後輩のおかず サンプル 02



 車が通る音とカーテンの隙間から差し込む光で目が覚めた。いつもはアラームに起こされるのに、寝坊したかと一瞬焦ったけど、少しして今日が土曜日だと気づいて胸を撫で下ろす。
 学生の頃から休みと名のつくものは大好きで、社会人になってからはもっと好きになった。ベッドの上でゴロゴロと転がる何の意味もない休みの特権を満喫する。
 ひとしきり楽しんでから、最低限の身支度を整えて部屋を出た。
 同じようなドアが、廊下を挟んでそれぞれ同じような間隔で並んでる。普通の一軒家やアパートではない造りのここは社員寮だ。
 俺、木野篤志が入社と同時にこの寮に入ってから四年が経った。
 就職活動中は、社会人になったら東京のちょっといいマンションで一人暮らしを満喫したいと夢想していたけど、現実はそう甘くない。東京の家賃は新卒には高すぎた。
 寮なら家賃は格安で、会社からも近い。若い社員中心で騒がしくて、風呂キッチン共有って欠点はあるけど、その分面倒な掃除は管理人さんがやってくれるし希望すれば食事も作ってくれる。下手に安いボロアパートよりは綺麗でしっかりした建物だし。
 仕事でヘロヘロで帰ってくる身としてはメリットも大きいので、当分は引っ越せそうもない。
 もちろんいつかは一人暮らしがしたいし、あわよくば彼女と同棲して、そのまま結婚とかもありだと思ってるけど。相手は……まあそのうち見つかるだろう。
 妄想しつつ一階に降りたらリビングに先客がいた。
「あー……おはよ」
「おはようございます」
 後輩の宮前が、けだるげに返事してきた。後輩なら気を使う必要もないのでほっとする。先輩だったら洗濯とか買い物とか、模様替えの手伝いとか、面倒な用事を頼まれることもあるから。
 それにしても、こいつは後輩にも関わらず全く俺に気を使う様子がないのが釈然としない。
 宮前は一言でいってすかしてる。同じ部署に配属されてきたときは俺より下が来たって喜んだのに、新人らしい初々しさとか拙さとは最初から無縁だった。
 どうも東京都心生まれの生粋の都会人で、都内にある有名大学出身でインターン経験も豊富らしく、はっきり言って優秀さは認めざるを得ない。
「お前本当に優秀だなー。うちじゃなくてもっといいとこ就職できたんじゃないの」
 と訊いてみたこともあるけど、
「さあ。木野さんから見たらそうかもしれませんね」
 なんて返してくる。優秀な後輩への嫉妬は隠して、こっちは年も近いし打ち解けようとしてたのに、宮前は終始こんな感じの態度だ。温厚な俺でもちょっとどうかと思うよ本当。
 何が気に食わないって、無駄に顔がよくて背まで高くて、性格以外に全然欠点が見当たらないところ。いつもクールっていうか無表情で目は死に気味だけど、そこがまたいいって女子社員にモテてる。
 比べられたら俺なんて霞みまくり。なのに部署が一緒で、住んでる場所まで一緒。都内に実家があるんだから十分通える恵まれた環境なのに寮に入ってきたのはちょっと謎だ。
 あえて社会経験を積むためとか、実は家族と折り合いがよくないとか? それも一回訊いてみたけど適当にはぐらかされた。
「どこかに行くんですか」
「あー、ちょっと映画に。ほら、あのシリーズの続編」
「そうですか」
 珍しく話しかけられたかと思ったらあっさり終了。なら訊くな。
 こいつ、本当に俺に興味がないんだろうな。興味がないっていうか眼中にない。同じか。
 俺は気を取り直してパン一枚の朝食を済ませ、支度して寮を出た。
 映画を見るのは好きなので楽しみだ。一緒に行くのは彼女でも女の子ですらなく、同じ高校出身で同じタイミングで上京してきた腐れ縁の友達だけど。映画を見て飯食って軽く酒飲んで感想を言い合う、まあまあ悪くない休日になる、と思ってた。
 ……あ、スマホの充電が危険水域だ。しばらく歩いてから気がついた。充電していたつもりだったのに、昨日は疲れて寝ちゃったからか。
 モバイルバッテリーは……ない。通勤用のバッグに入れたままだ。少し立ち止まって迷ったけど、結局取りに戻ることにした。今ならまだ待ち合わせの時間には間に合いそうだし、出先で買うのも金がもったいない。ケチではなく倹約家と呼んでほしい。
 通ったばかりの道で水を撒いていたおばさんが、「またこいつか」という顔で俺を一瞥する。愛想笑いを浮かべて会釈しつつ寮に戻った。土曜の午後、外出してる人が多いから静かなもんだ。
 階段を昇って自室の前に来て、いつもと何も変わらずドアを少し開けたところで――俺は石のように不自然に動きを止めた。声が出なかった自分を褒めてやりたい。
 中に、誰もいないはずの一人部屋の中に、誰かがいる。
「はぁっ……あ、……はぁ……っ」
 侵入者の体は窓のほうに向いていて、俺に気づいてはいないようだった。
 家具は少ない部屋で、視界を遮るものは何もない。斜め後ろからでも中にいるのが宮前だとすぐに分かった。
「ん……っ、は、あ、……」
 少し苦しげで、熱があるみたいな荒い息。こんな状況じゃなかったら具合が悪いのかと心配していたかもしれない。こんな状況というのは、勝手に俺の部屋に入って、俺の……脱ぎ捨てたままの部屋着を手に持って、というか顔に押し付ける勢いで、何かをしているという状況だ。
「…………っ」
 声が漏れそうになる口元を手で覆う。今は気づかれてないけど、動いたら今度こそ物音で気づかれるかもしれない。そう思うと、床に接着剤でくっつけられたみたいに足が動かせない。
 俺の部屋なんだから本来逃げる必要なんてどこにもなくて、過失は百パーセント相手にあるはずなんだけど。そういう問題じゃない。だって、宮前が、あの何を考えてるのかよく分からない男が。
「はぁっ……木野さんっ……」
 少し掠れた声で名前を呼ばれてびくりと震えが走る。気づかれたのか、と一瞬思ったけど、宮前は振り向くことなく、俺の部屋着の、多分匂いを嗅いだまま、熱心に「何か」をしている。
 ここからじゃ宮前の手元は見えない。だから何をしているのか決めつけることもできない……わけだけど、荒くて色っぽい息遣い、動いている右腕、何かを擦るような音、に混ざる微かに濡れた音……。
 まさかまさか……俺でオナニーしてる? とても信じられない。もっと別の可能性を考えるんだ。
 例えばそう、筋トレとか。あいつ無駄にスタイルいいし、鍛えてるのもありえなくはない。……いや、この状況で俺の部屋着持って筋トレって。ある意味そっちのほうがヤバいヤツでは。
「あーいい……ん、……っ興奮する、木野さんっ……ん、ん……っ」
 脚がガクガクしそうになるのを、必死に堪えた。何かを……っていうかナニを擦る音が段々激しくなる。
 どう考えても宮前は、エッチなことをしてる。
「はぁっはぁ……っ、もうイく、出すよ、木野さんっ、イくっいく、んっ……」
 しゅっしゅっシュッ……ドビュッドビュッ……ビュルルルルッ……
 声が一段と荒々しくなって、熱が上がって……宮前が射精したらしい。何度も俺の名前を呼ばれて、震える脚をなんとか奮い立たせて、俺はその場から抜き足差し足忍び足で、慎重に離れた。

 できるだけ音を立てないようにドアを開け閉めして、寮を出てもまだ油断はできなかった。逃亡中の犯罪者みたいに用心深く歩く俺。水はもう撒き終わって庭の花を愛でていたおばさんが胡乱げな目で見る。
 すまないが今は挨拶どころじゃない。あそこのリーマンは忍者ごっこしている変なヤツだと噂がたってしまうかもしれない。
 おばさんの家から二軒先の角を曲がって、寮からは死角になる壁に寄りかかって、ようやく俺はまともに呼吸することができた。
 「え……ええ?」
 間抜けっぽい声が開いた口から漏れる。俺は酷く混乱していた。頭の中はクエスチョンマークだらけだ。
 一体何だったんだろう。自分の目と耳がまだ信じられない。疲れからくる幻覚と幻聴だというほうがよっぽど納得できるくらい、ちょっと信じがたい光景だった。
 でも、幻覚や幻聴だと思いこむには、意識がはっきりしすぎていた。
 どう考えてもあれはオナニーだった。俺の……服を使って、宮前がオナニーしていた。
 男が男の部屋に侵入してオナニーするなんて、よく考えるまでもなくとんでもないことだ。
 たとえ宮前にキャーキャー言ってる女の子だって、勝手に部屋に入られたあげくオカズにされたら怖いし百年の恋も冷めるレベルじゃないか。だって犯罪スレスレ……っていうか犯罪だし。ありえない。セクハラどころの騒ぎじゃない。
 俺は男だから身の危険を感じるっていうのとはちょっと違うけど、男にオカズにされるなんて衝撃的すぎる。
 普通嫌悪を覚えても仕方ないっていうか、あんなことをする宮前が悪い。
 嫌だ、気持ち悪い。……気持ち悪い? びっくりしすぎて、まだ心臓がバクバクうるさいけど、なんか全然、不思議なくらい嫌な気分って感じじゃない。
 俺は焦った。むしろ何だか気分が昂ぶって、嫌、という気持ちとは反対のほうにいるような。
 いやいや相手は男だ。宮前だ。何をドキドキしてるんだ。
 ……でも、仮に可愛い女の子が俺で欲情して、俺をオカズにオナってたら?
 …………エロい。めっっちゃエロい。
 ああそうだ、可愛い子とか美人が俺でオナってたら興奮する。だってエロいから。
 俺の部屋着を抱いて、俺の名前を呼んで、きっと興奮して勃起したち〇ぽを扱いてた宮前。それに対して嫌悪感や怒りを覚えるよりむしろ……むしろ何か変な気分になったのは、脳がそういう風に変換したからなんだ。
 寒気みたいにぞくぞくして宮前の声が耳に残ったままの自分に、俺は変な言い訳で納得させた。

「おせーぞ、何してたんだよ」
「悪い、忘れ物した。でも映画には間に合うだろ?」
 待ち合わせに二十分くらい遅れてしまった。中学からの友達、内田が苛ついた顔で文句を言ってくる。
 内田とは中高から大学まで一緒だったからもう長い付き合いだ。今は食品メーカーに勤めてる。オフィスはちょっと離れているけど、同じタイミングで就職して上京したから腐れ縁は続いている。
「仕方ないからチケットと飲み物は買っておいたよ。お前どうせコーラだろ。あとついでにホットドッグも買った」
「うわ、ありがと。悪いな」
「もちろんお前の奢りな。遅刻したんだから。さあ金を出せ」
「おう」
 言われるがまま財布を取り出すと、内田が意外そうな声で俺の顔を見てくる。
「なんだよ、いつもなら文句言うくせに、今日はやけに素直だな。何かあった?」
「えっ……、べ、別に何もないけど」
「いーや怪しい。「結果的に間に合ったんだからせめてジュース代だけにしろ」なんてせこいことを言うのがお前という男だ。最初から少し上の空だし、まさか女でもできた?」
「違うって。ほら、マジで間に合わなくなるぞ」
 こいつは妙に鋭いところがある。例えば俺が中学のとき女子に告って振られたときとか、模試の点数が無残だったときとか、あっという間に言い当てられてしまった。
 でもまさか、「男の後輩が俺をおかずにオナニーしてました」なんて、いくら鋭い内田でも当てることは不可能だろう。打ち明けたって信じてもらえず笑われるに決まってる。
 俺は内田の手からジュースを奪い取ると、先にシアターの入り口に歩き出した。
 ド派手なアクションものの映画はあんまり頭を使う必要がなくて気軽に観れた。意外に濃いめなラブシーンだけは脳裏に焼き付いた。
 
 映画の後はラーメンを食べてさくっと解散した。飲みの誘いを断ったら付き合いが悪いと詰られたけど、俺はさっさと帰りたかったから適当に謝っておいた。
「おう木野、飲まない?」
 寮に帰るなり、同じ営業の武藤先輩に誘われた。他にも男ばかり数人の先輩がビールやチューハイを缶のまま傾けている。
 半端に潰した空き缶が転がってて、つまみは出来合いの惣菜やら乾き物を開けて並べただけ。いかにも男だらけの飲み会って感じだ。
 宮前の姿はなくてほっとする。元々あまり他人とつるむのを好まない一匹狼的なヤツだから、どうせ部屋にいるんだろう。
 俺はこういう飲み会も嫌いじゃないけど、今は先輩に気を使いつつ飲む気分じゃない。
「すみません、今日ちょっと胃の調子が悪くて」
「なんだよ、若いのにもう胃ぶっ壊れたか」
「そんなにストレス溜まるほど仕事してるかー?」
「飲んだら治るかもよ。酒は百薬の長って言うだろ、若いのは知らないか」
「はは……」
 すでに出来上がっててみんな顔が赤い。
 同じ屋根の下に数年住んでるからある程度気心は知れてる。武藤先輩なんかは柔道部出身のいかにも体育会系だけど、気さくで裏表がないから付き合いやすいほうだ。
 それでももちろん上下関係は存在する。捕まるとやっかいだ。愛想笑いしつつじりじりと後退する。そのまま廊下へ続くドアを開け、階段を上った。
 後ろから先輩の文句が聞こえてきたけど、酔っ払いだからどうせすぐ忘れてくれるだろう。
「はぁ……」
 部屋に戻ったらやっと人心地つける。すぐにシャツを脱ぎ捨てた。
 俺は特に変わったところのない人間だ。生まれ育った場所はちょっと田舎だったけど、限界集落のド田舎ってほどでもなく、小学校から高校までは地元の公立に通い、大学は近くにはなかったので県庁所在地の大学に入って、地元では就職先が限られていたので東京で就職活動し、苦戦の末内定を勝ち取って入社した。
 仕事は営業のサラリーマン。世の中で一、二を争うくらいメジャーと言っても過言じゃない職種だ。成績も可もなく不可もなく。
 外見も普通……普通よりちょっと上ならいいと思ってる。たまーにかっこいいとか言われるし。
 ずけずけ物をいう内田から「パーツは悪くないけど印象が薄い、しょうゆ顔というか麺つゆ顔、総合して中の上」なんて評価を下されたことがある。お前は何様だ、そもそも麺つゆ顔とは何だって感じだけど、内田のほうが昔からモテていたので正に上から「下された」というのがふさわしい。
 そんな感じで、俺という人間は特別優れたものがあるわけじゃなく、だからって引け目を感じるような欠点があるわけでもない。
 ただ、強いていうなら――乳首がちょっと、敏感なことくらいで。
「んっ……」
 シャツの下は素肌。だけど乳首にだけ、絆創膏が貼られている。
 平凡な俺のたった一つの秘密がこれだ。実は高校生の頃からずっと続いている習慣だった。
 なんでこんなのを貼ってるかって、当然ずっと怪我をしているわけじゃない。乳首が服に擦れると、その、変な感じになっちゃうからだ。今では外出中は貼っていないと不安を覚える体になってしまった。
 でも今日は、ちゃんと貼ってても乳首がやけにじんじんした。本当は、宮前がアレをやってるのを見たときから。気のせいだと言い聞かせて出かけたけど疼きは治まってくれなかった。
 とうとう我慢できずに絆創膏を剥がした。毎日使うものだから、肌に優しい低刺激のものを愛用してて、剥がしても痛くない。ただ、本当は傷に当てる部分の中心にある乳首だけが、生き物が這ってるみたいに耐え難い感覚を生んでいる。
「はぁっ……んっ……」
 剥がしたらピンクっぽい色の乳首が空気に触れる。思ってたとおり勃起して、ぷっくりしてる。絆創膏を貼ってなくて、こんなのが服に擦れてたら、大惨事になっていただろう。恥ずかしい光景に顔がかーっと赤くなる。
 そう、恥ずかしい。普通の人生を歩んできた平凡な俺ののたった一つの秘密は、とんでもなく恥ずかしいものだった。もう十年近くなる習慣にも関わらずひた隠しにしてきて、未だに誰にも知られていない。そのはずだ。実はバレてたなんて日には羞恥で死ねる。
「はあはぁっ……っ、あぁっ」
 そっと先端を触っただけで、腰がびくんと震えた。
 たまにこういう風になることがある。乳首が疼いて、触ってなくても意識が乳首に集中して、我慢できなくなることが。
 俺だって、乳首が異常に感じるなんて嫌だった。気のせいだと思い込もうとして絆創膏を貼らずに学校で過ごしてみたり、痛いくらいの刺激を与えてみたり、逆に一切触らなかったりと色々試した。
 結果全部逆効果だった。学校で擦れて、友達の前でエッチな声が出そうになったり、怪我しそうなくらい痛くしてもその後強烈にじんじんしたり、触るのを我慢し続けても精子を溜め込んだペニスみたいに疼いて疼いて、結局最後には狂ったように弄りまくるハメになった。
 そんな日々が続いた結果、乳首は取り返しがつかない性感帯へと成長してしまったというわけだ。
 乳首が耐え難いくらい疼いたときは、弄って、そしてイかないと収まりがつかない。
「んっんっ、あっ、あんっんっ」
 こすっ……こすっ……くに、くにっ……
 最初は慎重に、優しく、乳首を擦る。急に激しくしたりしたら、他の部屋まで届くような声を出しかねない。でも優しくしたって勝手に声が出るくらい敏感で、気持ちいい。
「あっあっあッ…ひぅっ…ん゛っあぅっんっ…」
 指先で両方の乳首をこすこすと弾く。そのたびに腰がびくんびくんと跳ねて、気持ちいのがち〇ぽにまで伝わって、もう勃起してる。
「ん゛っん゛〜〜っ…あっんんっあッあっ…
 下はボクサーパンツだけ穿いてる。ボトムを穿いたままだとボトムが濡れちゃうし、かと言って全部脱ぐと今度はシーツが濡れちゃうから。それだけ濡れるって何だよって感じなんだけど、実際濡れてる。
 グレーのボクサーパンツは前面が濡れて濃グレー色に変わって、勃起したち〇ぽの形をくっきり浮かび上がらせる。変態みたいだ……。
 こすっこすっ……くりくりくり、くにっ…くにっ……
「あっあッあッ…あんっんっおぉっ…だめ、乳首っ、感じる…あっあ〜〜っ…
 どうしたことか、今日は特に敏感になってて、一往復の刺激でイってるみたいに感じる。頭がぼうっとして足の先までビクビク跳ねる。
 ち〇ぽもちょっと扱いたらすぐイくくらい興奮しきってる。けど、乳首が疼くときはあんまりすぐ弄ってイくと、後が辛くなる。出すものもないのに乳首の性感が高まって、長く疼きに苦しむことになるんだ。だからギリギリまで我慢してから射精するようにしてる。
 でも今日はちょっと、きついかもしれない。
「あんっあんっあぁんっ…ひっ、あっ、いいっいい…もう、こんなのっ…んっふ…
 いいのか嫌なのか何なのか。体は間違いなく感じまくってる。乳首だけでこんなになる自分が嫌で、そう思ってもどんどん気持ちよくなる。
 下はぎょっとするくらい濡れている。このままじゃシーツも汚してしまうかもしれない。畳まないまま放置してたタオルを一枚、手を伸ばして引っぱり出して尻の下に敷いた。
 これでもっと、びしょびしょにしても大丈夫。じれったい触り方をするのも限界で、俺は勃起した両側を指で摘み、くりくりと弄った。
 くりくりくりくりっ……ぎゅっ、ぎゅむっ、くりゅっくりゅっくりゅっ
「〜〜〜っん゛っあひっあ〜〜っ…
 腰が大きく跳ねて、ち〇ぽも震えて先からどくりと汁を漏らす。やっぱりタオルを敷いて正解だったという濡れ具合だ。
 性感帯になってる乳首を摘んで捏ねたりするのは快感が強すぎる。でも我慢できなくて、指が勝手に動く。
「あんあんあんあんっ…んッいいっあうぅっ…
 ぐにっぐにぐにっぐにっ、ぎゅっぎゅっ、ぎゅううっ…
 濡れ濡れになった腰を一人で跳ねさせながら、充血した乳首を人差し指と親指で摘んで転がす。
 なんて変態的でみっともないオナニーなんだろう。俺は多分、宮前のオナニーを目撃しちゃったわけだけど、アレは多分普通に扱いてただけで、至ってノーマルなオナニーだ。今の俺と比べたら見られたって何てことはないじゃないか。
 宮前は普通の男としての、先輩のしての俺しか知らない。――もし、万が一こんな姿を宮前に見られてしまったら、どう思われるだろうか。
「〜〜〜っ……あぁああっ…駄目、みないでっあっあ゛っんぉおっ
 普通に考えてドン引きだ。今の俺は全然男らしくなくて、変態みたいで、宮前も俺でオナったことを後悔して気持ち悪がるかもしれない。
 ぜーーーーったいに、見られるなんてありえない。なのに、なんで俺の乳首、想像して疼きまくってるんだろう。体が熱くて乳首も下半身も爆発しそうだ。
「あぁんっっやっ、見られたくないっ…こんな乳首でっ、感じちゃってるとこ、んっあっあんっあぁんっ
 くにくにくにくにっ……ぐりっぐりっぐりっぐりっ
 手が勝手に動いて絶頂に向けて駆け上がってる。いつも触り始めるときには、乳首で感じてる声を出すことに抵抗があるのに、イく直前になると我を忘れてひっくり返った酷い声と淫語が飛び出す。
 宮前の顔が、オナってた姿が、頭から離れない。こんな姿を見てもまだ、宮前は俺を想ってち〇ぽを扱いてくれるのか。
 限界だった。腰が魚みたいに跳ね続けて、ボクサーパンツのシミが過去最大くらいに広がってほとんどち〇ぽ丸出しみたいに貼り付いてて、乳首がイきたいって言ってる。
「あ゛っあっんっおぉっいくっイきたいっ…んっひっあっもっらめえぇっ…あっあぁあ〜〜っ……
 くりくりくりくりくりくりくりくりくりくりくりくりっ!
 ぬ゛ぢゅっ……ぬるっ、ぬ゛りゅっ
「あ゛っイくっ…イッ…ん゛ッああぁっ…あッあッあんッ……ッ……!
 びくびくびくっ……びくんっびくんっ
 ドプッ……びゅるっ……びゅるっ……びゅくっ……
 何も考えられなかった。乳首を高速で擦りながら、片手でびしょびしょのち〇ぽに手を伸ばして、カリに触ってちょっと弄ったら、その瞬間に強いアクメが駆け上がってきた。
 腰を上に突き上げるみたいにして俺はイった。長い射精が続いて、なかなか止まらない。
「んおっ……あっあひっ…い゛っ…
 全身がガクガク震える。乳首からも、何か出るんじゃないかってくらい過敏になってて、今は少しも触ったらいけないと頭で警告音が響く。
 まだ射精が終わらない。止まったと思ったらまた絶頂が来て、白濁の液体がパンツを汚す。
 ち〇ぽなんて、先っぽをちょっと擦っただけなのに。これじゃほとんど乳首だけで、アクメしたのと一緒だ……。
「はあぁっ……あっ、ああ……」
 余韻で動けなかった。自分の意志に反して乳首はどんどん敏感になってるって、また自覚させられる。
 まだ乳首は疼いてたけど、これ以上は多分、本当に駄目だ。
 

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