。

ずぶっ、ずぶっ…ぬぶ、ずぶぶっ……

「あ゛あッ…ひっ、あああッ

限界まで勃起したペニスが、狭い穴の中にズッポリとハメられてしまった。
加藤のアナルの中は想像よりもっときつく、熱かった。

「ひあ゛あッ…あッいいっああーっ…
「くっ……」

びくっびくっびくんっ びゅっ、びゅるっ、びゅるっ、びゅくんっ…

驚いたことに加藤は挿れただけでイったらしく、アナルを痙攣させて精液を出した。ただでさえ狭いのにぎゅうぎゅうと搾り取るみたいに締め付けられて、こっちまでイってしまいそうになる。動いてもいないのにイくなんてありえないので南は快感をやりすごした。

「ああぁんっ…すごいっおち〇ぽっ…あッあんッあんッ
「はぁっ……」

ずぶっ……ずぶっ、ぬぶっぬぶっ、ぐりっ、ぐりぃっ

加藤が腰を動かして抜き差しを始める。熱くねっとりとした内壁がペニスに絡みつく。

「あんッあッひあぁっいいっきもちいぃっ…あッあんあんあんッ

ずぶっ……ずぶっ、ぬぶっ、ずぶっ、ずぶっずぶっパンパンパンッ

狭い中が、南のペニスの形になっていく感覚がする。加藤はとんでもなくいやらしい顔をしているのに、動きはどこかぎこちない。
初めてのくせに南が好きなあまり暴走して、初めてなのにこんなに感じているのだろうか。

「加藤…っ、もう、これ外してよっ…ん…」
「んっ……んっんっぅんっ

ぬる……れろ、ちゅ、ちゅく、ちゅく……

好き勝手に乗っかられるだけなんて我慢ならなくて訴えると、キスで唇を塞がれてしまった。濡れた舌が絡み合う。男とディープキスするなんて。粘膜が擦れ合うとゾクゾクして、加藤の甘い匂いが広がっていくような気がした。

「んんっ……んっ、ふっんっんっんっ……
「んっ……」

れろ、ちゅく、ちゅく……れろれろっ、ちゅっぢゅうぅっ
ずぶっ…ぬぶっぬぶっ、ぐりっぐりっぐりっぐりっ

舌を絡ませながらセックスすると、上も下も蕩けるようだ。南は半ば反射的に舌を動かして、加藤の口内を舐め、舌を噛んで吸っていた。
結局拘束はされたままだった。外したら抵抗され、セックスができなくなると加藤は思っているのだろう。
拘束が解かれたら自分はどうするだろう。理性ではこんなことは許せないし、他の誰にされても突き飛ばして拒絶していただろう。
でも今は、ただ加藤を押さえつけてこのいやらしい穴を突きまくってやりたい。そんな想像が脳裏を過ぎった。

「ふあぁっ……んっ、南ぃっ…アッあッいいっい゛っ…ひあぁんっ

ずぶっずぶっ、ぬぶっぐりっぐりっパンッパンッパンッパンッ

唇が離れるのを名残惜しいと思ってしまった。でも、目を見て喘ぎながら名前を呼ばれるとおかしな気分になる。

(そんなに俺のことが好きなら……好きなら、何だ?)

自分で自分の考えがよく分からない。圧倒的に淫らな空気に支配されてしまったみたいに頭が回らない。

「ふあぁっ……いいっんっあッあんっああッ…南のおち〇ぽっ…きもちいいっ
「っ……加藤っ…」
「ひあぁっあッあんっあんっあっああぁ〜っ…

ずぶっズヌッズヌッズヌッ、ぐりっぐりっぐりっぐりっぐりっ、パンッパンッパンッパンッ

加藤の腰の動きが激しくなる。ペニスを狭く濡れた肉壷で何度も扱かれて、絶頂を引き出される。

「ひあッあッあんッあんっあ゛あぁっ
「んっ……もう、いく…っ」

取り繕う余裕はなかった。イきそうなことを告げると、加藤は幸せそうな、恍惚とした顔になる。
そんなに嬉しいのか。中出しされたくてたまらないという顔に煽られる。

「あぁあんっイって俺のおま〇こでイってぇっ…南のせいえきほしいっ…あッああぁ〜っ
「くっ……」

ずぶっぬぶっぐちゅっぐちゅっ、ごりゅっごりゅっごりゅっごりゅっ!
パンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッ

加藤が淫らに腰を振りたくる。アナルの締め付けがどんどんきつくなり、精子が駆け上がっていく感覚がした。

「はぁっ……イくっ、出すよっ……」
「ひああッあ゛ッあ゛ひッあぁああーっ
ずぶっずぶっずぶっずぶっ、パンパンパンパンパンパン!
ビュルッ…どびゅっ、びゅるっびゅるっ、ビュルルルルルッ…

経験したことのない快感に浸りながら、南は大量の精液を加藤の中に吐き出した。ペニスがドクドクと激しく脈打って、射精の間も搾り取るみたいに熱い内壁に締め付けられ、信じられないほど気持ちいい。

「ふぁっはぁはぁっ、ああぁっ…ひぁ、あ、南の、せいえき…っ
「はぁっ……」

中出しされて嫌がるどころか、加藤はうっとりとした顔で体をびくびく痙攣させ感じている。本当になんていやらしいんだろう。

「加藤……」

何を言ってやろうと考えているうちに、なんだか意識がぼんやりしてきた。行為が始まったときからずっと頭がはっきりしない感じはあったのだが、本格的に目を開けていられない。

「おやすみ、南……」

そこでようやく、加藤によって腕の拘束が解かれた。なのに体が思うように動かない。せっかく自由になっというのに。
まあいい。時間はこの先いくらでもある。加藤をどうするかはこれから考えればいい。
重い快感の余韻に浸りながら、南は深い眠りについた。



「――……南、おい南」
「ん……」

名前を呼ばれて、南は重い瞼をゆっくり持ち上げた。太陽の光が明るくて眩しい。

「やっと起きたか。お前寝起き悪いな」
「……久瀬」

見慣れない部屋を背景に、久瀬の姿がまず目に入る。
寝坊なんてめったにしないのに、今日は体がやけに重い。
それも仕方ない、だって昨日の夜――そうだ、昨日の夜。
南は加藤の姿を探した。加藤は久瀬を避けるみたいに部屋の隅で荷物をまとめていた。

「加藤……?」
「何?」

加藤は普段と全く変わらない様子だった。あの目はいつものように髪の下に隠れているし、南を見ても平然としている。こちらのほうが動揺してしまう。
加藤は小さく首を傾げて言った。

「ぼうっとしてるけど、変な夢でも見た?」
「……夢?」

そんなはずない。あんなに鮮烈で生々しい感覚が夢であったはずがない。
加藤が南を拘束して、散々いやらしいことをして――。
おかしい。あの淫靡さと快感は忘れようがないのに、何だか記憶にモヤがかかったみたいにはっきりしない。
夢だとは思えないのに、現実だったとも言い切れない。体はだるいが、情事の痕跡は何も残っていなかった。

「何だよ南、マジでぼーっとしてるな。エロい夢でも見た?」
「……」

久瀬のからかいに苛立つ。加藤は興味がなさそうに荷造りしている。
もしあれが現実だったのなら、加藤にあんな平然とした態度が取れるだろうか。我を忘れて南のことを――好きだと訴えていた加藤が。

「南、もう集合時間近いよ。準備したほうがいいと思う」
「あ、うん」

一人で混乱している状況が嫌で、南は無理やり気持ちを切り替えた。

◆◇

それから。
修学旅行はあっという間に終わり、以前と何も変わらない日常が戻ってきた。
だけど南の心の中には大きな変化があった。きっと誰も気づいていないけれど。
加藤の振る舞いはそれまで通りのおとなしい生徒のままだったが、明らかに雰囲気が変わった。あの匂いが強くなり、時折はっとするような目を見せることがある。
でもそれが、本当に加藤が変わったのか、加藤を見る自分の目が変わっただけなのか、南には分からなかった。
いくら友人に囲まれて、時に可愛い女子から好意を向けられても、ふとしたときに加藤のことが気になってしまうのだ。
自分だけが振り回されているようで腹立たしい。だから南は加藤に近づくのを止めた。
元々話しかけるのは南からばかりだったので、自然と交流は途絶えた。周りもそれを敏感に察して、以前より更に加藤への当たりが強くなっていった。
しばらく加藤のことは考えたくない。あんな夢を見るなんてどうかしていた。――いや、本当に夢なのか?
答えの出ない問いが頭の中で渦巻いていた。


あまり加藤を視界に入れないようにしていたが、あるとき久瀬と話している加藤を見つけてしまった。
中庭に二人きりだ。何を話しているのかは聞こえない。水と油みたいに相性が悪いようだったのに、中々離れようとせず会話が続いている。

「……」

南は思わず立ち止まってその様子を窺う。何をしているのだろう。加藤が久瀬を見上げて何か言っているのを見ると胸のあたりがモヤっとする。
久瀬が加藤の頭を小突くと、ようやく離れてどこかへ行った。
二人はあんなに親しげだっただろうか。久瀬に絡まれているところを何度も助け舟を出したのは南なのに、平然と仲良くなったのだとしたら何だか気に入らない。
イライラする。やはりあの日から何かがおかしくなってしまった。
◆◇

気がつくと裸の加藤が目の前にいた。

『南……好き』

何だ、やはり自分のことが好きだったんじゃないか。
胸がすっとした。加藤が誘うようないやらしい顔をしていたので、南は加藤を押し倒してペニスを挿入した。

『ああぁっ南、すきすきぃっ…

自由になる腕で体を押さえつけ、好き勝手に抜き差しする。
男を自ら犯すことに、何の違和感も抱かなかった。ただ興奮して、もっと感じさせたくて南は腰を回す。

『あぁっいいっ南っ、みなみぃっあッあぁんっ

ふわふわした快感の中、もうすぐ――というところで加藤の姿がぼやけてくる。

「……っ」

ばちりと目を開けると、南は自分のベッドで寝ていた。汗をかいている。夢を見ていたのだと、今度は一瞬で理解できた。

「くそ……」

ペニスが勃起していた。やり過ごすのは難しいくらいに。
南は昂ぶったペニスを握って扱いた。
絶対に誰にも知られてはいけないような格好悪さだ。だけど止められない。

「はぁっ……」

勝手に頭に思い浮かぶのは、加藤の痴態だ。先程の夢の中の加藤ではなく、修学旅行の夜の加藤。
あのときの快感と興奮を思い出して、扱く手が早くなる。

「っ……」

絶頂までそれほど時間はかからなかった。
加藤でオナニーしてしまった。中出しするところを想像して、大量の精液をティッシュの中に出してしまった。
罪悪感と苛立ちで嫌な気分だった。
このままでは駄目だ。南はそう思った。

end

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