Mのいきかた サンプル 02


 世の中の全ての人間は大きく二つに分類できる。すなわち「S」か「M」か、だ。
 
「お疲れ様です、賢哉さん」
 邪魔にならない場所で待機していた名取啓介はカットの声に素早く動き、清潔なタオルを差し出した。
 撮影現場の公園は普段の様子からは全く別の顔になり慌ただしい。ドラマの役を演じる人の周りには、監督やディレクターにカメラマン、音声、照明、スタイリストなどのスタッフ、通行人役のエキストラ、そして見学している一般人と、演者の何倍もの人で溢れている。
 撮影はまだ続いているが、脇役である賢哉は一足先に出番を終えた。
 優秀でちょっと嫌味な主人公の同僚というのが賢哉の役だ。普段は感じが悪いが時折主人公に有益な行動をとる憎みきれない人物で、一部の女性に人気が出て当初の予定よりは出番を増やしてもらえたようだ。
「あー疲れた。ビール飲みたい」
「お酒はまだちょっとまずいですよ。アイスコーヒーか烏龍茶か野菜ジュースならご用意してます」
「全部ノンアルじゃん。つーか野菜ジュース嫌いだし。トマト入ってるやつだろ。せめてコーラねえのかよ」
「はあ、以前「肌が荒れるからこんなもの飲ますな」とおっしゃってたので……」
「そのときはそのとき、今は今。クランクアップ後だよ。俺の肌が荒れてるように見える?」
「いえ、文句なしに整っています」
 まだまだ彼の中で出番が足りず不完全燃焼なのか、連日撮影で遊ぶ暇がなかったからか、賢哉はストレスが溜まっているらしい。啓介にしか聞こえない声量で毒づくあたり抜かりないが、誰であれ不機嫌な顔を見られるのは好ましくない。さっさと車に戻って後部座席を開け、乗るように促した。
「賢哉さんが好きなエナジードリンクも買っておきました」
「エナジーね。精力つけたって大した仕事がなきゃな。売れる自信はあるけど知名度が低いうちはバリバリ営業かけてもらわないと」
「もちろん、映画を中心に真摯に探しております」
「探すだけなら猿でもできるからな」
 啓介は芸能事務所のマネージャーである。華やかな芸能界に相反して、マネージャーの仕事はなかなか過酷で地味だ。タレントのスケジュールを調整し、運転手として現場に同行して様々な雑用をこなし、時には泥臭く営業をかけて仕事をとってくる。華やか要素といえば、華やかな人間がごく身近にいる、その一点に尽きる。
 ペーペーの啓介が担当している賢哉もまた駆け出しの若手俳優だ。今流行りの系統とはずれるが間違いなくイケメンで、幅の広い二重瞼が気だるげな印象を与える。正統派というよりは少し癖のある役柄が似合うタイプで、演技力も向上心も十分将来性があると啓介は贔屓目なしに見ている。
「つーか今の信号行けただろ、チンタラしてんな」
「そう言われても、安全運転を努めてますから」
「安全に急げよ。待たされるの嫌いなの俺」
 このご時世、大して売れてもいない若手が舐めた態度をとっていたら簡単に切り捨てられてしまう。なので賢哉は、誰に言われずともスタッフや共演者には若者なりに失礼がないよう振る舞っている。その代わりにとことんぞんざいに扱われるのがマネージャーである啓介というわけだ。
 最後まで文句を言われながら自宅マンションまで送り届け、啓介は事務所に戻った。
「ただいま戻りましたー……」
 新宿区の年季の入ったビルに本拠を構えるプロダクション丸吉は、決して大手ではない。ただしそれなりに老舗であり、幾人かはドラマの脇でよく見かけるような売れっ子も抱えている。
 大手でなくとも、芸能事務所のマネージャーは人気がある職業だ。一方で新卒の募集は少なく非常に狭き門だった。啓介も相当努力していい成績を収め、語学留学やボランティア、インターンも積極的に行き、うんざりするほど面接のシミュレーションをこなし、最後は怒涛の情熱アピールで内定を勝ち取った。
 しかし、同じように苦労して業種を勝ち得た同士の離職率もまた非常に高いという。休みは少ない上不定期で規則正しさとは程遠い。給料は安く基本的な仕事内容は地味だが営業で神経をすり減らす。いくらいい大学を出てもタレントの金魚のフンのように扱われ、タレントにはひたすらに気を遣う。事務所の要職につければ変わってくるのだろうが、あまりにもその道は遠く険しく先が見えない。
 華やかな世界に憧れた人々にとっては過酷なのだろう。啓介も先輩からいつまで保つかと、賭けの対象にされていたらしい。賢哉がまた、マネージャーからすればわがままなタレントだから尚更だ。
 しかし啓介は周囲にどう言われようと辞める気など更々なかったし、辛いとも思わない。
 何故なら啓介は生粋のドMであり、理不尽な扱いを全く苦にしていないからだ。
 
◆◇
 
 退社できたのは二十二時過ぎ。予定より少し遅くなってしまった。啓介は胸を高鳴らせてある場所に向かう。
『遊んでほしいなら、俺の言う通りにしてね』
「はあぁ……」
 有無を言わさない命令の連絡にゾクゾクする。
 相手は廣瀬という男だ。年齢はおそらく啓介より五歳前後上。すらりと背が高くスーツが似合うスタイルで、どこか酷薄そうな顔立ちをしている。
「ストーカーされたら煩わしいから」という全くこちらを信用していない理由でフルネームや住所、学歴はおろか職種も教えてくれないが、身につけているスーツも靴も薄給の啓介とは桁が違いそうな上質さだ。規則正しく都心に出勤していることは伺える。堅苦しさは感じないので公務員というより、大手勤務のサラリーマンといったところだろう。
 待ち合わせ場所はゲイが集まる店が点在する一角で、ホテル街も近い。廣瀬にはあまり似合わない街だ。猥雑な雰囲気に興奮が高まる。
 廣瀬とは、こことは違うもっとお高くとまった街の、ただしやはり同性愛者が多く来店するバーで知り合った。
 洗練されたバーの中でも彼は異彩を放っており、注がれるいくつかの熱っぽい視線も意に介していなかった。彼にとっては多くの人間が愚民に見えているのではないだろうか。そんな冷たい目に、洗練さとは無縁の啓介もまたまんまと惹きつけられた。
 声かけが成功したのは運がよかった。しつこく抱いてくれと言い寄ってくる男に辟易しており、諦めさせるには誰でもよかったとのことだ。
 当然愛などは存在しない、お互い都合よく遊ぶだけの関係。調子に乗って一線を踏み越えようとしたらすぐに切るという条件の下、二人の関係は成り立っている。
「はぁ……ぁ……」
 準備を済ませ街角に立つ。今日の最高気温は二十二度、最低気温は十四度とテレビの中のベテラン気象予報士は言っていた。過ごしやすい季節で夜は少し肌寒いくらいだが、啓介の体は熱っぽく、じんわりと汗をかいていた。
 ヴヴヴヴヴヴ……
 啓介のアナルの中では、ピンク色のローターが振動している。直前に近くのトイレで自ら挿入した。
 ぶるりと体が震える。繁華街は夕方から夜が深くなるにつれ活気を増す。多くの人は店内で酒を飲んでいて人通りは多いわけではないが途絶えることもない。壁を背にして体は彼らの方を向いていなければならなかった。
 全ては廣瀬の命令によるものだ。彼の気分次第で啓介は何でもやらされる。曰く、物理的に不可能な命令はしない、簡単なこともできないなら会う気はない。そう宣言されている。

「んっ……んぅ……
 約束の時間はとっくに過ぎていた。廣瀬はまだ来ない。その間にもローターは微細な振動を淀みなく続ける。フル充電しておいたのであと二時間は止まることはないだろう。
 ヴーーーー……ヴヴヴヴ……
「ふうぅっ……ん゛っひぅ……
 酔っ払いだらけの夜の街で、男が顔を赤くして多少震えていたところで、通行人は目もくれず通り過ぎていく。ただしそれは啓介に興味を持ちようがない性指向の人間の話だ。
 時折探るような視線を感じて、体がびくびくする。
(ああ、俺、こんなところでお尻にローターを入れて、何でもない顔して立ってる……変態じゃん。バレたらどうしよう。っていうかもうバレてるかも。ずっとモーター音させて、お尻の中叩かれてるって……)
 冬でもないのに白く湯気がでそうなほど吐息が熱く荒い。人がいなければ、いや人がいるときこそ口に出してしまいたい。淫らな言葉とはしたない高い声を。
 変態行為をしているというのに一顧だにされず通り過ぎられるのも、怪しげにじろじろ見られるのも、どちらも悪くない。一番の欲求は決して叶うことなく妄想するしかないのだから。
 本当は誰か、できれば酷い男に今すぐ服を剥ぎ取られ、恥ずかしいローターを咥え込んでいる証拠を衆目に晒し、それでも尚ビクビクと感じる姿を思い切り罵倒してほしい。コントローラーを奪って最大にして、穴を拡げさせ、痙攣して中イキするのに軽蔑の眼差しを向けられ、絶望しながらイきまくりたい……。
「あっ……あぁっ……ふーっ……ふーっ……
 倒錯した妄想に興奮は高まり、粘膜がびくつく。
 もちろんただの妄想だ。いくらドがつくMでも、変質者として捕まって職も信用も何もかも失うのは困る。刑務所にぶち込まれた日には自由な被虐活動もできなくなってしまう。
 まあ、男だらけの刑務所内において、変態に対する性的いじめは壮絶だなんて真偽不明な噂を聞くと、魅力を感じなくはないが……。
 いやいや、いけない。啓介には配偶者や子どもはいないが、親兄弟のことは大事に思っている。あくまで性的に虐げられたいのであって、家族に「変質者の一族」だなんて不名誉を与えるのは嫌だし性癖を一生隠し通すという良識くらい持ち合わせている。
「あっ……あぁっ……んっ……」
 絶対にいけない。そう思えば思うほど興奮は強くなる。ローターの振動と同じように足も震えてきた。それでも体を往来に向けて立っていなくてはいけない。廣瀬の命令だから。
 スマホが新着メッセージを報せた。落とさないうよう慎重にポケットから出してタップする。
『ちゃんと言うとおりにしてる? 変態行為で気持ちよくなってるの?』
 廣瀬のメッセージが、吐息と共に耳元で囁かれたような錯覚に見舞われる。
『ちゃんとしてます。いつ頃着きますか』
『文字入力できる余裕はあるのか。ちゃんと前立腺に当ててる? ぬるいことしてるなら構ってあげないよ』
「……っ」
 実は図星だった。ローターはギリギリ「そこ」に当たらない位置までで止まっている。中はきつく、無理やり押し込まなければ勝手に奥まで入ることはないのだ。
 だって仕方がないではないか。もし、当たってしまったら、到底まともに立っていられなくなる。声だってきっと我慢できない。
『ちゃんと押し込んで、メスになっちゃうスイッチ押せよ。本当はそうしたいんだろ』
「はああぁっ……
 いつ来るのかなんて一言も言ってくれないまま、廣瀬は啓介を煽る。彼は本当にそういうことが上手い。
 従わなければ虐めてもらえない。啓介は人目につかない裏路地に体を滑り込ませ、ローターをぐり、とねじ込んだ。
 ヴヴヴヴ……ぐりっ……ぐりゅっ……
「んあぁっ……おっ
 びくびくびくっ……びくっ、びくんっ……
 前立腺に滑らかなローターが到達してしまった。性感帯の塊のような場所が擦れるのと同時振動を与えられ、桁違いの快感を生み出す。機械はどこにいようと関係なく振動し続け、少しぷっくり腫れた場所を残酷に叩いて刺激する。
『ちゃんとハメられた?』
『みんなに見せてあげなよ、君がどれだけ変態か。逃げるなよ』
「あ゛っ……んひぃっ…んぅうっ……
 先程「バレるの駄目絶対」と決意したばかりなのに、廣瀬にとっては知ったことではないし、知っていても嬉々として命じてきてこそあの男だ。
 啓介本人も、性感帯をぐりぐりと苛まれて頭に靄がかかり、びくつきながら先程の場所に戻る。
 ヴーーーーーー……ぬ゛っ……ぐりっ、ぐりゅっ、ぐりゅっ……
「はぁっん゛っ……んっお……ぅん……」
 声を抑えるにはもはや歯を食いしばるしかない。それでもずっとローターが前立腺に当たっていれば呻くような声は漏れる。
 通行人の男がちらりとこちらを見て、足を止めた。びくんと体が跳ねた。飲み屋を出てラブホテルに消えていく連れ合いが多くなる時間帯、それでもまだ人の気配は消えない中、二人の男が向かい合う。
「さっきからずっとそこにいるよな。何してるの?」
「〜〜いえ、何でもっ……ん゛っ……
「何でもないことないだろ。どう見ても体震えてるけど」
「それは、た、体調が、ん、ちょっと悪くて、あぁっ、ふーっふーっ
 三十過ぎだろうか。すっきりした髪型と顔立ち、太ってはいないが体格がよく日に焼けているので、肉体労働者かもしれない。
 正直に言えば廣瀬のようにどストライクというわけではないが、決して手を出せないボール球でもない。顔から腰のあたりまで舐めるように見られると、ぞくぞくする。
「体調悪いならずっと突っ立ってないだろ。……なあ、男に声かけられるの待ってたわけ」
「ちがっ……はぁあっあぁんっ
 ヴヴヴヴヴ……ぐりゅっぐりゅぅっ……!
 無視するわけにもいかず口を開けば必然的に喘ぎも漏れてしまい、淫らな声を聞かれる。一度ローターをどうにかしたくても、無駄に狭い肉襞はびっちりと咥え込み、粘膜を擦りながら振動されると余計に締まって、動かし方が分からない。
 男は状況を確信してきたのだろう、驚いたように見開いた後の目がギラリと光る。
  「何、一人エッチしてんの? こんな人が通る場所で?」
「ひっ……ち、違います、ん゛ぉっ…っ
「すげー声出ちゃってるじゃん。何もしてなくてそれなら薬か? 昔と違ってこの辺も取締り厳しいのに、まずいよな。通報したほうがいいのかな」
「あっ違う、違います、薬なんてやってないっ……はぁあっあっ…
「ならやっぱり――もしかして、何か挿れてる……?」
 今更だが彼は啓介に性的興味を抱ける貴重なタイプの男らしい。下半身に欲情した視線が這い回る。見られるとびくんびくんと震えて、男からすれば誘っているようにしか見えないだろう。
 声をかけてくる同類ならばバレても通報はされないだろう。薬をやっていると誤解される方が困る。
「あぁっ……んっはあぁっ…俺、お、お尻ま〇この中に、ローターハメてる……っ命令されて、あああぁ…っ
「やっぱり? それで、みんなに見せつけてたわけ?」
「だってそうしろって言われて……っ、ん゛っ待ち合わせだから、はあぁんっ
「あーマジだ。ケツ震えてるな」
「〜〜〜っ……お゛っ…っ
 むにっ……ぐにっぐにっ……
ヴヴヴヴヴ、ぐりゅっぐりゅっぐりゅっ
 いきなり尻を擦られ揉まれた。尻肉が押されたせいでローターの先端が腫れた前立腺に食い込み、一瞬でイったかと錯覚する快感が突き刺した。
「はぁっ……当たってんの? 気持ちいいとこに」
「んぁああっ…だめ、当たってぅも、揉まれたら、当たっちゃう、っああぁ…っ変態なメスになっちゃうスイッチ、ずっとぐりぐりされてぅっ…ああああぁ
「メスになっちゃうんだ。見てえな、なあ、ヤりてえんだろ。ホテル行こう?」
「っ……んっあぁ……
 廣瀬はまだ来ない。甘美な誘惑だった。自分を取り繕わさせている服なんて全部脱いで、過敏な粘膜を思い切り擦って、メスイキさせてほしい……。
 硬く滾ったものが、啓介の腿に擦り付けられた。
 ぐりっ……ぐりゅっ、ごりっ……
「ああぁ……硬い……んっ、あう…
「なあ、ローターハメさせて放置する男なんて、遊んでるだけだろ。やめとけよ。俺なら優しくするから」
「……ん……っ」
「めちゃくちゃ甘やかして、好きなことしてやるからさ」
 体の熱は冷めないまま、すっと心の一部が冷静になった。
「……大丈夫です、ん゛っ……俺、待たなきゃいけないので……」
「はあ? いつ来るんだよ、そいつ。まんざらでもなかっただろ、俺のもうこんなになってるし……」
「いえ、本当に……、やっぱり――じゃないと……」
 啓介は掠れた声でそう言うと男から距離をとった。昂ぶった硬い棒にはドキドキしたけど、真に求めているものではなかったと言い聞かせる。
 肩透かしを食らった男は舌打ちしながら「変態のくせに」と悪態をついてきたけど、無理強いはしなかった。
 ――ほらやっぱり、優しい。
 優しく啓介が望んだままのことをしてくれる、それでは駄目なのだ。そもそも優しく抱かれたことなどないが、されるまでもなく満足できないと、負け惜しみではなく確信している。
 だって啓介はドMだから。
 ローターとは違う場所が震えた。スマホを取り出し耳に当てる。
『どう、ちゃんと前立腺でローターオナニーしてる?』
「はっ……はい、ンッ、あ当たって…っあの、いつ着く……んっひっああぁ
『はは、路上でアクメ声出してるの? 気持ち悪い』
 自分でやらせておいて酷い言い草だ。ゾクゾクする。冷やかな声に反応して内壁が収縮し、ローターを食む。
「あっアッあッ…廣瀬さんっ…ん゛っふうぅ…も、だめ、立ってられないっ……
『駄目だよちゃんと立ってなきゃ。変な声出してふらついてたら完全に不審者だし』
「だって……っ、だってメスになっちゃうスイッチずっと…っんおっ…お゛っ…
『はあ……捕まっても僕との関わりは吐かないでね。君と違ってそれなりに社会的地位があるんだから。君は――別にそこで腰振りたくってメスイキしてもいいんだよ』
 ――本当に酷い。こっちのことなんて微塵も考えていない。
 やはり廣瀬はすごい。イケメンで冷淡で自分の手は汚さず啓介をただ汚してくれる、貴重なサディストだ。
「あぁっあ゛っだめです、こんなとこで、お願いします、早くきて男に声かけられても、我慢したから、ん゛っふうぅっ…
『……へー、声かけられたんだ。そんな奇特な男もいるんだな、そこの煩雑な街には』
「でも俺、廣瀬さんにっ…あぁあっ…んっ……ん゛っ……
 本当は男が廣瀬のようなサディストだったら、理性が負けてローターを咥えこんだまま涎を垂らしてホテルについて行ってただろう。もちろんそんなことは廣瀬には伝えない。
 飲み屋から出てきた人が通りかかったので、慌てて口に手を当て体を縮こませる。
『そんなに俺にしてほしい?』
「はいっ……お願い、もう、我慢できない早くっ……あっあっ
 ヴヴヴヴッ……ヴーーー……ぐりっ、ぐりっぐりっ
 これ以上は本当に危ない。道端で腰をがくがくさせて、ペニスを擦らずともメスイキしてしまう。恥ずかしく屈辱的な姿を、皆に見られてしまう――。
『――ならそこでイけよ。強度最大にすれば、変態の君ならま〇この中だけでイけるよね』
「……〜〜〜っ……イったら、来てくれる……?」
『行かないよそんなところ。明日も仕事があるから』
 何の価値もないと突き放す低い声に、背筋がぞくぞくした。ローターのコントローラーを握り、一気に限界まで回しきった。
text next