淫魔と弟 02



「あぁっ佑真、気持ちいいよ」

じっとりと汗をかいた男が俺に覆いかぶさって蠢く。ほんの2時間ほど前まではスーツをかっちり着込んですましていたくせに、今は欲望に顔を歪め上擦った声で腰を振りたくっている。
滑稽だ。内心で笑いつつ、俺の体に欲情しきった男の姿に俺も興奮を煽られていた。

「あぁッすごい、きもちい、そこ、そこっ…あッんっ」
「ここか!? ここを突かれるのが好きなのかッ、うっ締まるっ」
「ひあッそこ、ぐりぐりしてっ、でかいチ○ポでぐりぐりされるの好きぃっアッいいっ!」

ズブッズブッズブッぐりっぐりっぐりっぐりっぐりゅっぐりゅっ!

男の動きが激しさを増し、いやらしい音をたてて中を突きまくる。

「はぁっ、女好きのチャラ男にしか見えない君がこんな淫乱だったなんて…、男を咥え込むための体だな、これは…くっ」
「あぁんッ、ごめん、俺淫乱だから、んっ…チ○ポがないと生きていけないっ、もっとして、アナル突いて…っあッアッあんっ」
「いけない子だ、お仕置きしてやる…っ」

男の目は血走っていて息は全力疾走した後みたいに乱れ、半ば正気を失っているようだ。もうすぐ中に出される――と思うとゾクゾクして、アナルが絞りとるみたいにきゅうきゅう収縮する。

「はぁはぁっ、ダメだ、そんなにされたら……っ、イくっ、中に出すぞっ」
「んっああッ出して、俺の中にせーえき全部っ…あッあッあッああーっ!」
「あーっイく! 佑真の淫乱ケツマンに中出しっ…!」

パンッパンッパンッパンッ! ズブッズブッズブッぐりゅっぐりゅっぐりゅっぐりゅっぐりゅっ!
びゅっびゅるっびゅるっびゅーーーーっ!

「はあぁんっ…いっぱい、でてる…」
「ううっ、絞られ、る…」

アナルの中に熱くてどろどろした液体を注がれると、言いようのない恍惚感が全身を満たす。この瞬間の気持ちよさは何にも変えることができない。全身がびくびく震え、アナルは最後の一滴まで搾り取ろうと男のチ○ポを締め付け続けた。

「はぁ……ごちそーさま」

しばらくすると、男はさっきまでの激しさが嘘のようにぐったりして気を失っていた。こうなったらもう用はない。俺は重たい体を押しのけると汚れを落とすためシャワーへと向かった。

◆◇

俺の体には二つの異なる種族の血が流れている。ぶっちゃけて言うと母親はさっきの男と同じ普通の「人間」なんだけど、父親が「淫魔」なんだ。
ふざけてるけど事実。もちろん他人には秘密にしてる。大抵の奴からは頭がおかしいとしか思われないだろうし、厄介なのは一部の淫魔の実在を認識してる連中で、そいつらに汚らわしい悪魔として追い回されたらたまらないからね。
で、普通男の淫魔は女を犯して精気をいただくんだけど、ハーフの俺はどこをどう間違ったのか男の精じゃないと満たされない体に生まれついてしまった。
最初はふざけんなと思ったし認められなかったよ。これでも俺、顔よしスポーツよしコミュ力よしでガキの頃から女にはかなりモテて、俺自身も普通に女の子が好きだったんだから。
でも女の子といくらセックスしても、まあ柔らかくて気持ちいいはいいんだけど、体中を蠢く強烈な欲望は全然満たされなかった。女の子とセックスした直後に男に会ったら、何かめちゃくちゃ体の奥が疼いて、どうにかしたくてたまらなくなっちゃって。
俺はついに本能に負けて、元々バイって噂があった先輩とセックスしちゃったんだ。
そりゃーーもう、信じられないくらい気持ちよかった。砂漠で水を得たみたいな充足感に、今までの価値観が一夜にしてひっくり返った。
この俺が男の下で突っ込まれるなんてとか、女みたいにアンアン喘ぐなんてとか、まあちょっとはプライドが傷ついたりしたけど、それが些細なことに思えるくらい男とのセックスは最高だったから仕方ない。精をもらったら心身共に満たされてそれまでより学力も運動能力も向上して、見た目も「何か更にイケメンになったね」と言われるようになったし。いいこと尽くめってやつだ。

そんな感じで開き直って男とのセックスを楽しむようになった俺だけど、一応自分の中にルールはある。
知り合いとはしない。ノーマルな奴を襲わない。
自分が目覚める前のことを思い出すと、ノーマルなのに男に襲われて精を奪われるっていうのはさすがに可哀想だし。
前に一度同じ大学の、女癖悪くて性格最悪な上対抗意識持たれてたのかやたら悪口言ってくるうざい奴がいて、カっとなって仕返しのつもりで精を奪ってやったんだけど、まあその後が大変だった。すっかり淫魔の魅了の力にやられたみたいで、付きまとわれて何度押し倒されそうになったことか。
それに懲りて、俺は後腐れなくセックスできる行きずりの相手だけを選ぶようになった。一夜限りが一番。性欲の対象は男だけど別に彼氏がほしいとかいうわけじゃないしね。

◆◇

そんな訳で、この日の夜も俺は相手を求めてゲイが多く集まる街に来ていた。歩いているだけで視線を感じるし、声もかけられるけど、相手の顔を見ると俺はさりげなくかわす。
男だったらどんなのでもいいわけじゃない。俺と釣り合う、まではいかなくてもそれなりに綺麗な顔と体、綺麗と言っても女みたいに細いだけなのは駄目で、精をたくさんくれそうな逞しい体でなくては。
と思ってたら、理想的な体の持ち主がいるではないか。身長は180を越え、細身ではあるがしっかり筋肉がついていそうなのが服の上からでも分かる。あとは顔が良ければ誘惑してみるかと盗み見て――目が合った瞬間、俺は脱兎のごとく逃げ出した。

「待て!!」
「誰が待つか!」

そいつの顔はそれなりどころか、俺と並んでも引けをとらないくらいの美形だった。でもそういう問題じゃない。
猛然と追いかけてくる男の名前は呉野洸。俺の種違いの弟にして、淫魔の存在を認識してる数少ない人間であり、淫魔の天敵エクソシストとかいうふざけた職種についていた。

俺の母さんは若いころはかなりの美人でお嬢様育ちだった。その美貌が災いして淫魔に目をつけられたのは本当に運が悪かったと思う。
近づいてくる淫魔に、男慣れしていない母さんは最初は警戒して拒んでたらしいけど、ハーフの俺よりずっと強かっただろう淫魔の魅力は普通の人間には抗えるものじゃない。
淫魔――俺の父親は母さんから精気を奪った上俺を孕ませ、姿を消したらしい。ばっちり血をひいちゃった俺が言うのも何だけど最低だ。――と思うのは人間的な感覚で、淫魔の性質っていうのはそういうものだから母さんは本当に運が悪かったとしか言いようがない。
母さんとその両親の嘆きぶりは相当なものだったようで、母さんにはその後、淫魔とは真逆に位置するような敬虔で厳格な男と結婚することになった。
俺は母さんからは腫れ物に触るような扱いをされ、実質祖父母に育てられた。娘を捨てた男の子どもであると同時に初孫でもある俺に対する感情は複雑だったんだと思う。よそよそしかったり辛く当たられることもあった。2つ下の弟への愛情とは明らかに温度差があった。だけど今思えば捨てたり虐待することなく育ててくれたことに感謝してる。
まあ俺の可愛さのおかげでもあるかな。淫魔っていうのは精をくれる相手を魅了しなきゃ始まらないわけで、容姿や相手に好かれる能力に優れてるから。子供のうちはさすがに性的なものほど強い力は持ってないけど、人の望むように振る舞って好かれるのは昔から得意だった。
ただその力も弟、洸にはきかなかったらしい。小さい頃こそ懐いてくれて可愛かったけど、思春期に差し掛かる頃には明らかに距離を感じるようになった。チャラチャラしてた俺と、厳格な父親に育てられた洸とじゃ話も全然合わなくなったし、軽蔑されてるんだろうなーと思ってた。
中3になって、俺は東京の高校に進学するため家を出ることに決めた。先輩とセックスして淫魔の本能に目覚めたのもちょうどその頃。
母さんや祖父母は止めなかったし十分な費用を出してくれた。洸はむしろ「勝手に行けばいい」なんて言ってたな。
ただ養父だけは家から通えるところでいいだろうと反対してきた。どうしてもその高校に行きたいからと言って押し切ったけど。
男を知ったからか、気づいちゃったんだよね。厳しく真面目だった養父の俺を見る目に、あるべきじゃない種類の熱が篭ってたことに。

◆◇

そんな訳で俺は高校から一人暮らしを始め、そのまま東京の大学に進んで、色々ありつつ充実した淫魔ライフを送って今に至るってわけ。なんだけど。

「待て…っ」
「だから、誰が、待つかっ」

繁華街で人の流れに逆らって弟から逃げる。兄弟の追いかけっこにしては殺気立ってる。実際捕まったらやばい。
息が上がってくる。身体能力には自身があるのに全然引き離せない。実は洸にも人外の血が流れているんじゃないだろうか。
少し前、洸がエクソシストになったと知ったときは驚いた。そして俺を淫魔だと知っていることにも。
俺は12歳のときに母さんから、父さんのこと、自分に流れる血のことを告げられていた。でも母さんはそのことを決して他人に明かしてはいけない恥だと思っていて、他の誰も、祖父母でさえ知らなかったのに。

「うわっ……」

考え事しながら走っていたのがいけなかったのか、人にぶつかってバランスを崩してしまった。

「ってえな、何すんだてめえ」
「はぁ、はぁっ……ごめん、急いでて」

厄介なことに、いかにもガラが悪くてゴツい男に肩を捕まれ絡まれてしまった。今はこんなのに構っている暇はないんだけど、追いかけてくるのが2人に増えたら面倒なんてもんじゃない。俺は相手の腕に触れ、目をじっと見つめて謝った。
俺の魅力で人を懐柔するのなんて朝飯前だ。現にこの男も釣り上がっていた眉が下がって、目も……あ、ヤバいかも。

「……お前……、誘ってんのか。エロい顔しやがって。ちょっと来いよ」
「いや、無理…」

やりすぎた。男が欲情した顔でぐいぐい腕を引っ張ってきて、明らかにラブホのほうへ連れて行こうとしてる。
あーもうこんなことしてる間に……。

「そいつに触るな」
「あ?――」

低い声が降ってきたかと思うと、瞬く間に男の体が地面に倒れた。逃げる間もなく、こんなチンピラより何百倍も厄介な男に捕まってしまった。

「てめえ、ぶっ殺してや――ぐはっ」

身を起こして怒鳴ってきた男に容赦無い蹴りを入れる洸。しばらく見ない間に暴力的になったな弟よ。エクソシストってそんな感じでいいわけ?

「来い。今度こそお前の中の悪魔を祓ってやる」
「……公衆の面前でそのセリフはどうかと思うよ。折角俺に負けない顔してるのに電波…いや何でもない」

ギロリと睨まれて首を竦める。
俺は諦めてついて行くことにした。どうせいつかは話をしなくちゃいけなかったんだから仕方ない。これからずっと追い回されて逃げ続けるんじゃたまらないし。



「……ここ何? お前の部屋?」

連れてこられたのはマンションの一室だった。結構な広さはあるけど物は少なく殺風景だ。

「最近借りた部屋だ。お前がこの街によく通っているという情報は得ていたからな」
「よ、用意周到だな。ちょっと引いた」
「そんなことはどうでもいい。汚らわしい淫魔め、俺の目の前であんな下衆な男まで誘惑して」

洸が憎々しげに睨みつけてくる。お前呼びだし兄とは微塵も思ってない感じ。分かってはいたけどちょっと切ないものがある。

「あれはさ、穏便に済まそうとしただけだよ」
「あの程度の輩、お前の細い腕でも簡単にあしらえただろう」
「俺荒っぽいのは好きじゃないんだよね。もし俺の綺麗な顔に痣でもできたら大変じゃん?」
「ふざけるな」

俺の態度に苛立ったように洸が眉間に皺を寄せる。そんな顔をしてもイケメンだ。さすが俺の弟。

「あのさ、自分で言うのも何だけど、俺そんなに悪いことしてないと思うんだよね」
「何だと……?」
「怒るなって。そりゃ精は貰ってるよ? でも、間違っても死ぬことはないし、それどころか日常生活に支障が出ないくらいまで配慮してるんだよ、俺偉くない? ちゃんと精力強そうな相手を選んでるしさ」

と説明しても洸の眉間の皺は深くなる一方だ。俺は更にまくし立てる。

「もちろん元から男が好きで、俺とセックスしたがった奴としかしない。……基本的には。いや実はノーマルの奴としちゃったこともあるんだけど、そいつすっかりハマって何度も俺を襲おうとしてきて参ったよ。女何股もかけたり嫌がってる子強引に誘うような奴だったから、ある意味平和になったとも言えるし。まあそれくらい俺との行為は気持ちいいってことだよ。俺は精をもらってついでに気持ちよくなって、相手はめちゃくちゃ気持ちいい。これってウィンウィンってやつじゃね?」
「…………汚らわしい」

洸の肩が震えている。多分怒りで。
しまった、自己弁護に走るあまり赤裸々に言い過ぎた。そもそもセックスとかそういう話を嫌悪してるところがあるんだよなこいつ。

「えーと、……大体さ、悪魔を祓うって言うけどどうやんの? 俺悪魔に憑かれてる訳でもなんでもなくて、人間と淫魔の血が半分ずつ流れてるんだよ? 魔の部分だけ祓うとか不可能だろ。魔を祓うって言ったら俺を殺す……しか……」

ゾクリとした。激情を湛えた瞳でこちらを睨む洸に恐怖を感じた瞬間、俺の体を強い衝撃が襲った。

あれからどれくらい時間が経ったのだろう。俺はマンションの一室のベッドに縛り付けられていた。
本気で一瞬殺される……!?と思ったけどさすがにそれはなかった。冷静に考えると当たり前か。洸はそういうことができるタイプではなかった。
殺されないのはよかったけど洸はこっちの主張に聞く耳を持つこともなく、俺に様々なエクソシズムを試みた。ホラー映画で見たような光景がまさか自分の身に起きようとは。
しかしどんなエクソシズムも俺には効果がなかった。苦しくなったり気分が悪くなったり、嫌な思いをしただけだ。だから憑かれてるわけじゃないんだから無理だって何度も説明したのに。
幸い洸は潔癖なのでトイレと日に1度の風呂にだけは行かせてくれた。といっても縛ったままだったので

「お前がチ○ポ持ってやってくれる訳?」

と言うと軽蔑したような目で縛めを解かれた。そうしても俺を逃がさない自信があったんだろう。自慢じゃないが俺は男を魅了する能力は特出してるけど、体力とかその他の分野は優秀ってだけで超人的な能力を持ってる訳じゃない。体格でも力でも洸には敵わないっぽい。荒っぽいのは嫌いだしね。
しかし洸をからかう余裕があったのも最初のほうだけで、段々切実な問題が体を苛んできた。
――精がほしい。

「――なあ、これだけやってどうにもならないんだから、もう諦めない? 俺そろそろ限界なんだけど」
「何を言ってる。お前のような悪魔を世間に放てるわけがないだろ」
「いや、ぶっちゃけそろそろ精をもらわないと死にそうなの。お前お兄ちゃんを殺す気?」

あまりみっともないところは見せたくなくて冗談ぽく言ったが、実際かなり切羽詰まっている。目の前にいるのは弟、しかもエクソシストだというのに、ものすごーくおいしそうに見えちゃうくらいに。
案の定洸は射殺しそうな目で睨んできた。

「俺目覚めてからは3日に1回くらい精をもらってきたわけ。今もう……一週間くらい経ってるだろ。マジ死にそう」
「……」
「いや、お前が汚いって思うのも分かるよ? でも前にも言ったけど、ちゃんと俺とヤりたいって意思を持った相手から、すっごく気持ちよくなる代わりにちょっとダルくなる程度の精をもらうだけなんだって」

という説明も、洸の神経を逆なでするだけにしかならないようだ。
今更ながら焦ってくる。こいつ、本気で俺をここに閉じこめ続けるつもりなんだろうか。効かないエクソシズムを続けて、最後は精が足りずに狂うか死ぬまで――。

「そのくだらない言葉しか出てこない口を閉じろ。始めるぞ」

無情に時が過ぎていく。

◆◇

「はぁっ……」

あれから更に数日。俺の体は本当に限界を迎えていた。それに洸も、目の下には隈ができてるし少し痩せたし、明らかに疲れている。
何故そこまでするのだろう。はっきり言って俺みたいなのよりよほどたちが悪い、人の魂と肉体をボロボロにするような悪魔は他にいくらでもいるんだから、もっとそういう奴を何とかすればいいのに。と叱られた子どものようなことを考える。

「お前って、頑固なところは昔から変わってないよな」
「何を……」
「可愛かった頃から、一度やると決めたときは意地でもやらないと気がすまない性格でさ。俺が病気になったとき、大雪だったってのに一人で遠くの教会にお祈りに行ったときはびびったなあ。ってかあの頃マジ俺のこと好きだったよな。変わりすぎ」
「変わったのはお前だろ」

苦虫を噛み潰したみたいな顔で洸が吐き捨てる。

「昔のお前は優秀で老若男女に慕われて、清廉潔白で、自慢の兄だった。なのに、なのにあんな……」
「洸……」

清廉潔白は思い出補正かかりまくりな感じするけど、こいつは確かに俺のことを慕ってくれていた。今はその気持は変わり果ててしまったとはいえ、複雑な想いがあるんだろう。

「――お前の理想の兄からは程遠くて悪いけどさ、こんなことしていても無意味だって分かってるんだろ? そろそろ俺を外に」
「出せるわけがないだろう」
「っマジで殺す気? 俺は狂いながら死ぬなんて絶対嫌だよ。それなら一思いに殺されたほうがまだマシ」
「いっそ殺してやりたい……。だが半分とはいえ人の血を流れてるお前を殺すことなんてできない」
「できないできないって、じゃあどうするつもり――っ!?」

いい加減体も辛く、苛立って声を荒げた瞬間、洸が俺の上に覆いかぶさってきた。

「殺せはしない、外で男を誘惑するなんて許さない――なら、俺が精をやるしかないのだろうな」
「な、何を言って」

洸はまるで自分に言い聞かせるように、とても冗談とは思えない鬼気迫る表情で告げた。

「お、お前、仮にもエクソシストだろ!? 同性で兄弟でしかも淫魔とセックスって、ものすごい大罪なんじゃ……正気か?」
「どうせ俺の魂は元から穢れてる……これ以上お前が堕落させる人間を増やすくらいなら地獄にだって行ってやる」
「いや、お前は穢れてなんか……うぁっ」

問答無用で洸が俺の服を脱がせていく。
そりゃ俺だって、監禁されてちょっとしない内から洸のことはおいしそうだと思ってたよ。淫魔の本能だから仕方ない。
でも洸は兄弟で、天敵てあるエクソシストで、俺のことを軽蔑しきってる。たとえ世界に2人きりになったって洸は決して俺に手を出すような男じゃない。だからこんなの、考えたこともなかったのに。

「――この体で今まで散々男を誘惑してきたのか」

洸は服を脱がせながら怒った顔で見下ろしてくる。
心臓の音がバクバクうるさい。俺淫魔なんてやってるけど、性癖は割とノーマルだと自負してるし生粋の淫魔みたいにインモラルにはなりきれない。真面目な弟にこんなことさせるのはさすがにまずいと思う。
でもそれは頭で考えた話。体の方は猛烈に精を欲していて、洸の体が触れている部分が熱くてたまらない。

「ふん、こんな体……多少端正に筋肉がついていて腰が引き締まっていて肌がきめ細かく乳首が桜色なくらいで、ただの男の体じゃないか」

俺の体を舐め回すように見ながら洸はよくわからないことを吐き捨てる。裸なんて数えきれないくらい晒してきたはずなのに、実の弟に観察されていると思うと羞恥心が湧いてくる。
ああ早く触って欲しい。チ○ポ突っ込んで中擦ってほしい。
――でも本当にそれでいいのか。最後に残った理性を振り絞って問いかける。

「洸……ホントにやる気か? 俺が言うのも何だけど、真面目に生きてきたのにこんなところで汚点をつけていいわけ? 俺としても弟の人生狂わせるのは気が引けるし」
「……」
「そ、それに俺、ちょっとでも触られたらもう我慢できなくなって、お前の精液もらえるまで絶対離さないよ? 分かってる? お前のチ○ポを俺のアナルに挿れて突きまくって中出しするってこと。お前にできんの?」

挑発するみたいにわざと露骨な表現をする。もう言ってるだけでこっちの体が疼いて勃起しちゃいそう。
洸は怒るだろうなって思ったらやっぱり怒った。眉間に皺を寄せた顔が近づいてきて、気づいたら噛みつくみたいにキスされてた。

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